4話『勧誘』
「活動っていうのは、──化け物退治よ」
「は?」
「だーかーらー、あんた化け物を見たんでしょ? それを退治すんのよ」
「いや、退治ってどういうことだよ。俺が見た化け物は確かに死んだはずだぞ」
実際には死んだというより消滅していたが。
「そんな化け物が一匹だけだと思う?」
「……おいおい、嘘だろ? あんなのが何匹もいやがんのか?」
「だからそれを退治するのが私達のもう一つの仕事ってわけ。分かった?」
分かったかと言われれば分かった。確かにたった一匹しかいない化け物が、偶然にも俺の前に現れるわけないしな。そんなのが何匹もいるというのなら退治する部隊も存在して然るべしだろうということも分かる。
だが。
「なんであんなのが何匹もいるのに、その情報は出回っていないんだ? マスコミが取り上げないにしてもネットで話題ぐらいにはなるだろ」
「情報統制されてんのよ。あんなのがいるって分かったらパニックになる人達が必ず一定数は存在する。だから秘密裏に私達が排除することで表を騒がせないようにしてるわけ。ま、あの化け物が現れ始めたのが一ヶ月前ぐらいだからってのもあるかもね。それに、死体は何故か消滅するから滅多なことじゃ人の目に付かないし」
やはり死体は消滅するのか。つまり出くわした奴は殺されて証言ができないし、なんとか倒せたとしても証拠が残らないってわけだ。そもそもあの化け物を倒せる奴なんか限られていると思うが。
夢宮は言葉を続ける。
「でも、情報が表に出てないからといって、被害が出ていないわけじゃない。被害は出てんのよ、少しずつ少しずつね。同じように化け物も増えてる。だから私達はそれを減らして皆を守らなきゃいけない。そのために協力してほしいわけ」
「なるほどな」
「で、答えは?」
返事を催促する声にゆっくりと頷きを返し、こう言った。
「い・や・だ」
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体育館の中、木目調の床の上に体育座りをしてクラスメイトのバスケを眺めていた。
今は三時間目の授業、体育の時間。夢宮のせいで戻った時にはもう二時間目の授業が終わっていたのだった。やたらと食い下がられたせいで。
男女別れての授業。とはいっても同じ体育館にはいるのだが。男子は四チームに別れ、右側のコートを使ってバスケをしている。女子も同じく四チームに別れてはいるが、左のコートで行われているのはバレーだ。
「やはり石火もバレーの方を見るか。さすがお目が高い。紳士の嗜みだよなぁ?」
隣で同じように体育座りをしている坊主頭が声を掛けてくる。
「ちげぇよ! お前と一緒にすんじゃねぇ、修一」
こいつは元蔵修一。小学校の頃からの腐れ縁が今でも続いている。まあなんだかんだで一番仲が良く、親友のようなもの、だろうか。
「なんだ違うのか……、お堅い奴だ。ああ、そういえばさっきの時間、花蓮ちゃんと一緒にどこ行ってたんだ?」
俺の否定の言葉に少し落ち込んだような仕草を見せながら、すぐに顔を上げて新たな問いをぶつけてくる。花蓮という名前は初耳だったが、恐らく夢宮のことだろう。
「別に、なんでもねぇよ」
「なんでもないわけあるか! 授業一つ分使って一体何をしていたんだ? はっ、まさか……ナニか? 貴様……ッ、早くも転校生に手を付けたのか……!?」
「馬鹿か! 少しは落ち着け、ハゲ!」
「ハゲじゃないですぅ! これは坊主だ、この色ボケクソ野郎!」
「誰が色ボケだ! 駄ハゲ!!」
「駄ハゲ!?」
そうやって二人で口喧嘩に勤しんでいると、
「うるっせぇぞ、てめぇらァ!!」
コート横で審判をやっている体育教師の怒声が飛んできた。
お互い、言い合いに熱中し過ぎて声がでかくなっていたのは確かだ。昨日から何も学習してねぇな、俺。反省しよう。
ただ、正すところはしっかり正しておかねば。
「とにかく、俺とあいつはそんなんじゃねぇよ。だいたい会ったばっかの奴とそんな仲になるわけないだろうが。厄介事を押し付けられそうになってただけだ、一時間掛けてな。拒否したけども」
「それはそれで疑問は残るが……。まあ普通に考えればそうか。お前がお堅いのは分かってたことだし、花蓮ちゃんの方もそんなに緩くなさそうだしな」
「そりゃ言えてるな。夢宮の奴に告白なんてしても返ってきそうなのは拳ぐらいだろ」
「ぶふっ」
吹き出す修一に釣られて俺も笑っていると、後ろから声を掛けられる。
「私の名前が聞こえたと思ったら、随分楽しげじゃない?」
背筋が凍るような感覚に襲われた。なぜ、夢宮がここに……?
