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旦那様のやきもち

リクエストでいただいたフレンのやきもち話です

こんな話になりましたが・・・ちゃんとお題に添えているかどうか

なんだかんだとオールキャラ登場でにぎやかだと思います

 オルフェリアがロルテームの王都ロームへと居を移して二年目の初夏。

 今年の二月に生まれた息子フラウディオはフレンそっくりの金茶色の髪に、透けるような緑色の瞳をしている。フレンが授けてくれた大切な息子。母子ともに健康だったこともあり、オルフェリアは夫と共に、久しぶりにルーヴェへ赴くことにした。

 ロームへ引っ越しをしたあとの初めての里帰りだ。

 ちなみにロームにはオルフェリアの父、バステライドと母カリティーファ(彼女はトルデイリャスと行ったり来たりだが)も住んでいてなかなかににぎやかだった。しかもこの両親も日程は違えどルーヴェに短期滞在するという。この夏に妹のユーリィレインが寄宿舎を卒業するため、彼女の今後について話し合うようだ。

 オルフェリア十九歳のことである。

 オルフェリアが現在滞在しているのはすっかりおなじみになったルーヴェのファレンスト邸である。

 いずれルーヴェへ戻る際は屋敷を買おうか、とフレンはオルフェリアに言っているがそれはもう少し先のことになりそうだ。普段大人だけが住まうファレンスト邸に若夫婦が加わり一気ににぎやかになった。

 オルフェリアは日当たりの良い家族用の居間で愛息フラウディオを抱いている。

「フラウ可愛い」

 オルフェリアはフラウディオのほっぺに自分のそれをぎゅーと引っ付ける。赤ん坊の頬はすべすべしていてとても気持ちいい。彼は母にされるがまま、上機嫌に笑っている。愛想の良い息子なのだ。

「それ何回も聞いた」

 同席する姉リシィルは少しあきれ顔をしている。

 実はこの台詞何度も何度も言っているからだ。

「だって、とってもかわいいんだもの。わたしね、小さいころお父様がうちの子供たちが世界で一番かわいいよ! ってことあるごとに言っていたとき内心、なんて大げさな、なんて思っていたのだけれど今はその気持ちがとてもよくわかるわ。だってフラウは世界で一番かわいいもの!」

 饒舌な妹にリシィルは目を半眼にする。

 オルフェリアはこの調子で時間の許す限り息子を抱き、可愛がっている。

「あーはいはい」

「もう、お姉様ったら。フラウはお姉様の可愛い甥っ子でもあるのよ」

 なんだか無下に扱われているようでオルフェリアは唇を尖らせる。もう立派な親バカの一員だ。

「そりゃあ甥っ子は可愛いさ。わたしにしたら弟も、甥も姪もみんな平等に可愛い。赤ん坊の時はなおさらね」

 姉の模範的な回答にオルフェリアは「それはまあそうだけれど」と返した。

「それよりも、お姉様までルーヴェにやってくるとは思わなかったわ」

 現在リシィルは両親がルーヴェ滞在のために借りた中心部にほど近い街屋敷に滞在している。

「しょうがないだろ。カリストがわたしのことを追い出したんだから」

 リシィルはあっけらかんとしている。

 追い出したというのは語弊があるが、そのあたりの事情は一応耳にしている。

 代替わりをしたメンブラート伯爵。現在当主は弟のリュオンだ。普段リュオンは寄宿舎に在学をしており、伯爵領にいるわけではない。夏休み自領へと戻ったリュオンがつつがなく、領地運営を行えるようにカリストが気をまわした。領民から慕われ、発言力のある姉ではなく、当主としてのリュオンの存在感を知らしめるために夏の間リシィルには不在にしてもらおうということらしい。

「ま、わたしもいつまでも伯爵家の娘ってわけにもいかないしね」

 リシィルがトルデイリャス領で好き放題してこれたのはひとえに当主の娘だったからだ。

 当主が交代したのだからリシィルの影響のほうが色濃ければ領地運営に支障をきたす、とカリストが懸念するのも無理はない。

 そういうことでリシィルは夏の間のルーヴェ滞在を楽しむことにしたらしい。

 楽しむというか毎日彼女は飲み歩いている。ちなみに二十一になる今年をもってしても嫁に行く気配もない。そろそろ将来の身の振り方大丈夫なのかしら、とオルフェリアは心配してしまうのだがバステライドはリシィル一人くらい一生独身でいても生活できるくらいのお金は用意してあげられるよ、なんて呑気に言っている。

