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歴女作家 坂本龍馬子の奇妙な犯科録  作者: 横造正史
第三章
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二日目 壱

 翌朝に至り、再び湯治の一日が始まる。


 調理場で米を炊き、浅葱入りの味噌汁、浅葱入りの納豆、漬物をおかずに食事を摂る。


 そして入浴だ。


 中岡編集は四時間近く温泉に浸かり続けるみたいだ。まだ二日目だが随分腰の具合は良くなってきたらしい。


 風呂に入って寝てばかりなのに、これで効果が全然ないのでは困りものだ。

 私に関しては食後、中岡編集の持ってきた資料を読み勉強する。


 生物に於ける性器について、という本なのだが、保健体育なのかこれは?


 まあ、読んでみて初めて知ったのだが、カンガルーやコアラなどの有袋類の陰茎は二股に分かれているらしいし、鯨やイルカの物は先が可動式だったり、使わないときは体内に収納されている事を知った。また、シロナガスクジラの陰茎は二メートルもの長さがあるらしい。


 そんなこんな本を読み耽った後、私も風呂に入りに行くことにする。まあ私も軽い湯治だな。


 今日も昨日と同じく女湯に入りにいくと、また先客がいた。


 今日居たのは、この湯治宿の女将である因幡阿国だった。


「あら、貴方も入浴なのね」


 相変わらず開けっ広げな感じだ。


「ええ、ストレス解消がてらの入浴です」


「ゆっくり浸かってね、うちのお風呂は色々良いからね」


「ええ、昨日、一時間位入っていたら、体の芯から温まりました」


 一緒の浴槽に入浴して気が付いたのだが、阿国は色っぽい体つきをしていた。首は細く長く、健康そうな肌色、もちもちとした体付き、胸は大きく、腰は括れ、足は長い。本当に色っぽい体つきだった。


 羨ましい程の良い体つきに見惚れてしまいそうだが、あまり見ているのは気が引ける。それもあり視線をずらすと、その先には例の男根があった。


「あら、興味あるのかしら?」


「えっ、いや……」


 また、この流れかよ……。


「凄いでしょ、金山比古様は! 太くて大きくて、形がとても美しくて、理想形を再現しているのよ」


 そんな事を口走りながら阿国は湯船から身を上げ、あろうことか一メートル程もある男根に抱きついた。


「ああん、もう、凄いわ、凄すぎるわ! 立派よ、金山比古様! 立派すぎるわよ! ああん」


 素っ裸の女が巨大な木の男根に抱き付き、愛おしそうに頬を摺り寄せている。特にイヤらしい事はしている訳ではないが、凄くイヤらしく見える。性行為をしている訳ではないが凄くイヤらしく見える。


「あ、あの……」


 私は唖然とした顔のまま声を漏らす。流石に困るだろ!」


「あっ、あら、私ったら、貴方がいる事を忘れていたわ、ごめんなさいね」


 阿国はハッとした顔で止まり、すぐに湯船に戻ってきた。

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