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シャルトル家のタケル  作者: 七夕 アキラ
9章 臨時講師編(仮)
186/189

9ー13


 講師生活14日目 2限目


 実技室でセリーヌの実家であるボーヴェ子爵家から送られてきた、過去に失敗した欠損部分回復のレシピを読み終わったところで授業開始の鐘が鳴った。

 俺はすぐさま実技室から出て、クラスへと直行する。黒板に1限目でも行った竜種材料の説明を簡単に書いて、これの説明を再度行ってから2限目の授業を開始。


 竜種材料に関しての説明文を残したまま、俺は2限目で教える作成した魔法薬(ポーション)の保存管理における保存方法と注意点を書き出す。

 1限目で非常に高価な“自然魔素変換魔力薬”の魔法薬(ポーション)を作ったんだから、しっかりと保存する為に必要な知識も叩き込んでおこうと思ったんですよね。


 まぁ、そろそろ教えようと思っていたタイミングだから“自然魔素変換魔力薬”を作らなくても教えていたけど。でも、タイミングを考えればベストだろう。

 という訳で、魔法薬師を目指す上で絶対に避けては通れず、また知らないでは済まされない知識を、徹底的に教え込もうと思う。


「エリク、ララ、ロラ。3人は魔法薬(ポーション)の保存管理に関してどれだけ理解しているんだ?」


「へ?」


「……保存管理」


「ですかー?」


 3人が全く同時に首を傾げて、ウンウンと唸り出した。この時点で全く知ろうともしていなかったし、疑問に思う事もなかったんだろうと分かる。


(保存管理の知識を知らずに、魔法薬師を目指して魔法薬(ポーション)を作ってきたとはね。たぶん、すぐに使ったか、あるいは商人たちの中で知識のある人間が買い取っていたかだろうな)


「そうだ。魔法薬(ポーション)には保存管理が必須。食べ物と同じで適切な保存を行わないと腐るんだぞ」


「「「ええええええぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」」」


 今までに作ってきて、これっぽっちも考えた事がなかったのか。もっと早くに授業を行っておけば良かった。俺のミスでもあるな。


「今から基礎中の基礎を教えていく。今後、魔法薬(ポーション)を作った後に保存する時に役立つからな。ちゃんと覚えておけよ。それと、この知識がないのに魔法薬師になれるとは思わないように」


「「「はい!」」」


 元気の良い返事を聞きながら、俺は黒板に必要最低限の知識だけを書き終えた。


「一応、俺を含めたほとんどの魔法薬師は、薬瓶の底か薬瓶その物に状態維持か状態保存の刻印魔法が施されている瓶を使っている。

 ただし、これは1瓶辺りの値段が高くて駆け出しの魔法薬師やでは絶対に買えない。まぁ小薬瓶ならギリギリで買えるだろうけどな」


 駆け出しでは買えない。この言葉にエリクが少し不安そうな表情をしながら挙手する。


「どうした?」


「ぐ、具体的な金額はどれくらいなんでしょうか?」


 彼の発言にララとロラがハッとした表情に。かなり値段が気になるようだ。


「小薬瓶だけなら1本で赤ルピー1枚だ」


「高!!」


 ロラが思わずと言った感じで思いきり声を出した。日本円で1000円だもんね。小薬瓶1本でこの価格。エリクとララは少しだけ震えながら聞いてきた。


「ちゅ、中瓶と大瓶だといくらするんですか?」


「ただの薬瓶で中瓶と大瓶の金額はどれくらいなんですか?」


「状態維持や状態保存の刻印がある中瓶と紫ルピー1。大瓶だと紫ルピー5枚」


「「ごふぉあ!!」」


 2人が奇妙な呻き声(?)を出しながら、机に突っ伏す。金額的に無理もない。だって、日本円で紫ルピー1枚で1万円だからね。


「ララの普通の薬瓶に対する金額質問だけど、中瓶なら青ルピー1枚、大瓶なら青ルピー3枚だな」


「「「安!!!」」」


 普通の中薬瓶なら100円、大薬瓶でも300円。状態維持か状態保存の刻印魔法がある薬瓶に比べたら、そりゃ安いですよ。


「刻印魔法を使える人間はそんなに多くないから、値段が張るのは仕方ない。それじゃ本格説明を開始するぞ」


 3人が背筋をピシィ!っと伸ばして話を聞く姿勢に。


「普通の薬瓶に入れての保存だけど、これは周囲の温度差によって左右される。かなり暑いと、どんな魔法薬(ポーション)でも1日で腐るからな。

 逆に涼しい場合なら、普通に鞄に入れているだけだったり、家の中で涼しい場所で管理するなら10日は持つ。肌寒い場所か、本当に寒い場所だと15日から最長で28日は腐らずに済む。