「あら? 私がここにいるのが不思議? ちょっとボールを取りにきただけよ」
言われて周りを見渡すと、すぐ近くにバレーボールが転がっていた。ボールが来ていたことにも気付かないとはどれだけ雑談に熱中していたのだろう。
冷やかな視線に目を合わせられずにいる俺とは裏腹に。修一は転がっているボールを夢宮へと拾い渡し、恐る恐る尋ねる。
「もしかして……、話聞いてました?」
「いいや別に? ただまあ、ボールのお礼でも返すのは拳でいいのよね?」
そう言ってぐっと拳を握る夢宮。
ばっちり聞いてんじゃねぇか。
「まあ落ち着け。早く戻らないと向こうで皆待ってるぞ」
「くっ、あとで覚えときなさいよ……!」
そんな捨て台詞を残して、成長過程の勇者の元に現れた、慈悲なき魔王こと夢宮は去っていった。良かった……。
「助かった、石火。俺だけなら間違いなく殴られていただろう。いやまあご褒美ではあるんだがよ」
「お前がド変態なのは今更だからいいとして、今度から雑談するときは周りを確認してからにしよう。また同じような話をあの現代生まれのグラディエーターに聞かれたら間違いなく拳を振るってくるぞ。断言できる」
「ばふっ、おい、やめろ! 花蓮ちゃんこっち見てるから!」
再び吹き出す修一。バレーの方に視線を向けると、修一の言うように夢宮がコートの中からこっちを睨んでいた。試合中に余所見すんな、スパイクが頭にぶつかれ。
お互い睨み合うのをやめると同時に、ピーとホイッスルの高い音が鳴る。
「俺らの番だな、石火」
「ああ、行くか」
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三時間目の体育、四時間目の数学も終わり、今は学生待望の昼休み。いつもは修一と教室で昼飯タイムだが、今日は弁当がないので学食らしくあいつは食堂に行っている。
俺はいつも通り弁当を持ってきているが、いつもは修一に付き合って教室で食べているだけで騒がしいのは好きじゃない。なのでどこか外の人がいないところで食べよう。
と思い立ち、席を立ったところで、
「ちょっと待ちなさいよ」
声を掛けられた。
「なんだよ、夢宮」
前から歩いてくる夢宮は、笑みを浮かべると共にその手に持っていた弁当箱を掲げて言う。
「どこかで昼ご飯食べるんでしょ? 一緒に行くわ」
「その手には乗らん。どうせ人のいないとこに行ったら勧誘するんだろ? もう答えは分かり切ってるんだ。わざわざ話すまでもない」
あっ、夢宮の笑みが引き攣った。
「ちょっと? 人のいるところでそういうこと言わないでくれる?」
察されたらどうすんのよ、と言外に伝わった。確かにその辺は考えてなかった。
「悪い。だがさっき言ったことは撤回しないぞ。他を当たってくれ」
「ふん、本当に悪いと思っているんなら付き合ってくれるわよね? ひ・る・ご・は・ん」
今度はさっきのような作り物の笑みではなく、嫌味ったらしい笑みを浮かべて俺を昼食に誘ってきた。良心に訴える作戦か? 俺はそんなもの、良識とまとめて蹴り飛ばせるぞ。
だがまあ、この強情女のことだ。いつまで経っても退かないのだろう。
「はぁ……、めんどくさい奴だ。外行くぞ」
「最初からそう言えばいいのよ。……ん? ちょっと、めんどくさいって何よ!」
何よも何も言葉の通りだが。そう口にすれば余計突っかかってくることは目に見えているので口にはしない。
