スクアード
総合センター。
始まりの町に存在する、プレイヤーのサポート施設の1つだ。ここでは主に様々な情報を扱っていて、マニュアルを見て分からない事やゲームシステムで分からないことなど様々な目的でプレイヤーはやってくる。前回町の地図を貰った時は人がそんなにいなかったが、今日はすごい人がいる。
なので、聞き耳を立てるといろいろな情報が入ってくる。
「ああ、金が無い。いいよな強いやつは・・」
「聞いたか?西の森の中で遺跡があったらしいぞ」
「マジかよ、俺一括千金狙うかな」
「何言ってんだよお前ら。知らないのか?もうすでにその遺跡『ドラゴン』が探索したってよ」
「『ドラゴン』か。それじゃ何にもないんじゃねーか?」
「ああ、『ドラゴン』虎姫ちゃんにあいたいな・・」
「お前じゃ無理だ。俺は『チーム流星』の星姫ちゃんがいいな」
「俺は・・・」
などなどここに居るだけでくだらないものがほとんどだが、様々な事がわかる。
今日でゲーム開始から4日目、ゲーム攻略組と言われる連中はもうこの街を拠点にしておらず、様々な他の町を拠点にしているっぽい。
西の森に遺跡か・・。俺まだ1回もこの街から出てないんだよな。
この街は前にも説明したが4つの区画に別れてる。そして4つの門がありそれぞれにあり、そこからあちこちにつながっている。またプレイヤーには初めからこの世界の地図が配布されているが、その地図は持ち主が訪れた場所しか示さないようになっている。金を払えば行った事の無いところも地図に書いてくれるサービスもあるらしいが、今の俺には関係ない。
ま、そんなことは置いといて、俺はカウンターにいく。
「すいません。お金が無いんですが、何かモンスターを倒す以外で稼ぐ方法って無いですか?」
カウンターにいる女の人に聞く。ここのカウンターには男女半々くらいの人が受け答えしている。
もちろんみんなNPCだ。
「モンスターを倒さないとなりますと、武器や薬などを作って売るしかありません」
受付の女の人が笑顔で答えてくれた。
ようするに、「生産しないんならモンスターを狩りにいけや!」という事なんだろう。
「じゃあ、武器や魔法以外の戦闘手段を教えてくれるところはありますか?」
仕方ないから強くなれる所を聞いてみる。
「少々お待ち下さい、えーと確かこの辺に地図があるはずなんですが・・・。あ、ありました。ここに書かれているところに行ってください。この街にはここしかありませんから」
そう言って1枚の地図を渡してきた。
「どうもありがとう」
地図を受け取り、用が済んだのでカウンターをあとにする。
「とりあえず、ここに行くか」
「ここだ・・」
地図に書かれた場所に来てみたが、そこははっきり言ってボロボロの家だった。今にも崩れそうな柱、強風で吹き飛びそうな屋根、クモの巣のがはっている窓。夜に来れば心霊スポットと間違えるような外見だ。
正直入りたくはない、けどここしか無いとダメというんだから仕方が無い。
「ごめんください」
玄関と思われる扉を開け、中に入る。
そこにはよぼよぼの老人が1人椅子に座っていた。年は80歳位だろうか。
「何かようかね?」
よぼよぼの老人がしゃべった。意外に声はしっかりしている。
「あの、ここで戦い方を教えてもらえると聞いたので来たんですが」
「おお、それは本当かね。実は自分で戦闘方を作ったのはよかったんだが、誰もこなくてね。みんな、魔法や剣に走ってしまうものだからね」
おいおい、今まで誰も習いに来なかったって何かダメなんじゃないのか?
「そんな変な顔をする必要はない。おめでとう、君が一番弟子だ。そして私に出来た最初の弟子だ。そう言えばまだ名乗って無かったね。私はスクアード。好きに呼んでくれ。君の名前を教えてくれるかね?」
なんか弟子になる事が決まってしまった。なんかあっさりし過ぎじゃないか?
普通もっと何か「わしは教えん」みたいな事言われて、教えてもらうのに条件があったりしるもんじゃないの?まぁいいかけど。
「よろしくお願いします。お・・じゃなくて自分はソラといいます」
「ふふ、そんなかしこまらなくていいよ。普段どうりしゃべりなさい」
「わかりました。お願いします」
「ふふ、まだ固いがいいか。ところで教えるからにはここに住んでもらいたいんだがいいかね?」
スクアードさんとここに住む!?
「そうだよ。ここに住むんだよ。まぁ修行が終わるまでの間ね。もちろんご飯の準備や掃除などの雑用もやってもらうがね」
「あの~、修行が終わるまでってどのくらいですか?」
「そうだね、最短で2カ月。長くても3カ月だと思うがね」
つまり2カ月の宿代が浮く事になる。
「修行が終わったら、1人でモンスターたおせますか?」
「ああ、それは絶対大丈夫だ。・・・まあ、乗り切れたらの話だがね」
何かスクアードさんが最後にボッソっといったがなんていったんだろうか?
