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歴女作家 坂本龍馬子の奇妙な犯科録  作者: 横造正史
第五章 
19/539

検証  肆    


 私は改めて地図を見てみた。天子山地を形成するのは、白水山、思親山、天子ヶ岳、長者ヶ岳、毛無山、雨ヶ岳である。身延山の奥の院の思親院と同じ名前がある。何か因果が感じられる。しかし天子ヶ岳という山こそが天の岩戸を指しているようにも感じる。


「あの、中岡さん。身延にあるという湯ノ奥金山というのは隣の下部温泉駅の近くにあるのですよね」


「ああ、下部温泉駅から山を登った中腹辺りにあったと思う」


 私は地図を凝視した。地図上に湯ノ奥金山という名前を発見する。


「中岡さん。湯ノ奥金山は毛無山に山中にあるようですね。その毛無山も天子山地に属しますよ」


「うん、金山で産出した金で甲州金を作り保管した。怪しい気配があるな……」


「私もそう思います」


 続けて私は地図を見ながら声を上げる。


「天子山地が怪しいと考えると、怪しい山は湯ノ奥金山のあった毛無山、日蓮に関する名前を持つ思親山、天の名を冠する天子ヶ岳ですかね」


「……確かにその辺りが怪しいな…… ん? おっ、これは……」


 別の本に視線を送っていた中岡編集が驚きの声を上げた。


「ちょっと聞いてくれ、まだ武田家の系図を追っていたんだが、意外な事実を発見したぞ」


「意外な事実ですか?」


「少し前に江戸期に存続していた高家武田家の話をしていたと思うが、その祖は信玄の次男である海野信親だった事は話したよな?」


「ええ、聞きましたが」


「その海野信親を調べていった所、また関連性のある文字が現れてきたんだ。それは盲目の為出家した際、長延寺の実了という僧の弟子となり、名を竜芳、竜宝と号したというのだ」


「竜芳、竜宝ですか」


「ああ、芳とは芳名長などでも使われるように敬意を表すものだ。はたまた竜宝ならば正に宝だ」


「となると、掛け軸に書かれていた、我らが祖先の名にこそ、分銅の礎へと通じる端緒となりけん。心眼をもって望むるべきなり。という文章と繋がってくるように思えますね」


「そうだ。高家武田家の祖とは信玄に他ならないが、信玄が死んだ後断絶してから再興した家だ。とするなら信玄の次男である海野信親が祖とみなされる場合もあるのではないだろうか? 江戸中期に書かれた物らしいとの事だが、だとすると高家武田家の人間が幕府の目を盗んで書いたのではないだろうか」


「掛け軸の文言と併せて考えると、竜芳の名に宝の道へ通じる切っ掛けとなると書いてあるように見えてきますね」



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