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歴女作家 坂本龍馬子の奇妙な犯科録  作者: 横造正史
第八章
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罪の追求  肆

 鋭く刃は立っていなくても、空気の塊を分断することは出来るようだ。


 剣の厚みと諸刃の剣の角度と振るう力と剣の長さが、波動を分断し角度を変え私に当たらないようにする事が……。


「ほう、中々頑張るではないか、では、これはどうだ?」


 信長の手が今度は赤く光を放ち始める。


 また第六天魔王インフェルノとか云うやつだ!


 私は考える。


 波動は切り裂く事が出来たが、流石に炎は切れないだろう。剣だけで立ち向かったら消し炭になってしまうに違いない。


 ならばどうする? 


 盾は炎を凌ぐことが出来た。ならばそれで凌ぎながら近接して、剣で攻撃をするのが最善の策なんじゃないのか?


 いや、それしかないだろう。盾で防御だ!


 剣の刃は切れないように丸められている。でも鉄の塊であることは間違いない。金属バッドが不良の武器になるのなら、この剣は鉄の棒としての効果だけは最低限ある筈だ。


 頭を叩いて気絶させるぐらいの攻撃力は……。


「ぬおおおおおおおおおおおおおおっ!」


 信長が再びロダンの地獄門を焼いた時のように集中し始めた。


 私は左手で盾を構え、右手は少し体で隠し気味に剣を握りしめる。


 頭に絶対に一撃喰らわせてやる。


「いくぞ! 第六天魔王、イン! フェルノオオオオオオオオオオ!」


 ぶわっと炎が放出され、火炎の渦が私の構える盾に襲い掛かる。炎が盾を焼け焦がす臭いが鼻腔に入り込んでくる。


「くううううううううっ!」


 それでも私は盾の陰に隠れながらじわりじわりと前進する。信長との間合いは十メートル程だった。前進に伴い今は六メートル程に縮まっている。


 こ、この盾はどの位持つのだろう? 熱い炎を浴び続けたら、流石にそれ程は持たないだろう。


 時間が鍵になる。


 信長の方もそんなに長くはインフェルノを放出し続ける事は出来ない筈だ。疲弊して集中力がきれて威力が弱まってくるに違いない。その瞬間に一気に前に出るんだ。


 私は盾に隠れながら、中岡編集に習った。北辰一刀流の奥義を半数した。


 盤鐘ノ位。打てば響くような反応、鐘の音の余韻のように集中力を切らさず、反応出来る状態。石火之位。石を打ち合わせた際に出る火花の如くに素早い反応。

霞ノ位。葉に露が溜まり、それが零れるが如く、自然ながら隙を見出しそれを就く反応。


 冷静な心理状態を保ちつつ、隙が出来たら一気に行く。そうだ素早い反応だ。


 私は盾越しに炎の威力を推し量る。信長の集中力も然ることながら、周囲の酸素濃度が下がり燃える要素が減り、炎の威力が落ちる時を……。


「ふははははははははっ、いつまで耐えられるかな?」


 信長は自信満々に言及する。


 でも、少しずつ威力が弱まってきているような気が……。


 我慢し続けた末、その時はようやくやってきた。吐き続ける息が止まるようなそんな瞬間が。


 炎の放出が断続的になってきたのだ。


 今だ! 今しかない!


 私は一気に前に出た。


「むううううううううううっ! 小癪な……」


 間合いを詰められた信長が呻き声を上げる。


「覚悟!」

 

そして私は剣を振るい上げる。


「いやあああああああああああああっ!]


「ぬおおっ!」


 振り下ろした剣が信長の頭に迫る。


 加減しないと、加減しないと! 気絶する程度の力でいいんだ……。


 剣が頭に当たるか当たらないかといった瞬間に信長の姿がスッと消えた。


「えっ!」


 私の剣は振り下ろした勢いのままスカッと地面に落ちる。


「き、消えた?」


 横から殺気を感じる。私は慌てて横に視線を走らせると、横には信長が手のひらを向けて私に翳している。


「しゅ、瞬間移動?」


「波動!!」


 そ、そんな! テレポートしたというの?


「喰らええええええっ!」


「き、きゃあああああああああっ!」


 ほぼ無防備の状態で私は横からの波動をくらい吹き飛ばされる。


 波動の圧力で私は手に持っていた剣と盾を振り落としてしまう。


 やばい、完全に丸腰だ。


「貴様は愚かにもこの私に対して剣を振りかざした。私の頭に剣を振りかざした……」


 冷たい、とても冷たい目で私を見る。


「覚悟するがいい。重い、とても重い罰を……」


 広場に半身で横たわる私は絶望し覚悟した。もう抗う事は出来ないと。


「これからお前の心を破壊する。理性、自我、精神、感情、そうったものを壊す。この教会に忠実な人間として、お前の心を零から構築していく」


 心を破壊する? 超能力で精神を破壊して精神支配をするというの?


 私は青ざめる。


 私の心。龍馬子としての心。いや違った…… 亮子としての心。それら全てが変えられてしまうというの?


 そんなんじゃ、私が私でなくなってしまう。そんなの嫌だ。嫌だよ!


 そんな私の悲痛な叫びは無視して信長が再び手を翳してくる。


「……人間五十年、化天のうちにをくらぶれば、夢幻の如くなり、一度生を享け、滅せぬもののあるべきか……」


 そして敦盛を口にし始めた。


 何か頭の中がぼんやりとしてきた。何か自我や理性といったものが失われていくような感覚だ。


 怖い! 私の心が消されていっているのか?


 ほんやりとした心の中に浮かんだ恐怖心も徐々に薄らいでいく……。


 恐ろしい…… 恐怖心まで消えていくのか……。



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