表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
歴女作家 坂本龍馬子の奇妙な犯科録  作者: 横造正史
第六章
156/539

事件解説  参

 先程まで中岡編集に対して訝しげな視線を送っていた徳次郎は、一応だが二の句が告げられない様子だった。


 そこまで説明してから、中岡編集は改まり、ゆっくりと言葉を繋げた。


「……ただですね、実の所を申しますと、今回の一連の殺人を行った犯人は、更に恐ろしい程の周到な考えを持っていたようですね……」


「えっ?」


 中岡編集の発言に石田警部が声を上げた。


「この最初の密室殺人事件は今見て頂いて解るように、これ自体が相当考えこまれ、巧妙な下準備を経て行われた殺人でした。花札に関しても、発見後に問い詰められたとしても、敢えて作った物ではなく自然にそのような物になったと言い逃れが出来る程の物でもあります……」


 藤林家の人々、そして警察関係の人々は眉根を寄せて花札を見ていた。


「第一の密室を作り上げた方法は、確かに今やった方法が使われたと思います。しかし、ここまで巧妙に偽装して、この密室自体の謎が解らないようにしていたにも関わらず。実の所、この第一の密室は、犯人が敢えて警察や住民の誰かに発見させる為に仕込んだ偽の密室だったようです……」


「えっ、ほ、本当ですか、それは?」


「ええ、本当です。真に知識のある私の目は誤魔化せません!」


 やたら自分を上げやがる。


「し、しかし、推理小説家を務めて居られる坂本龍馬子氏が、その事実を見付けた際に、随分自慢げに我々に説明して居られたではありませぬか!」


 石田警部は私の方に視線を向けながら言及する。


 その、じ、自慢げ、というのは云いすぎだぞ……。


「ふふふ、それに関しては、坂本は愚かで短慮で浅はかが故に、犯人の思惑に騙されてしまったのですよ」


 こ、こいつ! 何て事を! 土下座して縋るから手柄を譲ってやったのに、私を悪し様に云うのかよ!


「坂本の奴が最初に正治郎さんの部屋の密室の謎を解き明かした時は、まんまと騙されていたのです。そして、犯人が見付ける事を想定していた密室の謎を解き明かし、警部が仰られたように、大層自慢げに説明してしまったようです。まあ、僕は最初の密室が敢えて作られたものだと解っていたので、サムターンに花札を差す向きを間違えてしまいましたけどね、はははは」


 な、何が、はははは、だ! 


 しかし、上手い誤魔化し方をしやがるな…… でも、その、愚かとか、短慮とか、浅はかとか、大層自慢げに、とかいう言葉は要らないぞ!


「し、しかし、なんだってそんな手の込んだ偽装を……」


「僕としては、それは第一の犯行時に於ける容疑者の霍乱と、第二の殺人事件に於ける密室の謎を雲に撒く必要から行われたのではないかと考えます」


「容疑者の霍乱と第二の密室の謎ですと?」


 石田警部が更に質問する。


「ええ、誰がどうやってやったかが一切解れなければ不可能犯罪、そして、迷宮入りという事に至る可能性がありますよね、ただ犯人はそうはしたくなかった。この家の誰かが犯人であるものの、犯人が誰だか解らないという状況にしておきたかったのではないかと思われます」


「この家の誰かが犯人で、誰が犯人か解らない状態ですと?」


「そうです。当初は鍵を持っていた富子さんやその富子さんと一緒だった徳次郎さんが犯行が可能だと目されていました。しかし第一の密室殺人の謎が解けた今となっては、鍵を持っている持っていない如何に関わらず、ある程度の人間が犯行可能な状態になっています。相互確認次第とも云えますが、奥様と百合子さんも双方の隙を付いて殺害を行い密室を作りあげるという可能性も出てきますし、奥様と百合子さんの共犯で殺害を行ったという場合。またこの家の主である慶次郎さんが何とか体を動かし犯行に及んだという可能性まで出てくる事になるのです」


「確かにそうなるが……」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