けど、こんなにいい事だらけの話に乗らないわけにはいくまい。金の無い俺にとっては最高の条件だ。
「わかりました。ここに住みますのでお願いします」
「分かった。いいよ」
そう言うとスクアードさんが立ち上がりこっちに歩いてくる。口調が今までと違う。
おかしくないか?さっきまでよぼよぼの老人が背筋ピーンと伸ばして歩いてくるよ。
俺の前でスクアードさんは立ち止り、いきなり自分の顔に手を当て始めた。そして、顔が剥がれ出した。まるで、ル〇ン三世の主人公が変装を解くときの様なかんじだ。そして、剥がれた顔の下から別の顔が現れた。
改めてスクアードさんの顔を見る。今度の顔はゴリラみたいなごっつい顔で、髪はきれいな金髪だ。年齢も50歳くらいに見える。背も大きく、だいたい180センチ位だろうか。
≪メールが届きました。見ますか?≫
突然声が聞こえた。
驚いて辺りを見渡すがここには俺とスクアードさん以外誰もいない。
「どうしたんだい?急にキョロキョロして。・・ああ、そうか。メールが届いたんだね。なら、頭の中に声がしたんだよ。見るかどうするかは念じればいいのさ」
戸惑っているとスクアードさんが教えてくれた。どうしてわかったんだろうか?
「メールを見ればわかるよ」
スクアードさんは苦笑いしている。
そう言えば、こっちに来てから武器の事と金の事で頭が回らなかったが、メールきたの初めてだし、ユウにも会っていない。あいつは元気にやってるんだろうか?
とりあえずメールを見ると念じる。そしたら、指輪から空中に画面が現れた。
******
From:ぺガ
件名:特殊イベント発生
本文:特殊イベント『スクアードの修行』が発生しました。これによりスクアード(人工知能)から様々な事を教わることができます。なお修行中はメールをはじめとしたいっさいの連絡機能が停止されます。
******
マジか!!スクアードさんが人工知能なんて。
「わかったかい?このゲームの中には私と同じような存在が何人かいるんだよ。と言ってもぺガほど強い自我は持ってないけどね」
「そうなんですか!?じゃあ、この特殊イベントって何なんですか?」
「ふふふ、特殊イベントというのは私と同じような存在が関わるものを言うのさ。発動には条件が有ったりするけどね。これ以上詳しくは言えないけど、私の場合の条件は『この街を1度も出ずに私に会いに来る』という物だよ。いちばん発生する確率が低いんだけどね・・・」
悪かったね、1度も街を出ずに!!
っていうかスクアードさんキャラ変わってない?それと、このゲームの人工知能は俺に対してなにか恨みでもあるのか?嫌味みたいの言ってくるし。それとも俺の被害妄想がつよいのか?
「では早速修行を開始するんだけど、まず場所を変えようか」
スクアードさんがそう言うと俺たちの立っている床が開きそのまま動きだした。この家の地下にむかうのか、下に動いている。なんか、映画とかで地下にある隠れ家に移動するシーンのような感じだ。
地下までは案外浅く、すぐに到着した。
到着したそこはただ広い空間だった。物も何もない。
「さて、ここから先に修行場が有るんだけどそこは特殊な空間でね、とりあえずここで修行の説明とソラ君のスキルを確認しておこうと思うんだよ。だからステイタスを表示してくれるかい?」
言われた通りステイタスを表示する。
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名前:ソラ Lev1
HP130/130
魔力5/5
攻撃 10
耐久 19
賢さ 20
精神 16
器用 8
スピード 26
アビリティー:〔刀〕・〔鑑定〕・〔振動〕・〔探知〕・〔万能言語〕
スキル:刀の才Lv1・鑑定Lv3・振動Lv1・探知Lv1・万能言語Lv1・ダッシュLv4
防具:皮製の服 武器:なし
******************
今回は新しいスキル獲得は無いらしい。ただ、鑑定とダッシュのレベルが上がった。今朝の市のおかげだろう。ステイタスに変化も無い。
「これは・・・。有る意味すごいな・・・」
スクアードさんが絶句に近い感じになっている。
「気を取り直して。まず私がソラ君に何を教えるかについて話すよ。突然だけど、ソラ君はマンガは好きかい?」
「好きですけど」
「なら話が早く済みそうだね。私がソラ君に教えるのは、〔気〕だよ」
〔気〕だと!!
「もしかしてあの〔気〕ですか?ドラゴ〇ボールで使っている〔気〕ですか?」
「そうだよ、その〔気〕だよ」
何ですと―!!ヤバいよ上手くやれば、『かめ〇め破』うてちゃうかもよ!!
「ソラ君落ち着こうよ。どうしたんだい?いきなり」
この状態で落ち着けですと!無理だよスクアードさん。
そんなの人間が新幹線より速く走れるくらい無理だよ。ああ、やばいよ興奮して鼻血でてきた。
===しばらくお待ちください。===
「落ち着いたかい?」
スクアードさん改め師匠が聞いてくる。
「はい、すいませんでした。マンガが大好きで憧れてたものですから」
「そう、じゃあ続けるよ。ソラ君に教える〔気〕についてはまた今度説明するとして、今はこれからの修行について話すよ。正直ステータスがここまでひどいと思わなかったから、予定を変更しようと思ってるんだ。ソラ君も知ってると思うけど、ステータスの数値は条件によって成長させる事が出来るから、まず1カ月で徹底的に2つのステータスを上げるよ。上げるのは攻撃と耐久。ソラ君には魔法がないから、この2つが上がらないと正直戦闘は無理だよ。この2つの上げ方はほとんど同じと言っていいと思うよ。攻撃は腕の筋肉を鍛えると上がり、耐久は体に何らかの不可がかかった状態を維持してれば上がるんだ。このステータスが上がり次第〔気〕の訓練に入るよ。たぶん全部で約3カ月になるだろうよ」
「わかりました。さっさとやりましょうよ」
「いい調子だね。皮製の服だとやりずらいだろうから、これに着替えるといいよ」
そう言って青のジャージを渡してきた。
この世界にも有ったんだねジャージ。
早速ジャージに着替えたがこれこそが『修行』という名の地獄の始まりだった。
誤字脱字・矛盾点などあったら教えて下さい。あと、感想もあったら下さい。