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歴女作家 坂本龍馬子の奇妙な犯科録  作者: 横造正史
第三章
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西首塚での対戦  捌

「それでは第四陣、第五陣の対戦に参ります。双方布陣変更はしますか?」


 審判員が促してくる。


「は、はい、布陣変更致します!」


 山科は緊張した様子で返事をする。


「イエース、ミイ達モ、チョットチェンジスルヨ!」


 外人チームも申告してくる。忠勝の東洋の神秘で動揺しているようだ。


 そんなこんな思案をした末に、双方変更オーダー表を審判員へと提出する。


「確認が出来ました。それでは第四陣の方々は前へお願いします!」


 審判の呼びかけに、我々側からは家康役の山科が前へ出る。相手側からは茶髪で色黒な金髪美女が前へ出てきた。


 上裸状態にアメフト用アーマーをビキニ風に装着した露出が激しいいやらしい衣装だ。裸エプロン的ないやらしさがある。正直目のやり場に困る感じだ。


「宜シク、私ノ名前ハ、モニカ、役ハ赤座トカイウ人、来ナサイ、余所見ハダメヨ、プレイボーイ」


 色気たっぷりで手招きしてくる。


「ぼ、ぼ、ぼ、僕は、徳川家康。征夷大将軍で、三英傑の一人です。宜しくお願いします!」


 舞い上がってやがる。おいおい、まだ関ヶ原だから、まだ征夷大将軍にも三英傑にもなっていない設定だぞ。


「さて、それではそれぞれ任札をお願いします」


 審判員が促してくる。


「フフフ、貴方、良イ男ネ、トテモ恰好ガ良イワヨ、デモ、私ハブライアンノ彼女ナノヨ、御免ナサイ  ネ、フフフフ、……サテ、私ノ任札ハ大大名ヨ」


 モニカが札を提示してくる。しかしながらエレナといいモニカといい、何故に誰々の子供を産むだとか、誰々の彼女だとか、俺はローマンだとか云ってくるのだろう? 