校舎の外に出て、校舎裏へ回る。
「で、どこまで行くのよ?」
「人がいないところがお好みなんだろ? だったらここだ」
あまり手入れのされていない雑草まみれの空間。広場というほど広くはないし、狭すぎるわけでもない。雑草にまみれている以外は、廃棄予定の机や椅子なんかが散らばっていることぐらいしか特筆する点がない。例えるなら不法投棄物が集まった空き地のようなものか。
落ちている椅子を二つ拾い上げ、どちらも雑草の少ない校舎近くに置いて座る。
「ほら、さっさと座れ。時間がなくなるぞ」
言われるがままに俺の隣の椅子に座った夢宮は、すぐに弁当を広げて食べ始めた。それを横目に見ながら俺も同じように弁当をつつく。
「ねぇ、あんたはなんで協力を拒否したの? 利がないから? それとも私が嫌いだから?」
ぼそりと夢宮の小さな声が耳に届く。
「別に利のあるなしで物事を判断したりしないし、お前のことも気に食わないが嫌いってほどじゃねぇよ」
「じゃあなんで?」
「むしろお前はなんで俺を勧誘するんだ? お前だって俺のこと気に食わないはずだろ」
勧誘を受けたときから思っていた疑問をぶつける。夢宮は、うーんとひとしきり唸った後、口を開いた。
「理由は三つあるわ。一つ目は化け物を一人で打破できるだけの戦闘能力。二つ目は化け物を目の当たりにしても、次の日普通に学校に来ることができるだけの胆力。三つ目は二つ目と似たようなものだけど、既に化け物の存在を知っていることよ」
いや、いやいや……。言いたいことはいくつかあるけど、とりあえず一つだけ。
こいつは重大な勘違いをしている。
「……そもそも、俺は化け物を倒してなんかないぞ?」
俺の言葉を聞いた瞬間、夢宮は鳩が豆鉄砲を連射されたような顔をして固まった。すぐに再起動した夢宮は言う。
「いや、それはおかしくない? だって、恐らくあの夜私と別れた後に化け物と遭ったんでしょうし一人だったのは確定的よね。それに今生きてることから打破したんだということも分かる。そもそもあんたが化け物は死んだって言ってたんじゃない」
「そうか、そこか。お前の勘違いは」
「どういうこと?」
ぐっと顔をこちらに近付けられる。それを手で押し返しながら話を続けた。
「いや、確かに俺がお前と会ったときは一人だったよ。それは間違いない。化け物が死んだこともな」
「なら──」
「まあ聞け。だけどな、俺が化け物と遭った直後、助けが入ったんだよ。そいつがあっという間に化け物をぶっ倒した。だから俺は生きてんだよ」
「助け……? でもこの地区は私の管轄……。だから、他にレボルスの人間がいるはずはないんだけど」
「お前らの事情は知らねぇけど、助けられたのは確かだ」
その後の行動は意味不明だったがな。結局特に不調もないし。
夢宮は口元に手を当て神妙な顔をしながら問いを一つ。
「……そいつの風貌は?」
「黒のヘルメット、それに黒のジャケットを着て全身真っ黒だったな。今思うと絶対暑かっただろうな」
「嘘……でしょ……?」
その言葉は、俺に掛けられたというよりは自分に言っているようだった。だから返事はせずに、下を向いて独り言を漏らす様を見ながらただ待つ。
やがて顔を上げる夢宮。その表情は、今までのどんなときよりも険しく映る。
