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歴女作家 坂本龍馬子の奇妙な犯科録  作者: 横造正史
第二章
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円海寺  壱

 中岡編集がぼやく様に呟く。


「さてと、じゃあ取り敢えず、あの船頭が指を差していた島の中央の方へ進もうか……」


「そうですね、というかそれしか道が無さそうですし、それしか出来る事もないですし……」


 そうして、私と中岡編集は海岸の奥に位置する小道に向かって行った。その道の両側には木々が生い茂り、道そのものには海岸の石でも撒いたのか小石が多く見られた。

 

 しばらく進むと、石段が設けられており、その石段の先に門が現れた。門の両脇には塀が設けられ、それが横にある崖まで至っている。回り込んで進めるようにはなっていない。


「門ですね……」


 私は見上げながら云った。


「総門だな。此処をくぐると寺の領域に至るようだな」

 

 私と中岡編集は恐ず恐ずと門をぐぐった。抜けると門の先は視界が開け平らで広い場所になっていた。


「ようやくお寺らしくなってきましたよ、先にお堂みたいな建物が幾つか見えますし」


「ああ、そのようだな、右手奥には宿坊みたいなのも見えるしな」


「あの横に長い建物ですか?」


「ああ多分な、宿坊は平屋で横に長い建物が多いからな……」


 そのまま私と中岡編集は地ならしがされた参道を真っ直ぐに進んでいく。途中には中門のような門が配されており、その両脇には、仁王ならぬ、角が生えた鬼のような姿をした立像が睨んでいた。


「ほう、牛頭と馬頭を飾っているのか……」


「牛頭と馬頭?」


「ああ、獄卒の一つだ。牛頭の方は人の体に牛の頭を持った姿で描かれ、馬頭のほうは馬の頭になる。馬頭は角がないものもあるが、額にユニコーンのような角を持つ姿で描かれている事もあるようだ。まあ、ここでは門番として飾られているのだろう。しかし、胸の筋肉の彫りが凄いな、運慶を彷彿とさせる出来栄えだぞ」


「ええ、かなり迫力がありますね」


 私も像をまじまじと見ながら答えた。


 牛頭と馬頭の飾られた中門を潜り抜け、奥に見える一番大きそうなお堂に向かって進んで行った。その正面のお堂はかなり大きな物だった。


「ふ~ん、ここは本堂ではなく仏堂といった感じだが……」


 お堂に少し入り込んだ所で、中岡編集がぼそりと呟く。


「本堂と仏堂ですか、それって同じじゃないのですか?」


 私には違いが解らない。


「いや、同じにしている所もあるが、別けている所もある。仏堂とは本来仏像を安置している場所全てを差すのだが、本尊を置き、法要などをする場所が所謂本堂とされ、本尊以外の仏像を置いている場所は置いてある神様の名前を持って、阿弥陀堂とか釈迦堂とか、本堂以外に設けられている所も多いのだ」


「ああ、成程、そう云えば、大きなお寺だと敷地内に幾つもお堂がある所がありますね」


「身延の久遠寺もそうだったろ?」


「確かに」


 納得しつつ堂内に入り込むと、少し上がった高砂の上に横にずらりと坐像が並んでいるのが見えた。


「ほほう、中央には閻魔像か…… それに他にも閻魔像に似た像が並んでいる……」


 閻魔像やその他の像の前には柵が設けられ、余り近くまで寄れないようになっていた。

それでも中岡編集はギリギリまで前に出て像を見詰める。


「隣は変成王と書いてあるな…… となると十王を並べている訳なのか……」


「良くご存知ですね」


 いきなり横から声が掛かった。

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