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歴女作家 坂本龍馬子の奇妙な犯科録  作者: 横造正史
第六章
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更なる考察  捌

 私は借りてきた本を手当たり次第調べていった。すると、山梨の山を歩く、というハイカーの体験記が書かれた本の中に、天子七滝を散策した際の体験記が書かれてあった。


「中岡さん。これは?」


「ああ、参考になるな」


 私と中岡編集は食い入るようにその体験記を読み進んでいく。


 それによると、稲子川が二俣に分かれる所に、天子七滝を巡る起点があり、一方は西沢方面、そして天子七滝がある側は先が天子ヶ岳へと向かうようになっているとの事だった。


 そして、その起点付近に朽ちた炭焼き用の石窯と、炭焼きの説明が書かれた案内板があり、その案内板には消えそうな字で、芝川町上稲子では昭和二十年頃まで炭の生産を行っていた事、昭和三十年頃、石油、プロパンガスが普及してきた為に、炭の生産は無くなくなってしまった事、そして炭窯の作り方、炭の焼き方、炭窯の構造などが書かれていたという。


「炭窯だって……。じゃあこの地は本当に炭焼きが盛んだったと云うのか」


「とすると炭焼き長者の伝説は伝説などではなく本当にあった事から発生した話なのかもしれませんね」


 私は少しぞくりとした。


 そのまま読み進めると、筆者は、落差十五メートル程の清涼の滝を皮切りに、観音の滝、不動の滝、丸渕の滝、しずくの滝、瀬戸の滝、魚止の滝と巡っていく。途中白炭炭と書かれた苔むした炭窯の痕跡のようなものがあったと書かれてあった。


 それ以外にも岩に関しての説明などもされていて、魚止の滝に至る流れの中には卵のような岩があったとか、魚止の滝は両側に張った岩が竜の肩のようで、滝そのものは太い竜の太い胴のようだなどと感想を述べていた。


 そして、一番奥に位置している魚止の滝の流れを追い、更に進んでいくと俯いた竜の頭のような形をした岩があったなどとも書いてある。


「竜の頭のような形の岩だって!」


 中岡編集は興奮気味に声を上げた。


「でも、岩の形に関しては感性によって捉える印象は人それぞれで違ってきますよね、本当に竜の頭に見えるのでしょうか?」


「確かに亀の形に似ていると云われても、そう見えない場合もある。名所と云われている場所ですらそんな感じなのに、そう紹介されている訳ではない場所の岩が竜の頭に似ていると書かれていても、他人には竜に見えないかもしれないとも思える。宮崎県日南市にある祇園神社には龍の頭と思われる岩があるのだが、その岩は確かに竜の頭に見えるが、その神社で祭られているのは竜神なんだ。そう関連があれば岩が竜に見えてくるのも頷ける。しかし天子七滝の滝の奥は山深い殆ど人が立ち寄らぬ場所だ。仮に本当に龍の頭に見えても、周りの景色に紛れてしまうとも云えるだろう……」


 そう云いかけて中岡編集は顔を上げる。


「……だが、僕には其処こそが龍口ではないかと思えてならない」


「私もその可能性は大分高いと思いますよ」


「しかしながら、ここまで来たら、もう山を歩いてみない事にはこれ以上先に進めないだろう。とにかく明日は早起きして稲子川を遡り、天子七滝、及びその先にある天子ヶ岳頂上を目指して歩いてみよう」


「そうですね」


「となると明日は山歩きだな。また君が汗臭くなってしまうが、行かない訳にはいかないだろう」


「……」


 それ、余計なお世話だろ。


「とにかく今日は明日に備えて休む事にしよう」


 時間はいつの間にか過ぎていて、時計の針は夜の十一時半を指していた。


「わ、解りました」




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