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歴女作家 坂本龍馬子の奇妙な犯科録  作者: 横造正史
第六章
193/539

緊迫した空気  壱

「本当ですかそれは?」


 柴田が再度訊いた。


「いえ、見間違いかもしれませんが、さっき、あれ? って思ったんですよね……」


 イケメン仏師は真剣な眼差しのまま答える。


「何かの暗示かもしれませんね。気になりますよ……」


 明智女史が顔を上げながら言及する。


「えっ、暗示って、なんの暗示ですか?」


 柴田が声を震わせながら明智女史に問い掛けた。


「人が消えるという暗示ですよ。その暗示通り前田さんが消えたという状態に陥っていますし……」


「そ、そんな馬鹿な!」


 堪らないといった顔で柴田が叫んだ。


「と、摂り合えず、仏堂はすぐそこだし、本当に仏像が消えているか見に行ってみようじゃないか!」


「ええ、私も仏像の手入れをしている身としても、一応見ておきたい気がします」


 イケメン仏師が頷いた。


「私も気になりますから見たいですね」


 明智女史も声を上げる。


 そうして、皆で仏堂を見に行く事になった。


 屋根の付いた廊下を進み、仏堂の側面にある入口から仏堂内部へと足を踏み入れる。そこには恐ろしげな顔をした彼岸の裁判官達が居並んでいた。


「あっ、ほら、一番端に飾られていた五道転輪王の像が無くなっています、矢張り気のせいじゃなかったか……」


 イケメン仏師が緊張した声を上げつつ像のあった場所を指差す。確かに像が無くなっているようだが、私の目には十体の内の一体が無くなっていても余り印象は変わり映えは無かった。ただ仏師ならでは、その事に気が付いたのだろうと思われる。


「人が行方不明になっている事に比べれば、仏像が無くなった事なんて大した事では無いかもしれませんが、なんでこんな事を…… 壊れやすいのに……」


 イケメン仏師は残念そうに呟く。


「あっ、大変! 大変です!」


 先んじて奥の方まで進んでいた細川女史が驚いたような声を上げた。見ると、緊張した顔で奥の方に飾られている像を指差していた。


「どうしましたか?」


 イケメン仏師が細川女史の近くに慌てて歩み寄る。私も近づき視線を向ける。


「あ、あの仏像…… 頭が……」


 蒼白になって指差す仏像に視線を向けると、あろう事かその頭が無くなっていた。


「あ、頭が無い…… ど、どうして! な、なんだってこんな真似を!」


 イケメン仏師が少し怒り気味に叫んだ。そして呆然としたまま膝を付く。仏師としては仏像を傷付けられるのには我慢が出来ないのだろう。


「その像も暗示の可能性が高そうですね……」


 明智女史がまた声を上げた。


「えっ?」


 皆は緊張入り混じる顔で明智女史を見た。


「今朝発見された方は首を落とされて亡くなられていたし…… そして現在行方不明の方が一人ですし…… 像の状態と現在の私達の状態は似ていますし……」

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