検証とするべき手立て 壱
少し考察を加えてから、すぐに回答編にしようかと思ったのですが、余りにヒントが少ない気もしますので整理して考察をする話を入れる事にしました。話が長くなりますがお許し頂けると幸いです。
私達は広間に到着すると、朝、座っていた場所に腰を降ろした。なんだかんだ結構歩いたし、色々な衝撃的な事に出くわしたし、精神的にも疲れていた。すこし休憩したいところだ。
私達は皆、一点を見詰めたまま只々佇んでいた。
「ふっ、ふふっ、とうとう、私、坂本さん、中岡さん、柴田さん、明智さん、細川さんだけになってしまいましたね……」
丹羽が自虐的に笑う。
「ええ、沢山死んでしまいました…… なんでこんな目に……」
私は顔を横に振りつつ答える。
「しかしながら一体誰がこんな事をしているのだ? 誰であればこの所業をする事が可能なのだ?」
中岡編集は頭を上げ、怒ったように言及する。
「まあ、ここまで人が少なくなってきている状況ですから、行動確認をしていけば犯行が可能な人間を見出す事ができるかもしれません。ただ共犯の場合は解りませんけどね……」
私は頬を掻く。
「じゃあ、取りあえず最初から順を追って確認してみようじゃないか、最初の殺害から誰と誰が可能で、誰と誰が不可能なのかを」
「ええ、やりましょう。それをやらないと先には進めない気がします。そして、それだけでなく、外部に島の異常を知らせる手立てもしましょう。あの針の山地獄覗きの所と、船着き場の所で火を焚き煙を上げましょう。それと見えないかもしれませんが木で(たすけて)という文字を形作って、沖や空から見えるようにしてみましょう」
中岡編集の提案に私は付け加える。もう今日中に解決しないと駄目だ。今日中に何か手立てを講じなければ動けなくなる。そう私の心の声が云っていた。
「じゃあ、私が順を追って、説明していきますよ、良いですか?」
私は率先して声を上げた。
「あ、ああ、あんたは明智さんと一緒で推理小説家さんなんだろ? だったら任せるよ」
柴田は頷く。
「坂本さん宜しくお願いします」
丹羽も頭を下げてくる。
「じゃあ、失礼して…… まず、最初の事件は織田さん殺害です。織田さんは夜中に殺害されたのは間違いありませんから、この宿に居た殆どの人に犯行が可能だと思います」
「そこは納得だ」
柴田は首肯する。
「次の事件は前田さん失踪でした。これは海を見に行くと云っていた前田さんが帰って来なくなったというものです。失踪してすぐに死んだのか、しばらく経ってから死んだのかは定かではありません。ただ失踪した当時はほぼ全員が集まっていましたから、その時点での殺害は不可能だと思います。出来るとしたら外部犯だけになるでしょう」
「まあ、そうだな」
中岡編集が答えた。
「その後、前田さんを探しに、中岡さん、森さん、滝川さん、柴田さんが出掛けられました。そして宿坊には明智さん、細川さん、私、丹羽さん、寺男の平手さんが残って……」
「そうでしたね」
丹羽は緊張からかふうと息を吐いた。
「恐らく、この間に前田さん殺害、そして寺男の平手さんの殺害が行われたのだと思われますが、この間はかなりの時間があります。島の大外を巡り船と前田さんを探していた為に二時間半程の時間がありました。確か最初に船着場の方をに見に行って、そこで中岡さんと柴田さんの二人と、森さんと滝川さんの二人で、左右に分かれて島を回ったと聞きましたが?」
「そうだ。それで地獄巡りの血の池地獄近くで合流したんだ」
中岡編集が口を挟む。
「ただ島の大外を巡る際、必ずしも一緒にいた訳ではないとも聞きました」
「探しながらだったからな、僕等に関しては僕が海側、柴田さんがやや内側というか、山側を歩いていたよ」
中岡編集が声を上げる。柴田は同意だといわんばかりに頷いた。
「森さんと滝川さんは亡くなってしまいましたから、今更聞けませんが、確か同じように必ずしも一緒にいたという訳ではなかったと云われていた記憶があります」
「確かにそう云っていたな、僕にも記憶がある」
中岡編集が言及する。
「丹羽さん。確か道としては整備されていないけれど、島の外側からこの寺に真っ直ぐに近い感じで登ってこられると聞いたと思うのですが、それは本当に可能なのでしょうか?」
「ええ、可能は可能です。ちょっと険しいですが幾つかルートがあります。それを使えば十分程で寺まで登れると思いますよ」
丹羽は答えた。
「そうなると外を巡っていた四人にも犯行は出来なくはないという事になりますね」
「出来なくはないが、結構大変だぞ」
中岡編集が眉根を寄せた。
「まあまあ、今は出来るか出来ないかの検証ですから……」
私は頭を掻く。
「ただ屋内に留まった明智さん、細川さん、私、丹羽さんに関しても、じっと座っていたので時間感覚が狂っている可能性がありますが、丹羽さんは厨房と広間を行ったり来たりしていましたし、私や明智さんはトイレに行ったりもしました。その間に抜け出て寺男の平手さん殺害、及び、丁度入れ違いに宿坊に戻ってきた前田さんを殺害をしたという可能性が無いとは云えません」
「丁度、戻ってきたって、それ都合が良すぎないか?」
また中岡編集が指摘してくる。
「でも、前田さんはそのうち宿坊に引き返してくる筈じゃないですか? 犯人だったとして暗躍を続けるなら戻って来なかったかもしれませんけど、前田さんは遺体で発見されました。となると生きていた場合なら宿坊に戻ってくるという行動をとっても変ではないですよ」
「じゃあ、宿坊近くで前田さんを殺害したというのか? 遺体はどうするんだよ、遺体が見付かった血の池までは距離があるぞ?」
「その場合は遺体は宿坊近くに隠しておいたんですよ、そして、夜中に血の池に沈めた…… 夜の満潮に近い時間に沈めたので、十時頃我々が発見した時には干潮というのもあり沖に移っていたと……」
「そ、そうか! 解ったぞ! 俺が夜に見かけた明智は、前田の遺体を海に沈めた後で戻ってきた時だったって事か!」
柴田は目を見開いて叫んだ。
「ちょ、ちょっと待ってください。まだ早計です。可能性はありますけど、もう少し全体を追いましょうよ」
「追うのは構わないが、俺にはあの明智って女の仕業だと思えてならないぞ」
柴田は興奮気味に云う。
「まあ、いずれにしても、寺男の平手さんと前田さん殺害に関しては、全員にその可能性があったと私は思います」
「異論は少しあるが、一応、それで進めようじゃないか」
中岡編集は顎を引いた。




