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歴女作家 坂本龍馬子の奇妙な犯科録  作者: 横造正史
第五章 
18/539

検証  参

「七面山には天の岩戸のような場所と龍口かもしれない一ノ池はあった。だが入れるようになっていなかった。そして穴山家の人々が池に目を付け他の池を探し回ったという事だったが、三から七までの池はなかったとの事だ。穴などは当然見付から無かったと云う」


 中岡編集は指で顎を摩りながらしばし考え、そしてゆっくり口を開いた。


「ちょっと、すまんが武功録に書かれていた文言を読み上げてくれ」


「ええ、解りました」


 私は手帳を広げる。


「いいですか読み上げますよ…… 身延の山にて拝み、天の岩戸なる龍口より入らずんば、備えを隠したる彼の地に辿り着くなり。戦の際には活用するべきなり。です」


「うむう、成る程…… そうしたら、ちょっと見方を変えてみよう」


「見方を変える?」


「あの文章における身延の山にて拝む、というのを身延山で祈祷するという意味としてではなく、身延の山から見れると取ってみるという事だ。可能性が高いと思われる七面山も身延山から拝める場所にある。……七面山は怪しいが、しかし入るべき龍口、竜口はまだ見付からない無いがね……」


 中岡編集の説を聞き、私は地図を見ながら必死に考える。


 舐めるように地図を見詰めていた私は、ふと身延山の富士川を挟んだ向い側に天・子・山・地と随分広い間隔で、富士山の西側に沿うように書かれた山地名が刻まれているのを見つけた。


 えっ? 天子山地……。 


 私は何かを感じる。


「あ、あの中岡さん。身延山の目の前に広がる山脈みたいなのは、天子山地と云う名前みたいですが、何か関係があるのでしょうか?」


「……天子山地…… 確かに関係がありそうな名前だな……」


 中岡編集は腕を組む。


「……僕は、今まで天岩戸の天を七面天女の天ではないかと考えていた。しかし天女の現れた池や巨石には龍口、竜口などの入口らしきものはなかった。まだ六ノ池や七ノ池の可能性が無い訳ではないが、松子さん曰くそんな場所は探したが見付からないと云う。探し方が下手だった可能性が無いとは云い切れないが、僕等より足が達者な松子さん達が数人で山に分け入り探したのであれば見付かる可能性は遥かに高いと云える。それでも見付からないとなると見当違いだった可能性もあるだろう……」


「ええ、すぐにへろへろになる中岡さんや私が探すより、余程発見しやすいと思います」


 私は山での中岡編集の醜態を思い出しながら云った。


「……僕の醜態は置いて於いて、更に少し視点を変え、天は天子山地を指し、天岩戸が天子山地にある岩戸と考えてみるのも面白いかもしれないな」


「洞窟みたいなものがあるかも知れませんね」


「ああ、唯でさえ富士山の傍には風穴、氷穴、溶岩穴などの天然の穴が沢山ある。富士山の西側の外輪山のような天子山地にだって洞窟の一つや二つはあるだろう。しかしながら広大な山地だ。南北に全長三十キロメートル近くもある。山の中を探すのにも限界がある。まだ天子山地と確定した訳ではないが、これから僕は天岩戸が天子山地にある岩戸である仮定して調べてみようと思う」



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