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歴女作家 坂本龍馬子の奇妙な犯科録  作者: 横造正史
第四章
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捜査協力  弐

「さて、同志坂本龍馬子よ、それでは今回の事件に関して、推理小説家としてどう考えて居られるのであろうか? 参考までお聞かせ願えないだろうか?」


 いつのまにか同志になっているし、いつのまにか部下っぽい扱いを受けている気がする。それと耳障りな言葉が……。


「あ、あの、すみません。龍馬子って呼ぶの止めて貰えませんか…… 私、その名前で呼ばれるの嫌なんです」


 私は苦言を呈す。


「おっ、そうなのか? 良き名前じゃないか、私の事も三成子と呼んでも構わないが……」


「いや、あなたを三成子と呼ぶ事と私を龍馬子と呼んでいいという事は別問題じゃなですか、私の事は龍馬子と呼ばないで欲しいのですよ」


 私のその声に石田警部は口惜しそうな顔をする。


「じゃあ、何て呼べば良いのだ?」


「好きに呼んで下さいよ。龍馬子以外で……」


 石田警部は少し考える。


「ならば才谷梅太郎と呼ぼう。確か坂本龍馬はそう名乗っていた時があった……」


「う、梅太郎っ!」


 し、しまった。こ、こいつ中岡編集と同じレベルだったぞ、女の私に梅太郎はないだろう!


 私としては坂本さんとか、坂本氏とか敬称付きで呼んでもらえるものだとばかり思っていたので大きなショックを受けた。


 それにしても頼み事をしている相手に梅太郎ってどういう神経をしているんだ!


「さ、坂本で……」


 私は呟く。


「梅太郎は嫌か?」


「坂本さんで!」


 私は語気を強める。


「好きに呼べと……」


「さ、さ、さ、坂本さんで!」


 私は叫ぶように云った。


 渋々といった表情で石田警部が呟いた。


「……坂本さんはどのようにお考えか……」


 押さえ込んでやったわ。私は大きく息を吐く。


「逆にお伺いしますが、警察は現在この事件をどのように考えられていますか?」


 気を取り直した私は、自分の意見を云う前に警察の見解を聞いてみた。


「それがよく解らぬから困って居るのだが、今現在の警察の見解では、最終的に答えが出なければ、第一の正冶郎氏の殺害は、ご主人の手で行われ、ご主人ご自身は自責の上でご自害されたという方向で考えて居るが……」


「そ、その考えですか…… 一体動機はなんなのですか?」


 石田警部は顔を横に振りつつ答える。


「よく解らぬ。近い存在の確執のようなものではないかと……」


「ではどうやって、病気で寝たきりのご主人が正治郎さんを殺したと考えられるのですか?」


「それに関しては、徳次郎さんと富子さんの協力を得た上で部屋に侵入し、行ったのではないかと少し考えては居るが……」


 さすがに中々考えられている事が窺える。


「という事は共犯という方向で考えられているのですか…… でも強引すぎじゃないですか?」


「最終的に答えが出なければその方向も視野に入れなければならぬと考えているだけじゃ、我々もちゃんとした真相を突き止めたいと思っておる……」


 そう発した石田警部を見ながら、私は腕を組み少し思案をする。


「……一応ですが、私の考えとしては、二つの事件は両方とも殺人事件だと考えています。ご主人も正治郎さんも殺されたと…… 少なくとも、ご主人が正冶郎さんを殺害し、その為の御主人の自殺だとは思っていません……」


 私は自分の考えを言及した。


「ほう、自信がありげな答えだが、今回の事件で何か気付かれている事でもあるのかな?」


「現場を調べさせて頂いた訳でもなく、細かな情報が私に届いている訳でもないので、正確な事は云えませんが、一応、私なりの見解はあります」


「出来れば、その見解をお聞かせ頂けますかな?」


 石田警部が探るように聞いてくる。


「まだ全然予測の段階ですが、それでも宜しければ……」


 石田警部は頷いた。


「まず、なのですが…… 私としては、今回の事件は、まず、最初の事件における、密室を解かないと、その後の事件のあらましが見えてこないと考えています……」


「なるほど順番にか……」


「一応なのですが、密室の作り方には、心理的に密室に見せる方法と、扉など隙間を外から気付かれないように固めて密室にしてしまう方法、そして何らかの方法を使って鍵を閉める方法があります。今回の第一の事件では、恐らく何らかの方法を使って鍵を閉める方法が使われたのではないかと私は見ています」


「ほう、その三つ目の方法が使われたと……」


 興味深げな表情で石田警部が聞いてくる。


「ええ、外から鍵を使わずに内側の鍵を掛けるのです」


「果たしてそんな事が上手く出来るのだろうか?」


 石田警部は眉根を寄せる。


「現場を見ていないので、正確な事は云えませんが、その方法を使ったのであれば、何かしらの痕跡が残っているはずです。そして、その方法で密室を作ったのであれば、こと最初の密室に関しては、現場不在の問題を抜きにして、鍵を持っていようがいまいが、殆どの人間が犯行可能になってくる事になります……」


「痕跡か…… そのような物は無かったように思うが…… そうしましたら現場で、私にどのように部屋の外から内側の鍵を掛ける事が出来るかを、説明してもらっても良いであろうか?」


 石田警部は首を傾げながら言及する。


「私なんかが現場に入り込んで良いのですか? 捜査上の秘密情報が見えてしまいますけど……」


「秘密情報といえる事は左程は無い。逆にどうやればそんな事が可能なのかが聞きたいと私は思う」


 石田警部は、まだ良く解らないといった様子で私を見ていた。


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