「私がここに転校してきたのはこの地区を化け物から守るためだけど、この地区の配属になったのは私が上に無理を言って押し通したから」
「……?」
話の先が見えない。
「この地区で目撃情報があった、ある人物を殺すために」
「おい、もしかして」
ここまで言えばいくら察しの悪い俺でも予測が付く。
そのある人物というのは──。
「私の両親を殺した仇、黒ヘルメットのあいつへの復讐を果たすために……!」
夢宮は箸を折らんとばかりに強く握り締めている。ただそれだけで、復讐という言葉に込められた激情が伝わってくる。
「……それで、俺はどうすりゃいいんだ? お前の協力させたがってた理由の一つは勘違いだったわけだが」
夢宮は箸を持つ手の力を抜いて、改めて俺と視線を合わせた。
「もう強制はしないわ。あんたがこれ以上化け物と関われば再び黒ヘルメットに会う可能性があるし。もし、もう一度会えば今度こそ殺される可能性があるからね」
私の両親みたいに、と口には出さずともそう伝わってきた。
だが。
「それはつまり化け物と関わっていればもう一度、あの黒ヘルメットに会えるかもしれねぇってことか?」
「何、言ってんの? もしかしてあんた……!」
「ああ、俺はもう一度あいつに会いたい。聞きたいことがあるんだ」
「そんなの認められない。認められるわけがないでしょうが! これ以上あいつの被害者を増やすわけにはいかないんだから!!」
「お前に止められることでもない。こっちはこっちで自由にやる。そっちはそっちで自由にやればいいだろうが」
歯ぎしりの音が聞こえてくる。
「化け物を殺したのが黒ヘルメットだっていうなら、あんた自身の強さは証明されてない。化け物と戦うことさえ厭わず、黒ヘルメットを追うというのなら──」
「──まずはあんたの強さを、私と戦って証明しなさい!」
「……はっ」
思わず息が漏れた。こいつは一体どこまで単細胞なんだ。
「その論はおかしいだろ……。なんで俺がお前と戦わなきゃなんねぇんだ」
「民間人を守るための化け物退治。その渦中に突っ込んでいく人を死ぬ前に止めるのはそんなにおかしなこと?」
「そりゃまあそうだがよ……」
「化け物と相対しても死なない自信があるというのなら、ここで証明して。できないのなら大人しく守られてなさいよ」
立ち上がり、食べかけの弁当を椅子の上に置く夢宮。その眼には何の迷いもない。きっとどんな言葉を並べ立ててもこいつは納得しない。
こっちが折れるか、戦うまでは。だが、折れる気など微塵もない。黒ヘルメットには聞かねばならないことがある。だから。
「分かった。そっちがその気ならやってやるよ」
空になった弁当箱を地面に置いて立ち上がり、夢宮とわずかに距離を取る。
「その程度の距離でいいの? そこは私の射程圏内なんだけど」
「構わねぇよ」
目算で約五メートルの距離。その間に障害物は何もない。ただ雑草が茂っているだけだ。
射程圏内というからには何かを射出する系統の能力か。なら問題はない。
「──なら始めるわよ!」
夢宮の眼の色が変わる。迷いない眼に、闘志の色が見える。そして右腕がこちらに突き出された。向けられるのは掌。ということは恐らく。
「【右手変質】」
静かに、言葉が紡がれた。黒く染まる右手を見て察する。やはり掌から何かを射出する能力か。
ならば、それが放たれるよりも早く、終わらせる!
