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歴女作家 坂本龍馬子の奇妙な犯科録  作者: 横造正史
第十章
457/539

宗教の目的  肆

「しかし、この国では1549年にフランシスコ・ザビエルが布教の為に訪れて以降、キリスト教が思うように広がっていない。キリスト教禁止令や鎖国などの影響あるでしょうが、基本的にこの国ではキリスト教が広まりにくい原因がありました。鎖国が終わり再びキリスト教が入り込める情勢になりましたが、キリスト教が広まっていく事はなかった。それを鑑みてその原因を考えた時、坂本さんが仰っていたように天皇の存在がありました。嘗て織田信長が天下統一を目前にしていた頃、信長自身は世界に目を向けていました。中国での皇帝や、モンゴルのフビライハーン、西洋の王などの存在に関してです。世界では武力で統一をした者が皇帝になれるのに、何故、日本ではいつ迄も天皇が上に居座っているのか、という考えを持ち始めていたのです。日本では色々な政権が政を行いましたが、朝廷を蔑ろにする事なく立てていました……」

 

 フロイスは息を吐く。


「力を持ち勢力を拡大し続けていた信長は天皇を廃し、自らが大王になるという考えを持ち始めていたのです。そして、その先には自らが神になろうとした部分も」


「た、確かに権力を得た人間は自らを神とする所がありますよね? 豊国大明神となった秀吉や、東照大権現となった徳川家康も……」


「ええ、但し、豊臣も徳川も天皇を廃そうとまではしなかった。自らを八百万の神々の一つとして祭り上げはしましたが、廃するまでは…… ですが信長は廃そうとする動きや考えを見せていた。安土城の天守閣を天主と称していたことからも伺いしれます。ですが結局、危惧され天皇を保守したい光秀に殺されるという結果に……」


 そういう見解を持っているのか…… オルガンティーノさんやフロイスさんは……


「いずれにしても神道的な多神教の存在、いや他の一神教的神の存在があっては、新たな一神教であるキリスト教を広める事は困難だと考えました。信長は国の頂点に立つために天皇を廃そうとしましたが、我々としては神としての天皇を廃し超えたいと考えた」


「でも、廃することなどは考えずに、唯一神ヤハウェで対抗するべきがキリスト教布教なのではないですか? それに神の子っであるイエス・キリストを立て対抗するのが……」


 私は思わず正論を云う。


「それでは弱いのです。太政大臣をや総理大臣を任命する生きた神がいる以上、こちらも生きた神が必要なのです。天皇以上の力を持ち、天皇の上に存在しようと考えた信長を、イエス・キリストと同等の預言者であり神の子として立てて教えを広めていくという必要が……」


「で、でも、天皇は代々受け継がれていきますけど、信長は一代じゃないですか、例え神になろうとしても、それが受け続けてはいけないでしょう!」


「だから、転生を繰り返さすのでしょ」


「あっ…………」


 そう云う事なのか……。現在の転生者のこの男が死んだり年を経たら、新たな転生者の信長を仕立てると……。そして何代にも渡る信長の転生者が教祖として存在し続けると……。


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