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歴女作家 坂本龍馬子の奇妙な犯科録  作者: 横造正史
第六章
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緊迫した空気  弐

「ぞ、像の首を落とされている事と、首を切断されている事…… 像が無くなっている事と行方不明者が出ている事がですか……」


 傍にいた丹羽が確かめるように聞き返す。


「その可能性があると思いますよ」


 明智女史は答えた。


「あ、あれ、あそこの像なのですが、胸の辺りに何かが刺さっていませんか?」


 また細川女史が仏像を指差しながら声を上げる。


「えっ、どれですか?」


 イケメン仏師が顔を左右に動かし、九体に減じた仏像を目を皿のようにしながら見た。私も仏像を注視する。


「真ん中の辺りの像です。手にしゃくみたいなのを持っている影になってますが、ほら何かが……」


 その真ん中近くの像を良く見ると、胸に金属のような光る物が刺さっていた。


「あっ! た、泰山府君像に!」


 イケメン仏師が叫ぶ。


「何が刺さっているのですか?」


 丹羽が訊く。


「ナイフですよ、ナイフが突き刺さっているんですよ、く、くそっ、なんだってこんな事を……」


 イケメン仏師は頭を抱える。


「……これも暗示だとすると、誰かがナイフで刺し殺されるという事になりかねませんね……」


 明智女史が眉根を寄せつつ呟く。


「えっ、誰かがナイフで刺されるだって? 誰がそんな目に!」


 柴田が叫んだ。


「解りませんけど、それを示唆している可能性もありますよ」


「とりあえず、まだ起こっていないんだ。となると、これから起こるって事か? 」


 そのまま柴田が問い掛ける。


「そこまでは解りませんよ」


 明智女史は顔を横に振る。


「でも全員いるんだし、これから起こる事なんて示唆したって警戒されるだけのような気がするが……」


 柴田は眉根を寄せる。


「あっ、あれれ、そういえば、あの寺男のお爺さんの姿が見えませんが、今どこに?」


 中岡編集がハッとした顔で周りの人の顔を確認する。


「えっ、そ、そういえば見ていませんよ、いえ、広間から此処に来る前からそういえば姿を見ていないような気がしますけど……」


 私は思い出しながら言及する。


 皆もこの場所まで一緒に来ていたと思い込んでいたようで、姿の見えない寺男の老人に何かあったのではと、揃って顔を青褪めさせた。


「し、心配ですよ、食堂まで戻ってみましょう!」


 丹羽が叫ぶように言及する。


「そ、そうですね」


 中岡編集は頷いた。


 そうして、丹羽、柴田、佐久間、滝川、中岡編集、私、仏師の森、明智女史、細川女史は連れ立って食事を摂った広間の方へと戻っていく。


 しかし広間には寺男の老人の姿は無い。


「い、居ないぞ!」


 柴田が叫ぶ。


「厨房の方ですかね」


 丹羽が奥の小部屋の方に近づき中に視線を走らせる。


「い、いや、居ませんね」


 丹羽は顔を横に振る。


「さっきまで奥の小部屋と広間を行ったり来たりしていたじゃないか、そんな遠くには行っていないような気がするけど」


 柴田が周囲を見回す。


「トイレでも行ったんじゃないかな?」


 柴田の横で滝川が呟く。


「ちょっと見てこよう、おい、佐久間と滝川、一緒に来てくれよ、一人じゃ怖いから……」


 柴田が強張った顔で云った。


「そうしたら私と細川とイケメン仏師さんで厨房の奥にある勝手口の外をちょっと見てきましょう。丹羽さんと中岡さんと龍子さんは受付の辺りを見てきてください。三人づつ位が良いでしょう」


 明智女史が云った。


 な、なんでその分け方なんだよ、私だってイケメン仏師さんと一緒がいいわよ!


「わ、解りました。ちょっと確認してきます。じゃあ坂本さん、中岡さん行きましょう」


「了解です。行きましょう」


 中岡編集が答える。


「えっ、ええ……」


 私は目でイケメン仏師さんを横目で見詰めつつも渋々頷く。

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