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歴女作家 坂本龍馬子の奇妙な犯科録  作者: 横造正史
第五章
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高崎の夜 伍

 そんな失態の夜は明け、翌朝私達はホテルのロビーで集合した。朝六時だ。


「昨日は有り難う。そして、済まなかったね」


 中岡編集は頭を掻きながら云ってくる。


「もう良いですよ、私が余計な事をしたのがいけなかったんですよ……」


 私は自虐的に呟く。


「ちょっと動揺して、思いもよらない言葉が出てしまったよ、でも本当に有り難う」


 改まって中岡編集は頭を下げてくる。


「実はさ、靴べらを受け取ろうかと思ったんだけどさ、裸だし、靴べらを受け取るのも変だし、で、受け取らなかったんだよ、善意を受け取らずに申し訳なかったね」


 言い訳だ。


「もう、その件は良いですよ、忘れてください。全て忘れて下さい」


 私は強制的に話を終える。


「ち、因みに、美佐子さんに連絡は付いたのですか? 合流するしないという相談をするとか云っていましたが?」


「いや、それが、教えてもらった番号に何度も掛けてみているんだが、一向に繋がらなくてね」


 中岡編集は表情を曇らせる。


「まあ、ちょっとリスキーな状況というのもあるから、呼ばない方が良いとも思うが……」


「確かに呼んでも変装してもらったりしなければいけなくなるかもしれませんし、その準備はしていませんし、報告はした方が良いとは思いますが、一緒に結城に向かうのは避けた方が良さそうですね。もう、此処まできたら事後報告でいいんじゃないですか?」


「もう、朝だし、そうするしかないけどな……」


 そんな話を小声でしながら、私達はロビーで清算を済ませ外へと出た。


 良い天気で絶好の探索日和だった。


「あ~あ、途中だけど、残念だが、探索は中止だ。帰ろう! 東京へ帰ろう!」


 中岡編集は周囲にも聞こえそうな大きな声で私に声を掛けてくる。


「ええ、残念ですけど中止ですね。東京に帰りましょう!」


 私も負けず劣らずの声で返した。


 そうして私達は高崎駅へと向かって歩を進ませる。


 駅では東京までの運賃分の切符を買い、上野行きの高崎線のホームへと降り立った。


 結城に向かうなら両毛線のホームに降り立つ筈だが、我々は高崎線のホームだ。


 周囲を見回すと、ホームにはちらほら人が居た。怪しげなサラリーマン風の男や、怪しげなサラリーマン風の男や、怪しげなサラリーマン風の男だ。というかサラリーマン全員が怪しく思えてならない。


「帰りましょう! 東京へ帰りましょう。次は性器信仰の神社でしたっけ? 行きましょう。その調査に向いましょうよ」


 私は大きめの声を上げる。


 しばらくすると、ホームに上野行きの高崎線が入ってきて、私達は車両の端の方に乗り込み腰を下ろした。


 すぐに発車のベルが鳴り響き、高崎駅発の上野行の列車が動き出す。


 いよいよ変装探索の序章だ。今日は本当に気を付けて行動しなければならないだろう。私は大きくふうと息を吐いた。


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