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歴女作家 坂本龍馬子の奇妙な犯科録  作者: 横造正史
第六章
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更なる考察  弐

 そう考えながら、小屋の戸を後ろ手に閉じると、小屋と門の間の方から清子がやってきた。


「あっ、清子さん。お風呂有難うございました」


 不穏な気配があったが、とにかく汗を流す事が出来たのは一番有り難い。私はお礼を云った。


「お済みですね?」


「ええ、良いお風呂でした」


「何よりです」


「ところで清子さん、先程小屋の裏に居られました?」


 私は先程の事が少し気になり質問してみる。


「いえ、私はずっと帯郭櫓に居りましたよ、戸の開く音が聞こえたのでこちらに参ったのですが……」


「そうですか……」


 ……きっと気のせいだったのだろう。ちょっと自意識過剰だったかもしれない……。


「もう暗いのでお部屋までお送りしましょう」


「有難うございます」


 そうして、提灯を手に持つ清子と一緒に、我々に宛がわれている庵へと帰っていった。庵の戸を開け中に入ると、中岡編集は小難しそうな顔をしながら厚手の本に視線を送っていた。


 清子は庵に到着すると、すぐにいつもの様に門のほうへ引き返していく。相変わらず寡黙だった。


「おう、帰ってきたか」


「すいませんお待たせしました」


 私は玄関で履物を脱ぎ踏み上がった。


「すっきりしたか?」


「ええ、とてもすっきりしました」


「……ほんのり朱に染まって、少しは色気が出てきたじゃないか」


 中岡編集は私の首辺りに視線を向け笑いながら云ってくる。なんだかイヤらしい。


「な、中岡さん、さっき風呂を覗きに来たでしょう」


 私は風呂で感じた視線を思い出しならが云った。


「いや、行っていないぞ。ここでずっと調べ物をしていたが……」


「本当ですか?」


 私は探るような視線で聞き返す。


「ああ本当だ。……なあ、君ちょっと自意識過剰じゃないか? 僕は前にも云ったが龍馬の裸を見たいとは思わないし、汗臭いのが取れた所で龍馬を抱く気はないぞ」


「だ、か、ら、龍馬って云うな! それと抱かせんとも云ってるわ!」


 私はキレて声を荒げる。


「君、段々言葉使いが悪くなってきたね」


「だ、誰が悪くしていると思っているんですか! 中岡さんが余計な事を云うからでしょう!」


「……でも君が、僕が風呂を覗いたなんて練れ衣を云うからじゃないか……」


「ほ、本当に覗いていないのですか?」


「神に誓って覗いていないぞ!」


「……」


 ……確かに誤解の場合もあるか……。


 正直、覗いたという確証もある訳ではない。とすると今回は私が早合点しすぎたかもしれない……。


「……わ、解りました。も、もう、その話は終わりです。さっさと続きの検証を始めましょう!」


 私は目を伏せ話を切り替える。


「そうだ。時間はどんどん過ぎていってしまうんだ。早く続きを始めようじゃないか」


 私はいそいそと中岡編集の対面に腰を下ろした。




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