「【左眼変質】『石眼』! 止まれ!!」
夢宮の動きが止まると同時に走り出す。
五メートルという距離は、何も夢宮にだけ有利な状況ではない。俺が一秒以内に夢宮まで到達できる距離でもあるのだ。
勝負は一瞬。夢宮の右手首を掴み、絶対こちらに掌を向けられないよう力を込める。更にもう片方の腕を夢宮の背中に回して、動けないように拘束したところで、
ようやく俺の能力が解けた。
「はっ!? なによこれ!」
「俺の能力は相手の動きを一秒止める。油断したな」
必死にもがく夢宮を抑え付けつつ、耳元で囁く。
すると何故か夢宮の耳が赤くなっていた。
「くすぐったいのよ! 離しなさいよ!」
「じゃあ降参してくれ。俺だっていつまでもこんな格好でいたくねぇよ」
「ほんとムカつくわね……、あんた。分かった分かった、私の負けよ!」
降参宣言を受けて、ゆっくりと拘束する腕を離して下がる。夢宮は赤い顔でこっちを睨みつけていた。
悔しいのだろうか。だとすると傷口に塩を塗ることになるが、一応確認はしておかねば。
「これで証明できたか? なら黒ヘルメットを探しても問題ないよな」
俺の言葉に夢宮は少し俯いた後、深く息を吸い込んでこう答えた。
「ぜぇぇぇったい認めない! 認めるわけないでしょうが!」
「えぇー……。それは話が違うじゃねぇか」
「だいたいなにそれ、相手の動きを一秒止める能力? そんなんじゃ全然化け物に対抗できないじゃない」
「うっ……」
図星を突かれた。確かにこの能力は化け物を退治できるような代物ではない。できていたら昨日の夜、逃げ回るような真似はしなかったわけだし。
「いや、まあ……。足止めぐらいはできるぞ?」
「たった一秒足止めしたところですぐ追い付かれるわ。遭ったことのあるあんたなら、そのくらい分かるでしょ」
「だったらどうすりゃいいんだよ。何をすればお前は認める?」
夢宮は口元に手を当て、少し考えるような素振りを見せた後にこう言った。
「やっぱりあんた、私に協力しなさい」
「その話はもう終わっただろ。なんてしつこいんだ」
「いいや、最初の勧誘と今とでは話が全然違うはずよ。だって、私達の利害は一致してることが分かったわけだし」
夢宮は話しながら椅子に座って再び弁当箱を開き、それに、と話を続ける。
「あんたの能力は別の証明になった」
「別のってどういうことだよ」
「それ単体じゃ化け物には無力だけど、サポートとしてなら有能ってことよ。つまりすごい攻撃役さえいれば化け物退治に使える。例えば……、私、とか」
そんなことをややドヤ顔で言う。
まあ確かに。一秒しか止められないとはいえ、サポートとして使えば、攻撃役の安全をある程度保証できるだろう。
言ってることは間違ってないが、ドヤ顔が腹立つので水を差す。
「でもお前、俺に負けたじゃん」
「う、うっさい! 化け物に対してなら強いの!」
「まあいいけど」
「とにかく! お互い黒ヘルメットを探してて、そのためには化け物と戦う必要がある。その化け物はあんた一人じゃ倒せないし、私は人手が欲しい。それに二人いれば、黒ヘルメットに行き着くのも早くなるかもしれない。どう? これだけ利害が一致しててもまだ断る?」
しばし、考える。こいつの申し出を断ったのは、化け物退治より黒ヘルメットを探すことを優先したかったからだ。
だがこいつは化け物と黒ヘルメットが関わっているかもしれないと言った。だから化け物と関わっていれば黒ヘルメットと会えるかもしれない、とも。
俺一人では化け物を倒せない。であるならば。
「はぁ……、分かった、協力する。ただお前の復讐には協力しないぞ。俺が協力するのはあくまで化け物退治と黒ヘルメット探しだけだ」
「分かってる」
頷いて、握手を求めるように手を伸ばしてきた。謎の気恥ずかしさを感じながらも握手に応じる。
「これで契約完了よ、精々足手まといにならないでよね」
「はっ、お前こそ足手まといになるなよ、負け犬」
鼻で笑って言葉を返すと、そこで握力戦争が勃発した。意外な馬鹿力に対抗しつつ、今日の出来事を思い返す。
結局、こいつと組むことになっちまった。これが試合に勝って勝負に負けるって奴か。
だがまあ、
悪くないかもな。




