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歴女作家 坂本龍馬子の奇妙な犯科録  作者: 横造正史
第四章
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事件発生  参

 しばらくすると、中岡編集に引き連れられ、丹羽と年配の寺男が慌てた様子でやってきた。


「お、お連れ様が亡くなられているですって…… それは本当の事なのでしょうか?」


 我々の傍までやってきた丹羽が、立ち竦む柴田に質問する。


「え、ええ、ほ、本当です。それも大変な状況で……」


 丹羽と寺男が恐る恐るといった様子で部屋の中を覗き見る。


「ひ、ひいっ!」


「こ、こ、こ、これは……」


 丹羽と寺男は僅かに声を上げると、口に手を当て呆然とした様子で動かなくなる。


「と、とにかくこんな状態なのです。早く警察に連絡をしないと……」


 中岡編集が促した。


「いや、でも……」


「でも?」


「いや、連絡をしなければいけない状態なのは解っています。そうです。そうなのですが…… こ、ここには電話がないのですよ……」


「えっ、電話が無い?」


 丹羽の説明を聞き、中岡編集が驚いた顔をする。周囲の男達も同様だ。


「え、ええ……」


 丹羽は額の汗を拭いながら答えた。


「島であることもありますが…… 寺という施設でもありますので連絡は手紙等でやり取りを致して居りまして…… それと此処は電波などが入らない場所ですので携帯なども使えませんし……」 


「で、電話が無いのですか…… 困りましたね……」


 中岡編集は頭を掻きながら呟いた。


「どうしましょうか?」


 丹羽が逆に聞いてくる。こんな時どうすれば良いのか解らないといった顔だった。


「とにかく、殺人事件ですから、出来るだけ早く警察には連絡を入れないといけませんよ……」


 中岡編集が眉根を寄せつつ言及する。


「そうです。時間が掛かったとしても、とにかく警察に知らせる必要が…… 電話がないなら、飛脚状態でも構いませんから、早々に警察に連絡を入れないと……」


「そ、そうだ。ならあの渡し舟の人に陸まで渡してもらって、陸の方で近所の民家から警察に連絡をしたらどうですかね?」


 多少はしゃんとしている小柄な前田が提案してきた。


「そうですね、それしかないですね……」


 中岡編集が頷いた。


「あっ、でも、気を付けないといけない場合もあるか……」


 中岡編集は思い付いたように付け加える。


「気を付かないといけない場合? 何ですかそれは?」


 前田が顔を顰める。


「いや、少し落ち着いて考えてみると、今現在の状況としては、この島の中で殺人事件が起こっていますよね?」


「ええ、そうです。その通りです」


 前田は頷く。


「となると犯人がいる可能性も…… あるわけですよね……」


「あっ、ああ、その可能性もありますね……」


 前田は答えながら真剣な顔になる。


「万が一警察に連絡を入れに行った人が犯人だった場合に犯人が船頭さんをも殺すような事があれば、まんまと取り逃がしてしまう可能性も……」


 中岡編集は躊躇いがちに説明した。


「そ、そうか…… そんな事もあるのか…… 犯人が此処にいる誰かだという可能性も……」


 前田は頷いた。


 横に居た丹羽や柴田、滝川などは僅かながら猜疑的な視線で周囲を見つつ強張った顔のまま頷いた。


「なので、船で陸まで行って警察に連絡するというのは良いですが、行くなら取り合えず複数名で行った方がいいと思いますよ」


「た、た、確かにその方が良さそうですね……」


 寺男の老人が相槌を打つ。


「……ただ、これで終わりであれば良いですけど、すんなりいかずこじれたりすると嫌ですね……」


 中岡編集が改まって緊張入り混じる顔で呟く。


「拗れたりって、どんなふうに拗れる恐れがあるんだ?」


 前田は戸惑い気味に云う。


「まだ何とも云えませんけど……」


 中岡編集は思わせぶりに濁した。


「更に拗れたりなんかすると堪らんぞ……」


 前田はふうと大きく息を吐く。


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