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歴女作家 坂本龍馬子の奇妙な犯科録  作者: 横造正史
第三章
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西首塚での対戦  壱

 そんな山科の声に輝美が付け加える。


「そうなのよ、事あるごとに家康を目の敵にしていて、山科さんも散々怒鳴られて……」


「えっ、ど、どなられた?」


「ええ、お前を必ず倒してやるだとか、家康が軍師役とは何事だ、卑怯だぞ! とか騒ぎ立てて、とにかく煩くて敵わないのよ、そんなの作戦なのに……」


「そうなんだよ、すごくウザいの……」


 山科は頬を引き攣らせる。


「……俺としてはアイツの傘下になるのも、こっちの傘下になられるのも嫌だから、石田軍との対戦は最後が良いぞ!」


 井伊田中は厳しめの表情を作り言及する。


「うむ、儂も直政の意見に賛成じゃな、あれと一緒はウザい」


 駒野忠勝も付け加えた。


「成程、じゃあ、石田との対戦は最後に回すか…… そうしたら小早川か毛利から選ぶ事になるけど…… どっちにする?」


 山科の問い掛けに輝美が口を開く。


「確かに毛利の方が楽そうだけど、私としては小早川の方が良いんじゃないかと…… 変な外人達とも戦ってみたいし……」


「よし、じゃあ、第一候補は小早川にして、第二候補は毛利で対戦を申し込もう。それで石田隊には行かないようにすると…… これでどうかな?」


「俺はそれでいい」


「儂も同意じゃ」


「そうしたら、田中君と駒野さんにはそれぞれに対戦申し込みに行ってもらいたいけど、良いかな?」


 山科が二人に促していく。


「ああ、了解だ」


「おお、儂に任せるがいい」


「じゃあ、お手数ですけど、宜しく頼みます」


 二人はそう返事をして小早川には駒野美紀、毛利には田中顕穂が対戦申し込みに向かった。


 また交渉時間がやってきたのだ。対戦申し込みと、対戦引き受けだ。


 前回私は申し込みに行ったが、今回は自陣に待機だ。ということは対戦を申し込んでくる奴を見れるという事になる。


 そんなこんなしばらく待機していると、黒田陣に騎士と武士の折衷のような格好の女性がやってきた。


「ヨロシク、オ願イシマス、交渉ニ参リマシタ……」


 完全なコーカソイドだった。ウエーブの掛かったブロンド、濃い眉、ハリウッド女優のサンドラ・ブロックみたいな感じだ。


 格好は南蛮具足より更に西洋度が強い。銀色の胴に銀色の垂れ、陣羽織で隠されているが西洋鎧がかなりを占めているように予想される。


 しかしながら何を勘違いしているのか狐の面を顔の横に斜めに付けていた。何やら無理やり和風にしたためている感じだ。


「え~と、貴方はどちらの陣から来られたのですかな?」


 床几に腰を据えたまま山科は堂々と問い掛ける。


 小早川軍が外人主体という情報は入っている。だが敢えてなのか山科は質問した。


「ワタシハ、小早川ティームカラ来マシタ、ワタシハ、エレナ、デス、役ハ脇坂安治デス」


 エレナ脇坂は深く頭を下げてくる。


「こちらこそ宜しくお願いします。それでは対戦ですか、それとも同盟をご希望ですか?」


「コチラハ対戦ヲ希望シテイマス」


 それを聞いた山科は微笑む。


「奇遇ですね、こちらも小早川軍との対戦を希望しています。双方の希望でしたらきっと対戦に至る事でしょう。その際はよろしくお願いします」


 山科は深々と頭を下げた。


 もうここまで来ると第一選択か第二選択かという部分が需要になるようだ。小早川軍が此方を第一選択にしていたら対戦は確実だ。


「コレガ対戦札デス。オ受ケ取リヲ……」


「畏まりました」


 山科は丁寧に受け取った。


 そんなこんなしているうちに、また使者がやってきた。片手に薙刀をもった僧兵だった。


「ソレデハ私ハコレデ……」


 エレナ脇坂は僧兵を気にしながら下がっていく。


「頼もおおおおおう!」


 入れ違いに陣に足を踏み入れてきた僧兵はまるで道場破りのような雰囲気だった。


「え~と、貴方はどちらから参られたのですか?」


 山科はまた同じように問い掛ける。


「我は恵瓊、安国寺恵瓊じゃ! 毛利陣から参った。対戦を希望しておる。対戦札を受け取り願おう!」


 体が大きく圧の強い男だった。


「ほほう、対戦希望ですか。畏まりました受け取りましょう」


 山科が少し謙りつつ恵瓊から対戦札を預かる。


「して、先程のブロンド美女も使者ですかな?」


「ええ」


「あれは第何希望でしたかな?」


 僧兵は探る様に聞いてくる。


「それは秘密ですよ、そこらへんは云えません」


 山科はニヤリと笑う。


「むむっ!」


 恵瓊は顔を顰める。


「此方は其方との対戦を強く希望しておる。宜しく頼む!」


「はい、留意しておきますよ」


 山科は思わせぶりな返事をした。


「それでは失礼する」


 恵瓊は云い足りないという表情を作りながら黒田陣から去って行った。


 それを見送ってしばらくしてから輝美が小さく声を上げる。


「あの様子じゃ、毛利は此方と戦いたがっているわね」


「うん、若しかしたら向こうにも石田の情報が入っていて、避けたいと思っているのかもしれないね」


 山科は少し笑う。


 それからしばらく待つも、石田島左近軍からは使者はやってこなかった。



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