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歴女作家 坂本龍馬子の奇妙な犯科録  作者: 横造正史
第五章
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決戦  捌

 審判員が再提出の布陣表を確認している。最終局面中の最終局面だ。


「確認が出来ました。いよいよ最終決戦になります。第四陣の者達前へ!」


 審判員の促しに従い、相手陣からは島左近、我々からは家康が前へでた。


「内府め、第四戦で来おったか……」


「儂は徳川家康也、のう左近! 三成に過ぎたるもの二つあり、島左近と佐和山の城とまで云われたお主の力を見せてもらおうか!」


 山科は手元に戻った軍配型双斧を振り回して威嚇する。


「おう、おう、おう、我は三成様に三顧の礼をもって迎えられた島左近じゃ、昔も今も部下じゃ! 三成様の為に活躍して見せようぞ!」


 島左近は三成の鎧兜姿によく似たものを身に纏い、大刀を振り回し名乗りを上げる。


「双方、任札をお願いします!」


「おう」


「おおさぁ!」


 掛け声と共に山科は大将、左近は中大名を提示する。


「くうううううううううううううううううっ、内府め! まんま大将で来るとは、生意気な……」


 あんたが、家康が軍師とは卑怯だ、ズルいとか云うから正攻法にしているのに、今度は生意気とか自分勝手過ぎるだろ!


「くうう、相手が大将とは厳しい戦いじゃ、だが中大名でも勝てるのだ! 武器札次第で勝てるのじゃ!」


 左近はぎりりと歯噛をする。


 防御札は双方使い切っている。武器札は三竦み状態だ。三成軍は火縄銃を一枚使っているので、この後、火縄銃二連発はない。


「では、双方武器札をお願いします!」


「儂は、騎馬隊札じゃ!」


 家康は騎馬隊札を提示した。左近が、第四陣で三成より格の低い中大名で勝つために火縄銃装備との予想だった。


「うっ、うぬううううううううううううう」


 左近の顔は引き攣る。


「お、俺は…… 火縄銃装備だ……」


 や、やった! 抑え込んだ! 予想的中だ。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


 味方陣から歓声が上がる。


「第四陣、徳川家康大将で騎馬隊札武力十三、はたまた島左近中大名で火縄銃隊武力十。相性加算で徳川武力二加算。島左近は武力二を減算。よって、徳川武力十五、島左近武力八にて、徳川勝利!」


「やったあああああああ!」


 よしよし、よし! 一勝一敗二引き分けだ。勝敗の結果は第五戦に持ち越された。いよいよ天下分け目だ。


「くううううううううっ! 内府め! 格好を付けおって! おのれ! おのれ!おのれええええええっ!」


 三成子の顔が歪む。


「それでは最後です! 第五陣の方々前へお願いします」


 審判員から声が掛かる。いよいよ最後だ。


「おおおおおおおおおう! 最後は儂じゃ、本多忠勝参る!」


 棒に鹿の角を付けたような武器を携え前へ出る。


「ふん、何が欲しいと聞かれれば、勿論家康の首が欲しいと答えよう。今、徳川と相見え長年の悲願を叶える時ぞ!」


 三成子は馬印のような纏のような物を振りかざす。


「それでは勝負! 第五陣の方々任札と武器札をお願いします!」


 審判員の促しに、忠勝は中大名札を提示する。


「もう明らかだが儂は大大名札よ、太閤様から百万石を貰ったと想定しての大大名よ!」


 嘗て増田長盛と石田三成にそれぞれ百万石を与えると云う話があったが三成は辞退したという逸話があるのだ。関ヶ原前にあの時百万石を貰っておけば兵数に苦労する事はなかった。とぼやいた事を云っているのだろう。


「むううう、儂は火縄銃隊装備じゃ! どうじゃ!」


 忠勝が叫ぶ。


 三成子は解脱しかのように静かだ。無の境地のようでもある。


「…………見るがいい」


 静かに提示した札は騎馬隊札だった。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」


 周囲から歓声がこだました。


 味方なのか敵なのか、もうよく解らない。歓喜の声なのか、残念がる声なのか、もうよく解らない。周囲から歓声が鳴り響く。


「最終戦、本多忠勝、中大名、火縄銃隊、減算二にて武力計八。石田三成、大大名、騎馬隊札、加算ニで武力計十三! よって石田島軍の勝利です!」


 審判員から勝ち名乗りが上がった。


 負けた。負けてしまった。


 しかしこれは運要素も強い仕方が無いと思うしかないだろう。

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