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歴女作家 坂本龍馬子の奇妙な犯科録  作者: 横造正史
第四章
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事件発生  弐

 そんな私達の驚きの声を聞きつけたのか、隣の部屋から男集団の他の面子が姿を現す。


「どうしたんだ柴田?」


 小柄な男が眠そうな目を擦りながら、呆然と立っていた柴田という顔の長い男に声を掛けてくる。


「おお、前田…… た、大変な事が起こったんだ…… 佐久間が見付けたんだが…… お、織田の奴が……」


「織田がどうした?」


「こ、殺された……」


「こ、殺されただと! 死んでいるとかじゃなくて殺されたのか? なんでそんな事が解るんだよ?」


 小柄な男が驚きの声を上げる。


「み、見てくれ……」


 その柴田が遺体のあった部屋の中を手で指し示す。


 促された前田という小柄な男は、自分の部屋から身を出し、私や中岡編集、そして座り込んでいる佐久間という男をチラリと確認してから、恐々とした様子で示された方を覗き見た。


「うおっ、こ、こ、こ、これは……」


 前田は手で口を抑え固まった。


「な、何てことだ…… く、首から上が無いじゃないか…… な、なんでこんな目に……」


 前田は身をガタガタ震わせながら搾り出すように云う。


「そうなんだよ! 首を切られて殺されていたんだよ!」


 柴田は叫んだ。


「どうしてこんな目に……」


「…………」


 柴田は無言のまま首を横に振った。


「と、ところで、滝川の奴は?」


 前田が自分の出てきた部屋の更に隣の部屋に視線を向ける。


「た、滝川はまだ出てきてない、まだ寝てるのかもしれない……」


「あいつにも教えないと!」


「……あ、あの、ちょっと良いですか? それだけではなく、この宿坊を管理している丹羽さんや、寺男のお爺さんに早く伝えないと…… それと警察へ通報も……」


 中岡編集が小さく手を挙げ言及する。


「そ、そうですね、そうですよ…… 仲間内の事ばかり考えていて、その事を失念していました……」


「そうしましたら、丹羽さん達には僕が伝えに行ってきましょうか?」


 中岡編集が提案する。


「す、すみません、お願いできますか?」


 柴田は頭を下げる。


「ええ、勿論ですよ」


 中岡編集は頷く。


「じゃあ、僕はちょっと行ってくるぞ」


 中岡編集は私の方を見ながら云ってきた。


「宜しくお願いします」


 私は小さく頭を下げる。


 中岡編集が呼びに行くと、それにつられる様に柴田と前田が滝川という仲間が寝ている部屋に歩み寄る。


「た、滝川、滝川! 起きているか? 入るぞ」


 二人はそのままその滝川という仲間の部屋の中へと入っていく。廊下には震えながら座り込む佐久間という小太りの男と私だけが取り残された。人が少なくなると、再び怖気が強まってくる。


 し、しかし、どうして首まで切り落としたのだろう?


 私は推理小説家ならではの考えが浮かんでくる。


 しばらくすると、その滝川という男の部屋から、二人の男に抱えられるようにして半分寝ているような男が連れ出されてきた。真ん中に位置する寝ているような男が恐らく滝川という男で、両肩を預け、無理やり起され連れて来られたような感じだった。その滝川という男は余り特徴のない男で、こんな人居たかな? と思うような印象の薄さだった。私の事を笑ってすらいないかもしれない……。


「織田が殺されただって? 本当なのか?」


 その滝川はまだ寝起きの為か半開きの目付きのまま鼻に掛かったような声で質問する。


「ほ、本当なんだよ……」


「う、うわああああああああああああああっ!」


 戸の前まで至った滝川は、部屋の中に目を向けると瞬間的に大声を上げた。


「くっ、首が無い!」


「ああ、首を切り落とされたみたいなんだ……」


「な、何て事を……」


 滝川は膝から崩れる。


 横で支えていた柴田と前田はそのまま肩を外し立ち竦んだ。

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