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歴女作家 坂本龍馬子の奇妙な犯科録  作者: 横造正史
第七章
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私なりの検証  漆


 私達は朝食を食べ終わると、清子の案内でいつもの謁見の間のような奥座敷へと向かう事となった。


「あっ、清子さん、申し訳ありませんが、昨日ご主人様がお亡くなりになった場所に赴いた時、愛用のペンを落としてしまったので、それを取りに行きたいのですが……」


 途中、中岡編集は思い出したような顔で問い掛ける。


「ペン…… ですか?」


「ええ、古い友人からの戴き物でして…… 少々大事にしている物なので……」


 中岡編集は困り顔で頭を掻きながら説明する。


「解りました……」


 そうして、我々は母屋に行く前に、清子に引き連れられ、昨日穴山老人が地面に突っ伏し絶命していた現場がある屋敷裏手の裏庭ともいえる場所へと赴いた。

 事故現場にはロープで囲いがしてあり、その中央に土の地面にチョークで無理やり書き記した人型の痕跡が残されていた。


 その人型の跡は、屋敷の基壇の端から五メートル程離れた場所に位置していた。


 私はゆっくり建物の上部を見上げる。石垣は角度がきつく八十度程の角度で反り上がっており、その上に天守閣のような建物が三層構造で載っていた。


 天守閣といっても層塔型天守閣の形状のようで、低減率は左程高くない。つまり上層階でもそれ程面積が狭まっていないということだ。一階と二階の間には六寸勾配の一間程張り出した屋根があり、その上に飾り窓である唐破風があった。とても美しく綺麗な唐破風だった。


 二階と三階の間にも同様に屋根がある。ただ二階と三階の間の屋根には周縁が設けられており、それが屋根の上に載っていた。周縁の幅はおよそ一メートル程のように見える。


「確か、この辺りで落としたと思ったんだが……」


 中岡編集は頭を下げ、地面を見詰め、うろうろ探しながら呟いた。


 実の所ペンなど落としていないのである。なので見付かる筈もないペンをもたもた探しながら私が現場の確認をする時間を稼いでいるのだ。


「……見付からないのですか?」


 清子は急かすように聞いてきた。


「ええ、すみません……」


 中岡編集は頭を掻きながら困り顔で返事をする。


 しばらくもたもた探しているものの、業を煮やした清子が声を上げた。


「……警察が持っていってしまったのではないでしょうか? 落としたというのは警察が来る前の事でしたよね」


「あっ、そうか、回収されてしまった可能性があるのか……」


 中岡編集はハッと気が付いたような顔で清子を見た。


「恐らく……」


 そして私を見る。私は僅かに顎を引いた。


「……仕方が無い。後で問い合わせててみよう……」


 中岡編集は頭を掻きながら呟いた。


「……では、もう宜しいですか?」


「ええ……」


 そうして私達は急かし気味の清子に引き連れられ、屋敷の裏庭を後にする。

 最後に私は、もう一度、穴山老人が落ちた場所と屋敷の全容を確認した。


 ……やはり変だ。だとすると、あの方法が取られたという事か……。


 私は屋敷の構造を再確認し、自分の考えに納得できた気がした。



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