「そろそろ散歩の時間だわ」

 オルフェリアは立ち上がった。

「じゃあわたしも一緒についていこうかな」

 体を動かくすことを厭わないリシィルも追随する。

 久しぶりに姉妹で過ごせて楽しいのはオルフェリアも一緒だ。

「ええ」

 オルフェリアはにこりと笑った。




 ファレンスト家の跡取り夫婦がルーヴェへ戻ってきているという噂は瞬く間にルーヴェ社交界に広がり、フレンの元にはいくつかの晩餐会や夜会の招待状が舞い込んでいる。

 そのほかにもフレンの学生時代からの友人らからも誘いが舞い込んでいる。

 皆フレンと同じように忙しくしている身だ。普段は外国暮らしの者もおり、何年かぶりに帰国をした友人からの誘いもある。

 のんびりとした休暇と言うよりかは社交の一環だな、というのが率直な思いだが、この世界に身を置いているのであれば避けては通れない人付き合いというやつだ。

 フレンとオルフェリアはとある貴族家が主宰をする晩餐会へと出席していた。

 領地運営からの収入だけではなく、事業にも積極的に手を伸ばす子爵家の晩餐会には実業界に身を置く者が多く招待されている。

 晩餐会の席で夫婦のみで会話をすることはマナー違反だ。

 フレンもオルフェリアも自身の隣に座る人との会話を楽しむ。

 フレンに集まる話題といえば最近のロルテームでの経済動向や関税率の引き上げの噂の是非、アルメート大陸における政治状況など主に海外情勢についてだ。

 ロームに住まうフレンは貿易大国の最新情報を持っている。

 皆彼の話す言葉を真剣に聞いている。

 会話が一区切りしたところでフレンは隣に座るオルフェリアに意識を傾ける。聖餐用のドレスは淡い藤色。袖は膨らんだ形で、いくつものタックとレエスで飾られている。胸元を飾るのはフレンがつい最近贈ったピンクダイヤモンドの首飾り。髪には夏の花が飾られておりおおよそ子持ちには見えない初々しさを醸し出している。

 オルフェリアはさきほどから自身の右隣に座っている青年と話をしている。彼は確か、パートナーを伴っていなかったはず。名前は……。

「まあ、アルレイヒトさんたら面白い体験をしているのね」

 そうそうアルレイヒト・メラニー。たしか銀行家の息子だったはず。

 オルフェリアはアルレイヒトと会話が弾んでいるようだ。心なしか声が弾んで聞こえる。

 しかし、まあ仕方ないと自身に言い聞かせる。社交なのだからオルフェリアもいつもよりも張り切って愛想笑いを顔に張り付かせているのだ、と。

 ただ少し、隣に座る男がフレンよりも若造なのが気にかかるだけなのだ。

「それで、ファレンスト氏は……」

 フレンは目の前に座る紳士から再び話しかけられる。

 彼はロルテームにも多額の投資をしており、ロームに住まうフレンの声をもっと聞きたいのだ。

 フレンは彼の質問にいくつか答える。そこに別の男性も加わり、話が白熱をし始めると男性の奥方が拗ねたように「もっとわたくしたちにもわかる話題がいいですわ。経済談義なら食後にいくらでもしてくださいませ」と言ったため、話題は最近ルーヴェをにぎわす流行へと移っていった。

 メイン料理の鴨肉を平らげ、デザートは冷たいアイスクリームとチーズケーキ。すべてを食べ終えたころにはすっかり満腹になっていた。

 このあと男性陣はその場に残って酒を飲みながら、談笑するか、女性陣らと応接間へ行き音楽を鑑賞するかのどちらか。招待状にはルーヴェで最近頭角を現しているヴァイオリン奏者を招いてあると書かれていた。オルフェリアと一緒に音楽を聴くのもよいと考えていたが、話を途中でやめさせられた先ほどの紳士がフレンに先ほどの続きと称して話題を振っていた。

 事業に携わる者が多く招かれている晩餐会だ。フレンとしてもルーヴェの動向を仕入れたいし、顔を売っておきたい。

 音楽鑑賞会はまた今度にするか、と内心ため息をつきフレンはその場に残ることにした。


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