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歴女作家 坂本龍馬子の奇妙な犯科録  作者: 横造正史
第七章
34/539

私なりの検証  伍


「まず一つ目は、明日の朝、、確証はないものの大凡埋蔵金のある場所が解ってきたので埋蔵金を探すために山探しをしたいと伝えるのだ」


「なるほど、二日目に身延山に行った時のようにするのですね」


「そうだ、外に出られれば逃げ出すチャンスも訪れるだろう。だが敵もさる者。もう最終日であるし、そう簡単には行かせてくれないだろう。そして行かせてくれたとしても連絡をする隙などは与えてくれない気もする。そして埋蔵金のある場所があまり簡単すぎると、僕達は用済みと向かう前に殺されてしまう恐れがある。なので僕らが行かなければ解らないという感じに持っていかなければ駄目だろう」


「確かに」


「なので、僕達としても本気で埋蔵金を見つけ出す位の気概が必要になってくる。正直、ここまで調べ続けた事もあるし、僕自身も埋蔵金を発見したい気持ちもある」


「殺されるのは嫌ですが、私も埋蔵金は見付けたいとは思っていますよ」


 中岡編集が小さく頷いた。


「ここまで調べた上での僕の考えでは、矢張り天子七滝の先に龍口があり、龍口に侵入する部分が岩戸となっているのではないかと思える」


「そうですね」


「それを探しに行きたいので、屋敷を出るという風に持っていこうと思うのだ」


「まあ、その理由ならば監視若しくは同伴という事になるかもしれませんが、この家を出る事だけは出来そうですね」


「そして、二つ目は、屋敷から山までの移動中に、監視の隙を付き、警察を動かす為の手立てを行使するのだ」


「具体的にはどうやるのですか?」


「殺されそうだから助けてでは、警察は動いてくれないだろう。仮に動いてくれてもどう助けてよいかが判断しずらい。なので僕は、埋蔵金の在処と思しき場所に、死体があったので早く駆けつけて欲しい。という通報を何らかの形で警察にしようと思うのだ」


「確かに、死体があったという通報が一番早く警察が来てくれそうですよね」


「ただ、その場合、その場所をある程度特定しておかないと効果が薄い、なので我々向かうべき岩戸の位置をきっちり特定し、その場所に警察をも誘い込む事が必要なのだ」


「一石二鳥を狙う訳ですね」


 中岡編集は頷く。


「そして、三つ目なのだが、穴山老人死亡を事故ではなく事件だった事を立証し、警察に接触した際に、その事実をもって穴山老人殺害事件容疑者逮捕という警察沙汰に転換させるのだ」


「三鳥ですか!」


「穴山老人殺人事件への転嫁は、殺人事件があった家という状況下であれば警察の目も厳しくなり、おいそれと僕達を殺害出来ない状況になるはずだ。更に家族の誰かが穴山老人殺害の罪で逮捕という事にでもなれば、彼らの素性や過去の出来事も明るみに出るかもしれない」


「で、出来ますかね?」


「おいおい君は何を云っているのだ。出来ますかね? じゃないぞ、何の為に此処に推理作家がいるのだ。そこで君が警察が納得できるロジックを披露するんだよ」


「えええっ、私がですか?」


 予想外の促しに私は驚きの声を上げる。


「そうだよ、私がだよ。推理作家、坂本龍馬子である君がやるんだよ。事件の後に疑わしい事を見付けたとか云っていたじゃないか!」


「た、確かに私は一応推理小説家、坂本龍馬子かもしれませんが、そんな状況でなんて自信なんてありませんよ」


「推理小説の回答編を淡々と朗読するようにすれば大丈夫だ。それで、あの穴山老人が殺されたとされた場合に関する必要な情報は揃っているのか? そして推理は可能なのか?」


「ええ、ちょっと気になっていたので、穴山老人の部屋を確認した際の様子や、穴山老人の遺体の感じ、周辺の状況で、ある程度の推理を組み立てる事が出来ると思います。出来ればもう一度老人の落下地点の確認と、外から建物をもう一度見てみたいですけれど……」


「なら、明日、山探しを直訴しに行く際その部分をもう一度視認してみよう」


「そ、そうですね」


 いずれにしても、警察に接触した際に、穴山老人の事故を事件として、スムーズに説明出来ないといけないのである。私はそれから穴山老人殺人事件の顛末を論理的に説明できるように整理をする。


 中岡編集は埋蔵金の場所を特定し、そこに盗賊団であるこの家族を誘い出し、警察に突き出す計画を練っていった。


 とにかく明日が、私達にとっての運命の岐路となるのは間違いない。私は頭の中で何度も予行演習を繰り返した。


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