 ただし、あまり寒い場所だと魔法薬(ポーション)によっては効果が半減することが多い」


「薬草で暑い場所、寒い場所で育った物を使った場合はどうなるんですか?」


 ララから実に良い質問が飛び出してきた。


「完全にとはいかないけど、ある程度なら長く保存はできる。ただし、魔法薬(ポーション)として完成している以上は、長期間保存は不可能だ。

 普通薬瓶で1日の保存管理期間のところを最大で3日まで伸ばすことができる。だけど、極端に暑い場所、寒い場所だと腐ったり、効果が落ちるまでの速度はほとんど変化なしなのが実情だな」


 俺は温暖地域や赤竜連山のように極端に暑くて熱い場所、少し肌寒い程度から南極並みに寒い場所を黒板に書き出した。


「これらの地域で育って薬草や魔獣は、素材のままだったらあまり大きな変化はない。だけど、下処理や加工をしてしまうと、魔法薬(ポーション)に使う前から傷んでしまう」


「未処理、未加工の薬草や魔獣素材は温度変化の影響を受けますか?」


「受ける。というか以前にも教えたはずだぞ。後で書いた紙を確認しておけ。魔法薬(ポーション)管理の話に戻るぞ。魔法薬師が魔法薬(ポーション)を長期保存と管理をするには、どうしても状態維持と状態保存の刻印魔法が施された薬瓶が必要になる。

 値段は高いけど、その分しっかりと作った時の状態と効果を保存してくれる。なにより、温度変化の影響を受けにくいというのは優れものだ。

 今回、1限目に作らせた“自然魔素変換魔力薬”は普通の薬瓶で涼しい場所で3日。暑いと1日でダメなる。だけど高いけど状態維持と状態保存の効果がある薬瓶に入れておくと、最長で4ヶ月は状態が保たれる。

 今回は特別に作成に成功したご褒美として維持と保存の刻印魔法が施された小薬瓶2本ずつ贈呈しよう」


 俺が陛下に言って用意させておいた刻印魔法付与済みの小薬瓶6本をコトっと机に置く。これだけで3人の目がキランっと光ったような感じだ。

 嬉しそうなエリク達に専用薬瓶をプレゼントし、残りの時間を使って授業を再開。その後、授業終了の鐘が鳴るまで、3人の集中力は今までに一番となっていた。




 3限目 クラス


 職員室で紅茶を飲んで休憩してから、授業開始の鐘が鳴る直前にクラスに入った。エリク達3人は、自力で完成させた“自然魔素変換魔力薬”が入った小薬瓶を嬉しそうに眺めている。

 俺が授業為に入ってきた事にさえ、全く気が付いていないような状態。うん、完全に嬉しすぎて上の空だ。


「エリク、ララ、ロラ。授業を始めるぞ〜」


「「「っは! す、すみません!!」」」


 俺が少し大きめの声で思考を現実復帰させる為に掛けたら、3人ともハッとした表情で俺を見る。


「嬉しすぎて、つい」


「刻印済みの薬瓶を頂けるなんて思っていなかったので」


「シャルトル先生、ありがとー!」


「そうか、そうか。薬瓶に関しては贈呈だ。費用は気にしなくていい。これからエリクサーの歴史に関して解説する。これはテストにも出すし、成績にも影響するからしっかりと覚えておけよ」


「ついに上級魔法薬の授業」


「「ッゴクリ!」」


「エリクサーが一番最初に作られたのは、今から何年前かわかるか?」


 俺は3人と視線を合わせながら、しっかりと覚える覚悟が出来ているかを確かめる。


「エリク、答えてみろ」


「確か、109年前です」


「正解。ララ、エリクサーが完成されたのは偶然か、必然か。どっちだ」


「ぐ、偶然です。現在のエリクサーは、当時の魔法薬師が新しい魔法薬(ポーション)を作り出す際に、偶然完成した画期的な物になります」


「よろしい。ロラ、どうしてエリクサーとして判明したのか。その理由は?」


「うーん。確か家族に解析(アナライズ)を使える人がいて、その人に解析(アナライズ)されて判明したとしか」


「正解。エリクサーを最初に完成させた人物の名前は、どうしてか今でも明かされていない。この当時、上級魔法薬の薬草は非常に高価で、竜種の血などは小国の10年分の食料が買える金額がしたらしい」


