刀と鍛冶屋と金欠と
やっと、ゲームの世界に入りました。
プレイヤーがゲームを始める町、名前を『始まりの町』という。
街並みは中世ヨーロッパを思わせるような石畳みの道、レンガや木で造られた建物、軽快な音をたてて走る馬車、活気のある出店や市場、美味しい匂いを漂わせる食堂、きれいな金を鳴らす教会。どれも今までの世界にまったくない珍しい物ばかりの夢のような街。
そんな街は中央の広場を中心に4つの区画に別れている。
そして、その広場に俺は座っていた。
「どうしたものかね・・・」
このゲームが始まりすでに3日目、この3日で俺はぺガから貰った餞別の半分を使い切ってしまっていた。そして、全く今後の行動の目途がたたないのだ。
この3日間何もせずに過ごしていたわけではない。初めこそ浮かれていたが、すぐに行動を開始した。
まず、武器が無いので近くの人に話しかけ武器屋の場所を聞いた。この世界の人たちは日常の会話やこの街についてなど知ってる事を教えてくれる。正直この人たちがつくられた存在なのか?と疑問に思うほどだ。そして教えてもらった武器屋に行くといろいろな武器や防具がおいてあった。
そこの店主に
「あの、刀って置いてますか?」
こう聞くと
「なんだいそりゃ?聞いたことがないね。武器の名前かい?」と言われた。
名称が違うのかと思い特徴を話しても知らない以外答えが返ってこなかった。
仕方が無いので、マニュアルにかいてあった総合センターなる施設にいきこの街の地図をもらい片っ端から街中の武器屋や鍛冶屋に聞いて回ったが答えはどこも初めの武器屋と同じだった。
そして今日生産系のプレイヤーが鍛冶屋を開いたと聞いて行ってみたのだ。
「すいませーん」
「いらっしゃい。何をお求めだい?」
そう言って出てきたのは1人の女の人だった。
その人は身長165センチくらいで、きれいな赤髪を耳にかからないくらいの長さで切っていた。顔は美人というよりかっこいいって感じの顔だ。顔だけみると一見男かなと思ってしまうが、胸が女であると自己主張している。しかも格好がかなりの薄着でちょっと胸元があいている物だから、目がどうしてもそこにいってしまう。まさに魅惑の谷間だ・・・・。
「あ、ソラといいます。実は今日までの2日間ある武器を探してるんですが、この街中の武器屋や鍛冶屋の人が知らないとしか答えないのでプレイヤーの人なら分かるかと思ってきたんです」
「そうかい、とりあえず座りな。私はカナデっていうんだ。よろしく」
「こちらこそ」
カナデさんと握手する。ああ、どうしても目が胸元にいってしまう。ちょっと揺れてるし・・。
「さっきからどこ見てるんだか?それで何を探してるんだい?」
ニヤニヤしながら聞いてくる。この人はあれか、俺の反応を見て楽しんでるのか?
それとも何か、単なる露出ky
「いま変な事考えてないかい?」
相変わらずニヤニヤしてるが目が笑ってない。それに後ろに鬼が見える気がする・・
「イエナニモヘンナコトナドカンガエテマセン」
「そう、ならいいんだ。で、探し物は?」
カナデさんマジでコエ―。怒らせないようにしないと・・
「ちょっと、刀を探してるんです」
俺の言葉に驚き、俺の全身を見てくる。顔は一転して真剣だ。
「防具は皮の服、他に防具はなし・・まさかと思うがアビリティーは〔刀〕かい?」
「ええ、そうですけど」
答えを聞いて、まじかよ。と呟き天を見上げるカナデさん。
「どうかしました?問題でも・・?」
「ああ、問題大ありさ。残念ながら刀はこの世界に存在しない」
とんでもない事を言われた。刀が存在しない!!??じゃあ俺は戦えないのか?
