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歴女作家 坂本龍馬子の奇妙な犯科録  作者: 横造正史
第五章
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決戦  弐

 さて、対戦が始まった。


「いよいよ、俺らの出番だぜ! 目に物みせてくれるわ!」


「おおおおおおよ! 掛かって来るが良い秀家!」


 忠興、長政が興奮気味に叫ぶ。後方では有楽斎、竹中、兼加藤が斜に構え睨みを利かしている。中々格好が良い。


「ははははははははははは! 忠興、長政、嘉明、長益、重門よ、貴様らは豊臣一門の五大老、宇喜多秀家がお相手仕る。いざ掛かって来るがよい!」


 何やら妙に自信に満ち溢れた男が高笑いをしながら黒田細川軍を睥睨している。はたまた秀家の横に居た十字架を付けた小西行長が胸の前で十字を切った。


「ふふふ、そなた達の無念は主デウス様が救って下さるだろう。安心して負けるが良い」


「な、なんだと! 安心して負けろだと! 何と舐めた口の利き方だ! 行長、許さんぞ!」


 戦国チンピラの忠興がムキになる。


「双方、舌戦はそこまでです。第一陣の者前に出てきてください!」


 審判員の声に誘われて、相手陣からは宇喜多秀家が前に出てきた。予想通りだ。


「はははははははははははははは、先陣は儂じゃ! 秀家参る!」


 そんな宇喜多秀家に対し、こちらは兼加藤を送り出す。


 私としては秀家が大将火縄銃隊を装備しているという予想だ。それに僅差で勝つには中大名で騎馬隊装備だ。万が一読みが外れても、それなりに強いから読みが外れても簡単に負ける事はないだろう。


「任札をお願いします!」


 促されて宇喜多秀家が提示してきた任札は大将札だ。兼加藤は中大名札を差しだす。


「ふん、ちょろい、ちょろいわ! 嘉明なにするものぞ!」


 秀家は舐めた態度を取る。


「任札は宇喜多秀家優勢! では続いて武器札をお願いします!」


「おうさー!」


 宇喜多秀家が提示した武器札は予想通り火縄銃札だ。


「ふふふふふふ…… くふふふふふふふ……」


 不敵な笑みを浮かべながら兼加藤が提示したのは騎馬隊札だ。


「おへっ! まじか…… お、お、お、お、お、およよ、ぐおおおおおおうううううううう!」


 宇喜多秀家は変な声を上げる。


「武器札は加藤嘉明の優勢、更に武器札の相性により加藤嘉明勝利です!」


「お、おう? おう、やられた、まさか! まさか! やられたと云うのか儂は? 最強札ぞ!」


 秀家は唖然とした表情だ。


「ざまあみやがれ! 俺らを舐めるからだ! 思い知ったか秀家! 八丈島へ行っとけ!」


 戦国チンピラの忠興が傷に塩を塗るかのように野次る。関ヶ原後宇喜多秀家は八丈島へ島流しとなったのだ。


「くっ…………」


 秀家は苦虫をかみつぶしたような顔でこちらを睨んでいた。


 そうして第一陣をものにしたのだ。


 中々良い出足だ。


 続く第二陣では小西行長が出てきた。これも予想通りだ。想定では行長は中大名で騎馬隊装備だ。


 それに対する為、こちらは大大名、馬防柵装備をしている。武器札を防御札で打ち消し、任札優勢で勝つのだ。


 そんな私の予想は見事に的中し、第二陣も勝利を収めた。


 こちらの残札は大将、小大名、軍師だ。武器札は火縄銃二枚を残している。かなり良い流れと云えよう。


「おいおい、す、凄いじゃないか! 凄いよ坂本さん! 名采配だよ!」


 山科が近寄ってきて、私の肩を叩きながら褒めたたえてくれる。


「い、いえ、ビギナーズラックですよ」


「うん、やるわね涼子!」


「うむ、中々じゃ」


 皆が褒めたたえてくれる。これはこれで中々嬉しい。でもまだ調子に乗っては駄目だ。


「で、でも、ここからが重要ですよ」


 私は浮つき掛けた心を自制する。


「まあ、そうだけど、大分いい流れだよ!」


「はい」


 そうして第三陣だ。


 ここからは正直読めない。大谷吉継の登場が最後なのか、次の第三陣に出てくるのかが解らない。


 なので、私は小大名火縄銃装備で行くことにしていた。大将火縄銃装備でも良いが、万が一相手が大大名騎馬隊装備だった場合は最強札での負けになる。最強札での負けは致命的だ。小大名でも大大名にも勝てる場合もあるのだし。此処は無理はしない事が禁物だ。