「「「高すぎでしょう」」」


「昔だからな。この当時、エリクサーの元となった薬草には、とある希少な物が使われている。現在では、使わなくてもエリクサーを作れるけどな。さて問題。希少な薬草の名前とは?」


 3人がピシリっと固まった。無理もない。かなり厳しいと言うか、現役の魔法薬師でも聞いた事は数度だけ。しかも実際に目撃した人物など、本当に極少数。


「分かりません」


 エリクは悔しそうだ。だけど、ララとロラは何かを思い出すような表情。ララはもう少しで名前が出て来そうな感じの表情で、ロラは「聞いた覚えがあるよー」と呟いている。


「正解はこれだ。月光花」


 俺は自分の影から、月光花を入れてある大薬瓶を取り出す。以前、ロアンヌ山の長老に案内してもらい、採取した時の残りだ。

 維持と保存の薬瓶に入れてあるだけじゃなくて、俺自身も時々精霊を集めて魔力を供給している。


「「「げ、げ、月光花!!!???」」」


 3人があまりにも驚いて声を出したもんだから、数十秒後にはクラスにブリアック講師やバルバラ講師。そして他の講師に生徒達が押し寄せてくる事態に。


「各自、速やかにクラスへ戻りなさい。自分たちの授業に専念するように」


 名前だけは知っている言った感じの講師が生徒達に説明し、一気に完成が上がる。そして実際に間近で見ようと人数が迫ってきた。

 だから俺は自分達のクラスに戻るように指示を出した。これを無視して、講師も生徒も殺到するから仕方なく俺は最終手段。


「ウォルフ、俺と3人を回収しろ」


「ヴォフ」


 久々にウォルフに指示出し。月光花は俺が自分の影の中に戻した。そして、この直後。俺は自分とエリク達が影に沈む瞬間を目撃。


「あ、あのシャルトル先生。ここは?」


 影に潜った直後、ララが不安そうに聞いてくる。


「大丈夫だ。俺の頼れる家族と一緒に影の中にいる」


「家族?」


「ウォルフ」


 俺が呼んだ直後、ウォルフが俺の横に登場。この瞬間、エリク達の目は思い切り見開かれた。見開かれ過ぎて、眼球が出るんじゃないかと思うくらいに。


影狼(シャドー・ウルフ)のウォルフだ」


「ヴォン!」


 俺が紹介すると、ウォルフが「よろしく」とばかりに吠えた。間近で見る魔獣に怯えているようだけどスルーだ。影の上の方では、講師や生徒達が俺達を探しにあちこち動き始めている。


「ウォルフ、職員室に浮上してくれ」


「ヴォフ」


 言ったと同時に職員室へと浮上。事務作業をしていたアデライド学院長が、驚いた表情で俺達を見てくる。


「学院長、少し騒がしいからここで授業をする」


「まぁまぁまぁ。大変ですねぇ」


 相変わらずの状態だけど、今は逆にありがたい。俺は3人に座るように指示して、光魔法の潜伏(ハイド)を発動。周囲から見えなくなった状態で授業を再開。


「さっきも言ったけど、初めてエリクサーが作られた時に使われたのが月光花だ。使用したことで最高品質の魔法薬(ポーション)として完成した――」


 俺が授業を再開してから数十分後、アデライド学院長は授業終了の鐘を鳴らしに行った。そして鐘が鳴って授業は終了。廊下で騒がしくしている講師と生徒に見つからないように、再度ウォルフの影を使ってクラスへと送り届けた。

 そして俺は珍しくベアトリスが御者をする馬車に乗り込んで、屋敷へと帰宅するのです。




 日本時間12時40分


 俺は昼食を終えた後にリビングベアトリスから、ある意味で衝撃的な報告を聞かされた。


「それは本当か!?」


「はい。間違いありません。翼竜(ワイバーン)郵便で今日の夕方にでも届くとの事です」


「そうか。そうか。なら後は八頭白黒熊に関する情報だけだな。最悪、見つからなかったとしてもなんとかするしかないか」


 俺がベアトリスから聞かされた報告。それは、欠損部分回復薬で必須になる5種類の薬草が発見されたという内容。そして、この5種類がこの屋敷に向けて送られて夕方には届くいう報告だった。

