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歴女作家 坂本龍馬子の奇妙な犯科録  作者: 横造正史
第三章
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西首塚での対戦  参

 私達本隊の面々が集まり相談をし始める。


「山科さん、平均的なバランス重視の布陣と云っていたけど、どんな感じを考えているの?」


 輝美が問い掛ける。


「そうだな、平均的に皆武力が八ぐらいになるようにするみたいなイメージかな……」


 そんな山科の答えに田中が問い掛ける。


「とすると、軍師や小大名に武器を付けて、大将、大大名は防御札にするって感じかな?」


「うん、軍師は武器付きで武力七、小大名は武器付きで武力八、中大名も武器付きで武力十、大大名は武力八、大将は武力十。そんな布陣のイメージかな」


「負けにくいイメージはあるのう…… 相手が読めない以上。無難かもしれんのう……」


 忠勝は襷のような数珠を指で弄びながら呟く。


「順番は?」


「正直どうでも良いけど……」


 山科はちらっと黒田細川隊を見る。


「第四陣と第五陣は一応、細川と黒田にしておこうか…… 最後の方にしておかないと、あいつら煩そうだし」


「気に掛ける必要もないけど、まあ、その方が良いかもね」


 輝美も納得の声を上げ、井伊田中と駒野忠勝も頷く。


 結果、順番は第一陣は加藤で中大名、第二陣は軍師で有楽斎、第三陣は小大名で竹中重門、第四陣は大将で黒田長政、第五陣は大大名で細川忠興で行くことになった。


 そして布陣表は輝美が審判に渡しに行く、相手陣はエレナ脇坂が提出者だった。


 審判員が手に持つ法螺貝を合戦の合図として鳴り響かせる。


「それでは、傘下軍の対戦を始めます。前へ!」


 勇んだ様子で、徳川傘下の黒田細川軍と小早川傘下の福島藤堂軍が前に出る。物々しい雰囲気だ。黒田細川軍は再度鶴翼陣形で身構える。一方の福島藤堂軍は横一列の横陣形で中央には福島正則だ。


「それでは対戦です。第一陣前へ!」


 審判員から声が掛かる。


 自陣からは加藤嘉明でありながら加藤清正をも意識した兼加藤村田が、大鉾のような片鎌槍を手に持ち歩み出る。


「孫六、いや虎之助か…… どっちか解らんが、何故虎之助がここに要る?」 


 相手陣から出てきたのは、大牛の角を思わせる大水牛脇立兜を被った福島正則だった。武器は重さ30キロはあろうかと思われる大刀を肩にのせるような格好で所持している。多分張りぼてだけど。


 どうやら第一戦は賤ケ岳七本槍同士の対戦である加藤対福島のようだ。


「おう、虎之助なら九州に居た筈だが、関ヶ原で一体、何をしている?」


 そんな福島正則の問い掛けに加藤は笑う。


「ふふ、市松が相手か、愚問、愚問よ、俺は兼加藤だ。嘉明であって清正でもある。心せい!」


 兼加藤が大槍を構える。


「兼加藤? なんだそれは? 中途半端感がヤバいぞ! まあいい、兼加藤などよく解らん奴など、蹴散らしてくれるわ! 我は福島正則なり!」


 正則は大刀を向けて凄んでくる。


「対戦! 双方札を」


 審判員から声が上がる。


「俺はこれじゃ!」


 兼加藤が札を示す。札は中大名だ。それを見た正則は憮然とした顔をする。


「嘉明め、中々の札を持っておるのう……」


 そう呟きながら正則は懐から札を出す。


「だが俺様の持っている任札はこれだ」


 札は大大名だった。


 おおっ、任札は福島の勝ちだぞ。


「任札は藤堂福島軍優勢! それでは武具札を出して下さい」


 兼加藤はニヤリと笑った。


「勝ったと思うなよ正則! 俺はこいつを装備している! 俺の装備品はこれだぞ!」


 兼加藤は弓矢隊の武器札を差しだす。武力的には七足す三で武力は十だ。


 それを見た正則は不敵に笑う。だが正則が弓矢隊を退ける札を所持してなければ此方の勝ちだ。


 正則は懐に手を入れる。


「俺様に関しても関ヶ原合戦同様の装備をしている。これだ!」


 正則は火縄銃隊の武器札を差しだしてくる。


「な、なんと!」


 武器札の相性で、弓矢隊は火縄銃隊に敵わない。つまり、この勝負は!


「お、俺の負けか……」


 兼加藤はがっくり肩を落とす。


「第一陣、福島藤堂軍の勝ち!」


 イエース! you did it! 相手本陣から歓声が響き渡った。


「ふん、小早川の先兵などという立場は情けないが、これが福島正則よ! うおおおおおおおおおお!」


 正則は鉄の塊といった大刀を天に突き上げる。



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