 結果、第三陣に大谷吉継が大将として登場。武器は火縄銃装備だった為に敗北を喫した。


 ……負けはした。二勝一敗である。


 だが、残札はこちらが大将と軍師に対して相手陣は小大名と軍師だ。


 この時点で、黒田細川軍対宇喜多小西軍の戦いは、残札優勢の為に黒田細川軍の勝利が確定となったのだ。


「勝った! やった! やったぞ! 坂本さん! やったぞ!」


 山科が嬉々として声を掛けてくる。


「ふう、何とか勝てましたよ……」


「凄い! 凄いよ!」


 忠勝も輝美もキャスバルも、黒田細川軍の面々も褒めたたえてくれる。何だか胸熱だ。


 前衛右陣で宇喜多小西軍を打ち破り、何とか引き分け状態に持ち込んだ。だが、今度は前衛右陣勝者である黒田細川軍と前衛左陣勝者である毛利吉川軍との対戦になる。


「黒田細川軍はその場に残り、毛利吉川軍は前へ!」


 審判員から声が掛かり、続いて黒田細川軍と毛利吉川軍が対峙する。


「さ、坂本さん、次の対戦も頼むよ」


 山科は期待のこもった視線で声を掛けてくる。


「あっ、は、はい」


 この軍に関しては毛利が主軸だ。吉川、安国寺が脇侍の位置づけで、同盟勢力的に長曾我部六千、おまけの長束正家六百だ。


 立ち位置的には毛利が後方に立ち、吉川、長曾我部が前の方にいる。


 一戦目では安国寺、吉川、長曾我部の順番だった。でも一戦目と同じでは来るまい。多分、今度は毛利が先陣だ。


 そう考えた私は、先陣を捨てる事にした。軍師で馬防柵だ。そして大将格の細川で合わせる。


 第二陣は勝にいく。大将で弓矢隊だ。有楽斎辺りが適任だろう。


 そうして、第三陣は大大名火縄銃装備の兼加藤、第四陣は小大名矢盾札装備の竹中重門、第五陣は中大名火縄銃装備の黒田長政に決めた。


 戦いが始まった。


 第一陣は安国寺恵瓊だった予想は外れ中大名騎馬隊装備。騎馬隊自体は馬防柵札で打ち消せたが、任札の差で敗北する。第二陣は吉川広家だ。軍師で矢盾札装備だった為、勝つことに成功する。だが布陣の読みは外れだ。


 相手は任札こそ違うが前回と同じ順番できている。何かやばい気配を感じるぞ。


 第三陣は長宗我部盛親、大大名で火縄銃だった。任札、武具札ともに引き分けだ。ここで私は布陣を変えた。第四陣と第五陣を入れ替える。黒田長政で第四陣を取りに行くのだ。


 そして第四陣が始まった。敵は強く毛利秀元。大将で馬防柵装備だった。中大名火縄銃装備の黒田長政は任札は負けているが火縄銃装備で武力三加算。引き分けとなった。


 いよいよ最終戦、長束正家の任札は小大名だ。我らが竹中重門も任札は小大名だ。だが相手は武器札を残していのに対しこちらは防御札だ。


 打ち消せれば引き分けに持っていけるが、駄目なら負けだ。


 結果、長束正家は火縄銃を装備していた為、防御札は効果が無く。こちらは敗北になってしまった。


「……も、申し訳ありません。皆さん…… ま、負けてしまいました……」


 私は斧型軍配を山科に返しながら頭を下げる。


「いや、惜しかったよ、中々いい試合だった。ただ運が無かったね……」


 山科は私の肩をポンポン叩きながら労いの言葉を掛けてくる。


「駄目です…… 私はここまでです。後は山科さん、お願いします」


「いやいや、良い采配だった。このまま止める必要はないよ、ここからは君の采配も参考にしながら布陣を決めよう」


「そうね、初めてにしては涼子のは良い布陣だったわ。まだ戦えるわよ」


 輝美も肯定的な意見だ。


「そうじゃ、良い采配じゃった特に初陣は凄かった。連続で任すと読まれる恐れがあるが、一回毎とかならまだまだ効果的じゃろうな」


 忠勝も肯定的だ。


「ふふふ、やるじゃないか、俺はお前を認める」


 田中は何故か上から目線だ。


 改まり、山科は数度頷きつつ声を発する。


「黒田細川軍が敗北した今、次戦は我等徳川池田本隊が相対さねばならぬ……」


 そうなのだ。もう本隊が出て行かなければならない状況なのだ。後はない。


「……なので次戦の対毛利は僕が布陣を考える。皆は補足を頼む」


「ええ、了解よ!」


「最早やるしかあるまい!」

 

「はい!」


「ふふふ頑張ろうではないか」


 私達はお互いを励ましあい覇気を高める。


「それでは、徳川池田本隊、一歩前に!」


 審判員から声が掛かり、我らは前に踏み出す。中央が山科家康、両脇に井伊、本田、両端は池田と山内だ。


 相手陣は立ち位置を改め、中央に毛利、右脇侍吉川、左脇侍に長束正家、右翼に長宗我部盛親、左翼は安国寺恵瓊になった。


 双方とも中央に大将を置く鶴翼陣だ。


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