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歴女作家 坂本龍馬子の奇妙な犯科録  作者: 横造正史
第五章
536/539

決戦  陸


「続いて、第二陣前へ!」


 審判員が促してくる。


「よし、行くわよ! 涼子の知り合いだろうが、アイツは倒すべき敵! やるわよ!」


 大刀を引っ提げて、輝美が前へ出る。


 相手陣からは先程と殆ど同じ顔をした島津義弘が出てきた。甥と叔父の区別の為か、付け髭が付いている。


「ふふふふ、儂は島津義弘じゃ、儂は例え討たれるとしても敵に向かって死すべしと思う」


 昨日今日覚えたての文言を云っているように思えてならない。


「確かに、島津は強兵よ、でも負けない! 池田輝政は負けないわ!」


 輝美は大刀をぐるぐる振り回し勇んで見せる。


「それでは双方いざ勝負! 任札をお願いします!」


 審判員から鋭い声が掛かる。


「てやああああああああああっ! 私の任札はこれよ!」


 輝美は気合の乗った叫び声の後に小大名札を提示する。


「ふふふふふふ、儂は例え討たれるとしても敵に向かって死すべしと思う」


 また同じセリフだ。


「ちぇぇぇぇすとお! 儂は大将札じゃ!」


「あっ、あああああああああああああああっ……」


 喰らった! 


 武具札を見るまでもなく敗れた。


「いやったああああああ! 三成子様、勝ちました! 勝ちましたぞ!」


「よし! ようやった! 義弘! 流石じゃ! 流石、島津義弘じゃ!」


 三成子は歓喜の声を上げる。


「そ、そんな……」


 輝美は呆然自失状態だ。


 そして負けただけではなく、任札で勝敗が決まってしまったので武具札が不明状態だ。札読みが難しくなったのだ。


「こ、ごめんなさい、負けちゃった……」


 引き返してきた輝美は申し訳なさそうに謝罪してくる。


「だ、大丈夫だよ、まだ一敗一分けだ。まだ三戦もあるんだ大丈夫だ!」


 何か自分に云って聞かせているような感じだ。


「それでは第三陣の方々、前へお願いします!」


 審判員の促しに従い、自軍からはキャスバル井伊田中。相手陣からは蒲生備中が出てきた。備中守、蒲生頼郷である。立場上は島左近と同じ三成家臣である。


「いよいよ、我が石田軍が徳川を破る時がきたのか…… 我はしんがりを務めた三成家臣蒲生頼郷である!」


 槍を構え名乗りを上げる。


「ふっ、俺は赤い彗星井伊だ。まだだ、まだ終わらんよ、見せてもらおうか、三成軍の蒲生の性能とやらを」


 斜に構え格好を付けている。いつもながら胡散臭い名乗りだ。


「それでは双方任札をお願いします」


 審判員から声が掛かる。


「我の任札はこれだ!」


 蒲生備中は軍師札を出してくる。


「ふっ、軍師か…… 最後に強い札を残すと云う事か、捨て石という事だね…… 俺も軍師札だ」


 最弱札の戦いだ。負けを想定した捨てがまりか……。となると武器札も……。


「任札は引き分け! 続いて武具札をお願いします」


 審判員が促してくる。


「我は馬防柵だ」


「ふっ、私はゲルググシールド、矢盾札だよ」


「双方防御札の為無干渉。よって第三戦は引き分け!」


 矢張り予想通りだ。双方とも第三戦を捨て、第四戦、第五戦で勝負を掛けるという事だ。


 ここまでは一敗二引き分けだ。我らが勝つには第四陣、第五陣の二連勝をする必要がある。


「え~、残すは第四戦、第五戦になります。布陣は変えますか?」


「ええ、此方は変更しますよ」


「うむ、儂も考えさせてもらおうかのう」


 山科と三成子が答える。


 双方後方に下がる。作戦タイムだ。

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