「正確に言うなら存在が確認されていない」
「どういうことですか?」
「まだ誰も刀をこの世界で見ていないってことさ。アビリティーに有る以上存在はすると思われるが、まだ誰も見ていない。このゲームに限らずたいていのゲームは一般にでる前に何度かバグが無いかとテストされる。私もこのゲームのテストに参加した内の1人さ。そのテストにおいて、ただ1つだけ出てこない武器があったのさ」
「じゃあ、そのテスト時に出てこなかったのが刀なんですか?」
「そうだよ。そして私たち生産系のプレイヤーがただ1つ造れない武器なのさ」
「どうして造れないんですか?」
「『レシピ』が分からないからだよ。生産系のスキルがあったら何でも造れるわけではない。武器の場合は、実物を鍛冶の特殊なスキルでもって解析し『レシピ』を作る。そして、鍛冶としてのレベルなどがその武器を造るための条件を満たして初めて造る事が出来るようになるのさ。だから、実物が無いと誰も造ることも出来ないんだよ」
そうカナデさんが説明してくれた。俺でも理解できる説明だった。
「そう落ち込んだ顔するな。なんか分かったりしたら連絡するから。だから登録はしとこう!」
カナデさん、優しいんですね。目から涙でそう・・。
その後、俺はカナデさんと登録を済ませ、店を出て今この場所にやってきた。
「・・・・どうすっかな」
当面の問題はお金だ。この世界でのお金の単位はGという。1G=10円って感じで、鉄・銅・銀・金・白金の5種類の硬貨になってる。餞別の残りのお金は1025G、約1万円。硬貨で言うなら鉄貨が5枚、銅貨が2枚、金貨が1枚だ。
今俺が泊っている宿は泊るだけだから300Gだ。この世界では寝ない限りHPが回復しない。それと食事代で1日100Gくらい飛ぶ。にくい事に腹が減るのだ。1度この空腹状態を放置してみたら、だんだん体がだるくなり、気持ち悪くなった。その後調べてみたら隠れステータスの『スタミナ』という物があり、消費すると空腹になり放置すると大変なことになると書かれていた。しかし、このスタミナも増やすことができると書いてあったがやり方が不明だ。
そう言えば、こっちに来てまだステータスみてないや。
そう思い空中に『レ』を書き、メニューからステータスを開く。
******************
名前:ソラ Lev1
HP130/130
魔力5/5
攻撃 10
耐久 19
賢さ 20
精神 16
器用 8
スピード 26
アビリティー:〔刀〕・〔鑑定〕・〔振動〕・〔探知〕・〔万能言語〕
スキル:刀の才Lv1・鑑定Lv1・振動Lv1・探知Lv1・万能言語Lv1・ダッシュLv3
防具:皮製の服 武器:なし
*******************
うん!?新しいスキルが増えてる。それにスピードが上がってる!!
とりあえず新しいスキルを確認する。
*******************
『ダッシュ』
発動条件:街の中を一定の距離以上走っる
効果:通常より早く動く事ができる
*******************
なるほど、ここまで街の中を走り回ってたからな。となると、ステータスが上がったのもこれでだな。
少しプラス材料が出てきた。けれど、お金にはならない。今のままだと猶予はあと2日。
金を稼ぐには、街の外に出てモンスターを倒すのがプレイヤーとしては一般的だ。何でも、モンスターを倒すとドロップアイテムと魔石が手に入るらしい。ドロップアイテムは毎回じゃないが魔石は必ず手に入りそれを万屋で売ると金が手に入るんだそうだ。だが今の俺には武器が無い。魔法もない。となるともう肉弾戦しかない。
身体強化系のスキルを覚える事にしても、あと2日で戦えるまでにはならないはずだ。そもそもステータスが高くない。当分はステイタスをあげながら、身体強化系スキルを覚えよう。
う~ん、戦闘面はいいとしてもやっぱり金の問題の解決法が思いつかない。
一括千金を狙うしかないか。となると、ギャンブルか。この街にはギャンブルの出来る場所がある。
けど、ダメだ。俺は運が良くない。確実にスッカラカンになる。ギャンブル以外の一括千金となると宝くじを思い浮かべるがこの世界にはない。となると、隠し財宝か埋蔵金でも見つけない限り・・。
うん!?隠し財宝!?
そうだ!!その手があった。確かこの街では毎日開かれるはず。
もうそれに賭けるしかない。確か朝早くだったはずだから今日は早めに寝よう。
上手くやれば金欠から脱出できるはず。
~翌朝~
≪おはようございます。わたくし、ソラは早朝の朝市に来ています。ここ『始まりの町』では毎朝、朝市が開かれているんです。さっそくのぞいてみましょう。≫
ってな感じで2時間前朝市に来た俺は、朝のテレビ番組のレポーター気分で乗り込んだ。
なぜこんな事をしているのか。
これが俺が昨日たてた作戦だからだ。
まず朝市でスキル鑑定を使い掘り出し物を発見し格安の値段で買う。そして買った物を今度は街の骨董屋に持っていき転売する。前に読んだマンガで金欠になっていた主人公がやっていたのを思い出し、実際にやってみたのだ。しかし、現実は甘くなかった。鑑定を使いまっくって片っ端から行ったんだが掘り出し物なんてそうそうない。有ったとしても俺の持っている金では買えないものばかり・・。
この2時間の成果といえば鑑定のスキルのレベルが上がったぐらい。
全く金欠問題は解決してないし、このままいくと掘り出し物購入にまわせるお金が減っていって、完全にアウトになる。
「どうしよう、とりあえず総合センターにいってみるか。最悪あそこお金貸してくれるし・・・」
もうこうなったら、行動あるのみ。そう思い俺は総合センターに向かって歩き始めた。