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歴女作家 坂本龍馬子の奇妙な犯科録  作者: 横造正史
第六章
198/539

緊迫した空気  陸

 そうして、寺男の平手の遺体を織田の部屋に入れ、織田と平手の遺体をシーツで包み、その上で部屋を閉じた。部屋を閉じると血生ぐさい匂いは殆どしなくなった。


「じゃあ、この建物内に凶器的な物が隠されていないかを確認してみましょう。それと凶器ではありませんが台所にある包丁なども回収しましょう。凶器的な物が出揃った所で、海にでも捨てましょうか……」


「でも料理とかはどうするのですか?」


 丹羽が聞いた。


「包丁を使わない料理、雑炊とか煮物とかでお願いします」


「成程です……」


 その後、各々の部屋に全員で入り込み、凶器となる物がないかどうかを確認して、凶器になると思われる物を回収していった。勿論使っていない部屋にも入り込み、そういった物がないかを確認する。


 細川女史、明智女史の部屋からは何も出てこず、私と中岡編集も特に何も没収される事はなかった。子丑寅卯辰の部屋に泊まった五人の部屋もそれぞれ確認をするも、怪しいものは特に出てこなかった。


 そのまま宿坊の受付まで至る。


「ここも見ておいた方が良いですよね?」


 確認するように丹羽が聞いてくる。


「そうですね、鋏とかカッターナイフのような文具も一応ですが回収しておいた方が良いと思いますよ」


「そうですか……」


 丹羽は受付内に入り込むと、ごそごそと引き出しなどを開け、受付の机の上に鋏やカッターナイフなどを並べ置く。


「私の記憶ではこんなものだけだと思いますが、一応皆さんで受付内を確認してみて下さい」


 そう促され、私、中岡編集、柴田、滝川が受付内に入り込み、凶器となる物を探してみる。しかしそれらしい物は見当たらなかった。


「では続いて広間及び台所で探してみましょう」


 台所の方では、包丁が五本と鉄串が回収される事になった。


「じゃあ、丹羽さんや寺男さんが寝泊りされているお部屋と、仏師さんが泊まられているお部屋を確認したいと思いますけど」


 明智女史がそう促すと、イケメン仏師の森が躊躇いがちに手を上げた。


「あ、あの、わ、私は、広間と浴場の間にある、関係者用の部屋を利用させていただいているのですが……」


 仏師の森は躊躇いがちに後を続ける。


「……私は仏師という立場もありますし、今回こちらに参りましたのも仏像の修復の為に来ておりまして…… 私の部屋には修復の為の道具箱があります。その道具箱には、錐や小型の鋸や鑿や木槌などが納まっておりまして……」


「鋸を持っていたのですね?」


 柴田が厳しめな顔で声を上げる。


「ええ、余り意識してなかったのですが、小型の鋸を持っていました……」


 辛そうなイケメン仏師を見て、私は思わず庇う為の弁明をする。


「ち、ちょっと待ってください、で、でも、織田さんが首を落とされていた断面は綺麗で、その首を切り落としたのは日本刀か斧みたいな物だって、明智さんが云っていたじゃないですか、だから鋸を持っていたって、別に問題ないじゃなですか、森さんは無実です。森さんは何もやっていません。森さんはいい人ですから!」


「な、なあ、そのいい人っていうのは関係がなくないか?」


 中岡編集が頭を傾け疑問を呈する。


「えっ、でも、森さんはいい人ですし、そ、それに私を庇ってくれましたし……」


「その庇ったっていうのと、いい人だっていうのと、鋸を持っていたというのは全然関係がないだろ」


 中岡編集は眉根を寄せる。


「でも、森さんはいい人なんです」


 そんな私を見て柴田がふうと大きく息を吐いた。


「あんた、森さんに惚れちゃったのか?」


「ち、ちがっ!」


 と否定するも、図星を突かれた私は顔がどんどん熱くなっていく。


「あんた、顔が真っ赤だぞ」


 柴田が余計な一言を云う。


「そ、そんな事ありませんよ!」


 否定する私の横から呟く声が聞こえてきた。


「……赤い龍馬だ……」


 何かと一言多い滝川が余計な事を吐く。あ、あ、あ、赤い龍馬だと! コイツ、何ぬかす! 怒りで私の顔は更に熱くなった。


「ぶっ!」


 柴田が口を押さえつつも噴出す。


「ぷっ、くくっ、お、おい、滝川、あ、赤い龍馬って何だよ!」


 私は図星を突かれた恥かしさと、龍馬とまた云われた怒りでとうとう爆発した。


「う、うるさいわよ! だ、か、ら、龍馬だとか、龍馬に似ているだとか云うんじゃないわよ! 似てないわよ! 全然似てないわよ、もう許せない! 龍馬って云った奴全員、叫喚地獄に落としてやる! 叫喚地獄に落としてやるわよ!」


 私は鬼の形相で柴田と滝川を睨みすえる。


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