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歴女作家 坂本龍馬子の奇妙な犯科録  作者: 横造正史
第六章
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結城へ 参

 小山駅で下車した所で、私達は不良学生の八ッ橋と伊藤とようやく別れる事が出来た。今度は水戸線へと乗り換える。


 水戸線で二つ目の駅が結城になるのだ。そんな水戸線に揺られ、小田林、結城と乗り進み、私達は結城駅で下車した。


「ふう、ようやく結城駅に到着したな」


 中岡編集は改札を出た所で結城の町を見回す。


「しかしながら、えらい目に合いましたね、何なんですか、あの不良学生は……」


 私は八ッ橋を思い出し大きく息を吐く。


「きっと漫画とか映画に影響を受けちゃったんだろう。若気の至りだよ」


「こっちは良い迷惑ですよ」


 私はデコピンを食らった額を摩る。


「まあ、気を取り直して、結城城に向かおうじゃないか」


「ええ、了解です」


 駅舎を出て、地図を片手に結城の町を進んで行く。大町という交差点を右に曲がり、市役所や高校の間を走る道を抜けると、こんもりと木が茂った結城城跡が見えてきた。


「戦国期には結城晴朝、そして、その養子となった秀康がこの地を治めるが、家康が天下人になってすぐに越前福井へ国替えとなり、その後の百年近くは幕府の天領となった。千七百年代になってようやく水野勝長が国替えで結城へと入り、この結城城が再興する事になるのだ」


 しばらく進むと、市の指定史跡の案内板が立っていた。そこには結城城の成り立ちと、結城氏の結城合戦での活躍などが記されていた。


 しかしながら、中規模から小規模な城の城跡だからなのか、遺構らしきものは内堀跡や曲輪跡位で、残っている物は殆ど無い。本丸のあった場所も城跡公園になっているが、嘗ての遺構は全くなかった。一応、聡敏神社という水野勝成を祀ったという神社があるが、分社らしく人は居ないようで、内部を見学する事は出来なそうだった。


「因みに水野勝成さんはどの辺りの時代の人ですか?」


「勝成は枝分かれた忠重の直系の子供だ。関が原の合戦や大阪の陣でも活躍をした人物だ」


「功績が称えられて神社に祀られているという事ですかね?」


「そんな所だろう」


しかしながら城山公園から周囲を確認するも、宅地造成がなされて城跡は相当狭められてしまっていた。寺も城関係の建物も全く無く、埋蔵金が隠されている気配は微塵も感じられない。


「近くに嘗ての堀を利用した親水公園があるようだから行ってみよう。川と沢瀉と寺に該当する場所があるかもしれないし」


「ええ、でも、宅地造成が凄いですね、この辺りに埋蔵金があるようには到底思えませんよ……」


「まあ、確かにな…… だが取り合えず行ってみよう」


「ええ、了解です」


 そうして駅側へと少し戻り嘗ての堀だったという親水公園へと赴いてみる。


「ここが西の堀だったようだ。おっ、畔に沢瀉が咲いているぞ」


 堀の端の方に白い花が咲いていた。


「あれが沢瀉ですか、小さい花なんですね……」


「ほら、見たまえ、葉が特徴的なんだよ、下が二股に分かれていて水野家の家紋の葉にそっくりだろ」


「ええ、上手く図柄にしていますね……」


 そう答えつつ、私は改まって周囲を見回す。


「でも、近くには寺なんてありませんね……」


「確かにないな…… それと全体的に新しくされすぎていて、古いものの気配が全然無い…… 一応、此処まで調べに来てみたが、この付近は的外れだったかもしれないな……」


 中岡編集はふうと息を吐いた。


 結局、周囲をしばらく散策した後、私達は本命の目的地である水野忠邦の墓を目指し南下することにした。


 一旦結城駅へと戻り、バスを使い山川不動尊前まで行き、そこで下車する。そこから徒歩で五百メートル程西に進んだ場所に水野忠邦の墓があるのだ。


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