 正直そんなのどうでも良いぞ。


「ぼ、ぼ、ぼ、僕は彼女は居ません! 僕の妻は築山殿です。僕の任札も大大名です!」


 山科も任札を提示した。もう儂とか云う一人称は消えてしまったらしい。何の演技もしていない。殆ど只の素だ。


「ん? あれ、君、布陣表には任札は大将となっているけど?」


 審判が怪訝な顔で聞いてくる。


「えっ、僕は大大名の予定で……」


 山科は戸惑いながら声を上げる。


「えっ、えっ、えっ、ま、間違っちゃったかも……」


 完全に徳川家康の威厳は消え去っていた。只のしどろもどろなおっさんだ。


「一応、オーダー表が原則ですので、それに即してくださいね」


「は、はい……」


 そそくさと山科家康は輝美の方へ駆け寄ってくる。


「ごめんなさい、間違っちゃった…… 取り替えて……」


「…………」


 輝美は無言で大将札を差しだした。田中も駒野も胡乱気に山科を見ている。


 ふらふらになりながら山科はモニカの前に戻り、再度札を提示する。


「ぼ、ぼ、ぼ、ぼ、僕の任札は大将です」


「第四陣の任札は、徳川方は大将! 小早川方は大大名。よって徳川方の優勢! 続いて武具札をお願いします!」


 審判員は確認を踏まえて丁寧に采配を言及する。


「私ノハ、馬防札ヨ。ソチラハ?」


「僕のは矢盾札…… で合ってましたでしょうか?」


 山科は審判に確認するように名乗りを上げる。仕方が無さそうに審判員は頷いた。


「第四陣、武具札、小早川方は馬防柵、徳川方は矢盾、双方効果なし! よって第四陣は任札優勢の為、徳川方の勝利!」


「いやったああああああああああああ!」


 我等徳川方陣から歓声が上がった。


「何カ、シックリ来ナイワネ……」


 少し不満げにモニカは呟く。


 とにかく結果オーライだ。こちらの予定していたオーダーのままだったら引き分けだった。


 第四陣が引き分けだとすると、対戦そのものも良くて引き分けだった。つまり勝てなかったのだ。


「ふふふふ、ダウジングを破る為の儂の邪気払いが、効果を発揮したようじゃのう」


 忠勝、濃い歴二病感だぞ。


「さて、最終戦です。第五陣の方々は前へお願いします」


 改まって審判から声が上がる。


「おおさぁ! 私が大大名の池田輝政だわよ!」


 もう任はバレているので輝美は大声で大大名だと云ってのける。手には分厚い大刀だ。


「イエス、ミイハ小早川秀秋ナり、権中納言ノ大将ダ! 演ジルノハ、ブライアン・スピアー、GTRニ乗ッテイル! GTR最速、ジャバンダイスキ!」


 任バレの大将ブライアンが名乗りを上げる。日本びいきな気配が見て取れる。中々良い奴だ。例のごとく物々しいガンブレードを装備し、黒く染めた西洋鎧を装着した上に赤い陣羽織を羽織っている。


「それでは、双方、武具札を!」


 大将と大大名は武力十と武力八だ。武器札の相性次第で引き分けもあり得れば、自陣の勝ちも、負けもある。さあどうなる?


「ミイノNOSハ、ライフルダ! ライフルチーム! GTR! GTR最速!」


 この対戦二回目の火縄銃隊だ。しかし何故何度もGTRを連呼するんだ? GTRは関係ないぞ!


「ふふ、ふふふふふ、読み通りね、順番はともかく、私達は貴方が大将で火縄銃装備を小早川に付けると読んでいたのよ」


 輝美は不敵な表情でブライアンを見遣る。


「ナ、ナニ!」


「なので私の武具札は、騎馬隊札よ! 馬防柵のない火縄銃隊なんて簡単に蹴散らすわよ! これで私達は武力二加算、貴方達は武力マイナス二よ! よって私達の勝利ね!」


 輝美は騎馬隊札を見せつける。


「オッ、オオオオオオオオオオオオオオオオオオ、ノオオオオオオオオオッ……」


 ブライアンは大げさに膝を付き頭を掻きむしる。


 そして、天を仰いだ。


「オーマイガー…………」


「……や、やった…… か、勝った、勝ったのか!」


 ほぼ腑抜けと化していた山科は暗闇で光明を見たかのような顔で呟く。


「ふう、儂の邪気払いが効いたわい」


 本当か?


「……フフフ、チョット腑ニ落チナイケド、オーダーガソウナラ、仕方ガナイシ、結果ハ、結局ソウダッタワネ…… デモ東洋ノ神秘ハ恐ルベシネ……」


 エレナ脇坂は残念そうな顔をしつつ、ふうと大きく息を吐く。でも、ここまで勝ち上がって来たんだから西洋の神秘ダウジングも中々だったぞ。


「クウウウウウウウウウ、悔シイYOU!」


 テズも顔を横に振る。


 ローマンは膝を付くブライアンの傍に歩み寄る。


「立チ上ガレ、ブライアン、負ケテモ俺達ハ親友ダゼ!」


「ローム……」


 そのクサい芝居っぽいのは何なんだろう。


「え~、第五陣、徳川池田軍の勝利! よって本対戦は徳川軍の勝利となります。福島筒井軍、小早川脇坂軍は徳川軍の配下に置かれます」


 審判員から全体に声が掛かった。


 いよいよ大所帯だ。傘下には黒田細川軍、福島筒井軍、小早川脇坂軍がいる。次はもう最終決戦だ。


 相手はどの軍が本軍かは解らないが、石田島軍、小西宇喜多軍、毛利吉川軍になるだろう。偶然なのか必然なのか東軍対西軍の様相を呈してきている。


 天下分け目の決戦に相応しいぞ。


 表面上は熱くなっている様相を見せてはいないが、私の心に沸々と熱いものがこみ上げてくる。


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