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歴女作家 坂本龍馬子の奇妙な犯科録  作者: 横造正史
第四章
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昼食、軍議、そして決戦へ!  壱

 改まり審判から声が上がる。


「え~、皆さま、そろそろ十二時になります。昼食の時間に相成ります。こちらで戦闘中だった皆さまは関ヶ原古戦場会館にて昼食の準備をしております。ご移動の程、宜しくお願い致します」


「そうか、もうそんな時間か…… 流石にお腹も減ってきた所だし、沢山、食べようじゃないか!」


 山科は腹を摩りながら声を上げる。


「そうね、最終戦の前に腹ごなししないとね、近江牛のステーキガンガン食べるわよ!」


 輝美はうんうん頷く。


「ねえ、輝美、昼って用意されるの?」


 私は改めて質問する。正直余り知らなかった。


「そうよ、参加費がそれなりに高いじゃない、だからそれも用意してくれるのよ、付近の土地の物を振舞ってくれるって所よ」


「へえ、それは楽しみだね」


近江牛が出るなら堪能しなければ。


「と、ところで全員がその場所で食事をするの?」


 ……正直なところ、最終戦を前に相手方と会いたくないような気がする。作戦を話し合ったりも出来ないし、作戦をスパイされる恐れも感じる。


「ううん、北の方で戦っている人達は、関ヶ原ランドの方で用意しているみたいよ」


「関ヶ原ランド?」


「関ヶ原の戦いをテーマにしたテーマパークよ、島津義弘陣跡の後方、池寺池の北側にあるのだけど、色々な展示や催し物を開いていて人気があるのよ、そこで昼食を取るのよ」


「ふ~ん」


「とにかく、今ここに居る徳川傘下の人達は皆、関ヶ原古戦場会館でお昼休憩って所よ」


 そんな話をしながら、傘下で膨れ上がった徳川軍はぞろぞろと中山道を駅方面へと移動する。


 北国街道で北に進路を変え少し進むと、開会式が行われた関ヶ原古戦場会館が見えてくる。


 ロビーを抜けて大会議室のような部屋へと案内されると、そこには昼食会場として準備がなされていた。


 美味しそうな肉の焼ける匂いが漂っている。


「それでは皆さまお好きな席について下さい。料理はビュッフェスタイルになっておりますのでお好きな物を取ってきていただけると幸いです」


 審判員の一人から声が掛かる。当初は各軍に一人ずつ付いていた審判員も今は四人に増えている。


「よし、俺様はここにするぜ!」


 細川忠興は窓際の席に陣取る。チーム戦なので自ずと構成員が傍に座った。大凡の配置は黒田細川軍の横に福島藤堂軍、その正面に我々徳川池田軍、そして、その横に小早川の外人達と云った様相だ。


 各々大皿に好きな料理を取ってくる。私は近江牛のステーキ、飛騨牛のローストビーフ、飛騨牛のカレーだ。


 他にはサラダやスープ、果物などが沢山並んでいる。


「さて、食べるわよ!」


 輝美は近江牛のステーキを三枚程貰ってきていて、それを口に含んでいく。私もステーキだ。


 もぐもぐしながら、ふと斜め前を見ると、偶々なのか狙っていたのか、褐色肌のアーマビキニを着たモニカの正面に兼加藤が座っていた。


 その兼加藤の目付きがヤバかった。


 モニカが屈むと顎を上げ下眼で谷間を覗き込み、右を向くとハミ乳を見んが為に視線が右を向く。


 むっつりスケベ此処に極まれりだ。


「シカシ、関ヶ原合戦、トテモ面白イデス! 当時ノ合戦ニ参加シテイル気持チニナリマスネ!」


 ブライアンが近江牛のステーキを頬張りながら言及する。


 派手な衣装だし、甲冑も色々だし、本物の合戦とは大分赴きが違うけどな……。


「ソシテ、兜ガ恰好ガイイ、特二彼ノ兜ガ凄ク!」


 ブライアンは対面に座る黒田長政の兜を指差す。


「えっ、長政のが?」


 横に座る細川忠興が顔を顰める。


「ベリークールデス。四角クテF1マシンみたいです」


 また車かよ。兜だぞ!


「馬鹿云え、俺の方が恰好が良いだろ! 山鳥の尾羽付きだぞ!」


 細川忠興の兜は天辺に上に突き上がるように山鳥の尾羽が立っている。


「悪クハアリマセン。デモ羽ハ素敵デスガ、兜自体ハ普通デスネ」


 ブライアンは素っ気なく返す。


「マジかよ…… 長政の兜は谷だぞ! 頭の上に谷が乗っているんだぞ変だろ?」


「谷?」


「おう、谷だ。バレーだよ」


「バレー? ヒルバレーとかのバレー?」


「そうだぜ、源平合戦の際に義経が鹿が降りられるなら馬が降りれない筈はないと云って騎馬隊を駆け下ろさせた谷だよ!」


「谷…… ドコガ谷? ミイニハ、ヨク解リマセン」


「いやだからさ」


 忠興が長政の頭部に近づく。というか何故長政は食事中も兜を被っているんだろう。


「いいか、この四角が谷の斜面で上のアールが付いている部分が頂上だよ」


「Oh、Rね、ヨリ、RTRネ」


「ち、ちげーよ、で、ここからな…… トトトトトトトだ!」


 忠興は人差し指と中指を足に見立てて、長政の頭部の四角い傾斜に指を当て駆け下ろさす。


「オーマイガー、イエス! イエス! クール! ミイモ、ヤッテミタイデス!」


「お、おう」


「トトトトトトトト!」


「おう、中々良いぜ! そんな感じよ! つまりは幅の広い滑り台みたいな感じだぜ」


「むうううううう! こら、忠興っ! 儂の頭で遊ぶな!」


 さすがの長政も不快だったのか怒鳴り声を上げる。


「OH、アイムソーリー、申シ訳アリマセンデシタ、格好良クッテツイ……」


「お、おう、格好良くてついだ……」


 忠興も頭を下げる。


「ふう、良いか、ブライアン、その一の谷の駆け下りで奇襲が成功し、源氏は平家に勝つのだ! 儂の兜はその縁起を担いでおるのだ。格好良くて当然じゃ」


 長政はブライアンに云って聞かす。


「……じゃが、その内から出る格好良さに気付くとは、そちもやるのう」


 長政がニヤリと笑う。


「エエ、格好ガイイデス! アールガクールデスヨ」


 ブライアンは取り繕うように言及する。意外と日本の事を解っているぞ。

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