二日目 壱
翌朝に至り、再び湯治の一日が始まる。
調理場で米を炊き、浅葱入りの味噌汁、浅葱入りの納豆、漬物をおかずに食事を摂る。
そして入浴だ。
中岡編集は四時間近く温泉に浸かり続けるみたいだ。まだ二日目だが随分腰の具合は良くなってきたらしい。
風呂に入って寝てばかりなのに、これで効果が全然ないのでは困りものだ。
私に関しては食後、中岡編集の持ってきた資料を読み勉強する。
生物に於ける性器について、という本なのだが、保健体育なのかこれは?
まあ、読んでみて初めて知ったのだが、カンガルーやコアラなどの有袋類の陰茎は二股に分かれているらしいし、鯨やイルカの物は先が可動式だったり、使わないときは体内に収納されている事を知った。また、シロナガスクジラの陰茎は二メートルもの長さがあるらしい。
そんなこんな本を読み耽った後、私も風呂に入りに行くことにする。まあ私も軽い湯治だな。
今日も昨日と同じく女湯に入りにいくと、また先客がいた。
今日居たのは、この湯治宿の女将である因幡阿国だった。
「あら、貴方も入浴なのね」
相変わらず開けっ広げな感じだ。
「ええ、ストレス解消がてらの入浴です」
「ゆっくり浸かってね、うちのお風呂は色々良いからね」
「ええ、昨日、一時間位入っていたら、体の芯から温まりました」
一緒の浴槽に入浴して気が付いたのだが、阿国は色っぽい体つきをしていた。首は細く長く、健康そうな肌色、もちもちとした体付き、胸は大きく、腰は括れ、足は長い。本当に色っぽい体つきだった。
羨ましい程の良い体つきに見惚れてしまいそうだが、あまり見ているのは気が引ける。それもあり視線をずらすと、その先には例の男根があった。
「あら、興味あるのかしら?」
「えっ、いや……」
また、この流れかよ……。
「凄いでしょ、金山比古様は! 太くて大きくて、形がとても美しくて、理想形を再現しているのよ」
そんな事を口走りながら阿国は湯船から身を上げ、あろうことか一メートル程もある男根に抱きついた。
「ああん、もう、凄いわ、凄すぎるわ! 立派よ、金山比古様! 立派すぎるわよ! ああん」
素っ裸の女が巨大な木の男根に抱き付き、愛おしそうに頬を摺り寄せている。特にイヤらしい事はしている訳ではないが、凄くイヤらしく見える。性行為をしている訳ではないが凄くイヤらしく見える。
「あ、あの……」
私は唖然とした顔のまま声を漏らす。流石に困るだろ!」
「あっ、あら、私ったら、貴方がいる事を忘れていたわ、ごめんなさいね」
阿国はハッとした顔で止まり、すぐに湯船に戻ってきた。