 正確にはセルゲン草は既に届いているから、残り4種類の薬草なんだけどね。灼熱土竜の血と涙も揃っているから、本当に問題なのは、八頭白黒熊の血のみ。


 これが揃えば完全に欠損部分回復薬の魔法薬(ポーション)作りに挑む事が出来る。とりあえず今は、既に届いている大量のセルゲン草の下処理だけでも行っておこう。


「セリー、手伝ってくれるか?」


「任せて」


 シャロンとリュシー、ノエルが手伝いたそうな感じの顔だけど薬草を扱った経験がないと非常に厳しい。なので、今回と本格的な作成にはセリーに手伝ってもらう事になるだろうね。


「ベアトリス、セルゲン草を調薬室に運んでくれ」


「かしこまりました」


「ナナミとシャロンには、甘い焼き菓子を作ってほしい。かなり集中するだろうし、思考を行うだろうから。リュシー、鳥たちにユニコーンがどこにいるかを探すように言ってくれ」


「お任せください!」


「ちゃんと作っておくわ」


「……頑張る」


 シャロン、ナナミ、リュシーの順番で返事があった。ナナミはともかく、シャロンとリュシーが見事にションボリ顔をしたので、役目を与えてみたんです。

 ノエルも期待に満ちた目を向けてきているから、彼女にも頼みをする事にした。


「ノエル、リュシーからユニコーンに関する情報を聞いたら、ウォルフと一緒に向かってくれ。そしてウォルフと協力し、ユニコーンの血を少しでいいから提供してもらってきてくれ」


「はい!」


 メイド達はそれぞれに自分達の通常業務へと戻っていき、俺はセリーヌと一緒に調薬室へ。机の上に置いたままの本や失敗レシピを移動し、作業スペース確保。

 しばらくしてから、ベアトリスとシルヴィがセルゲン草を運んできた。


「始めよう。セリー、この山のセルゲン草を便利魔法の乾燥(ドライ)で乾かすから、小鉢で粉末に。俺は乾燥が終わったら、水に浸してと、煮ての成分抽出を。

 それと粉末にしたら、この灼熱土竜の血と涙に少しずつ入れて反応を確かめてくれ」


「成分抽出した物にも、混ぜてみる?」


「頼む」


 俺は大量にあるセルゲン草のうち、高さ80センチにも積み上がったものを便利魔法の乾燥(ドライ)で水分を完全に抜いていく。

 そしてカラカラになったセルゲン草をセリーヌへと渡して、小鉢で粉末上に。この次に俺は小鍋を複数用意して、ただ水を入れただけの物、火石を使って沸騰させる物と分けた。


 そして切り込みを入れたり、千切りにしたり、そのままの状態で水の小鍋へと入れていく。同じように切り込み、千切り、そのままのセルゲン草を沸騰している方の小鍋に。

 ただし煮る小鍋に関しては、それぞれ温度調整を行っている。ぬるま湯程度、沸騰前、沸騰している小鍋。これらに入れて温度の違いによる効率的な成分抽出方法を模索。


 水の小鍋に入れた方も、時間差を調整して切り込み、千切りの状態から成分が出るまでの時間を確かめる。ベアトリスが砂時計を置いてくれているから助かります。

 1分、3分、5分、10、15分、20分、他にも5分刻みの砂時計を多量にある。解析(アナライズ)で成分抽出状況を確認しながら、各砂時計による時間計測も同時進行。


「全部、粉末にし終わったわ。タケルは?」


「こっちはまだ、掛かりそうだ。セリー、代わってくれるか?やっぱり魔獣の血を女性であるセリーに任せるのは、俺的にダメな気がする」


「今までに作った魔法薬(ポーション)でも、血を使った物は経験ないものね。それじゃ交代。どんな感じで進行しているの?」


「あぁ。今は――」


 セリーヌに説明を行ってから、俺は粉末になったセルゲン草の前に影から取り出した灼熱土竜の血と涙が入った瓶を用意。スポイトと計量用の小匙も準備。

 俺が影の中に持っている魔法鞄(マジック・バッグ)から、未使用と洗浄済みの大量の小薬瓶を取り出す。この大量の小薬瓶は、色々と訳ありで増えてしまいました。だけど、今はこれだけの本数があって良かったと思う。


 小薬瓶に粉末セルゲン草を入れて、灼熱土竜の血と涙が入った瓶の蓋を開ける。そして血の方は小匙、涙の方はスポイトを使って、それぞれ薬瓶に入れていき変化の様子を観察するのに時間を使うのだった。

10章を書くか、この9章を最終章とするか悩んでいます。

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