ゲーム設定その1
『NewFeeling』
それは剣や魔法のある世界
様々な町やダンジョンのある世界
様々な『スキル』や『アビリティー』のある世界
様々なモンスターやアイテムのある世界
そんな夢のようなファンタジー世界
それが『Newfeeling』。ようこそ夢の世界へ
~空の貰った本の出だしより抜粋~
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この間貰ったゲームに関する本と泊るための荷物を持った俺はある3階建のビルの前に来ていた。
そのビルがあるのは俺の住んでる部屋から電車で20分のところにある、ちょっと都会ぽい町の駅の目の前である。
「ここのはずだよな・・・」
ここの町に到着してはや20分、いくら探しても送られてきた住所の建物はここしかない。
もう一度4日まえに送られてきたメールを見直す。もちろん送り主はユウだ。
≪コクーンが設置完了したよ。色々設定しないとイケない事があるから、ゲーム開始の前日のお昼ぐらいに僕の住んでる所に来てよ。住所書いとくから。
もちろんその日は泊って行っていいから泊り用の荷物と渡された本は忘れないでね≫
これが送られてきたメールだ。間違いなく、今、目の前にあるビルの住所が書いてある。
だがおかしい、メールでは住んでる所と書いてある。けど住所に書いてあるのはビルだ。どう間違ってもマンションには見えない。しかもこのビルには1階にコンビニ、2階にセキュリティー会社の事務所が入っている。3階は何も入ってないようだが・・まさかね・・・。
埒があかないので俺はユウに電話することにした。
「もしもし」
≪もしもし。ソラ、遅いじゃないか。もう12時半になるよ?どうかしたの?≫
「悪い。今メールに書かれた場所に来たらビルになっててユウの住んでるところが見つからないんだ」
≪ああ、そういうことか。ちょっとその場で待ってて≫
「うん?わかった」
ユウは何か納得したような感じで電話を切った。
しばらくするとユウがビルから出てきた。
「ごめん、ここに来る人みんな困っちゃうんだ。じゃ、ついて来て」
そう言ってユウはビルの方へ向かっていく。
「まさかと思うが、ビルの3階にすんでるのか?」
「うん、そのまさかだよ。このビルは家のビルだからね。ここに住むことが僕に1人暮らしをさせるための条件なんだよ」
過保護すぎなんだよ、だから親が嫌いなんだ。苦笑いしながらユウは答えてくれた。
ユウが親のことが嫌いな原因が理解できた。俺も同じ立場なら絶対親のこと嫌いになる。
てか、ユウの家ってちょっとどころじゃなく金持ちなんじゃないか?
そんなこと思いながらユウの後をついて3階にあるいていった。
「ここの部屋だよ」
そう言ってユウは3階にあるコクーンが置いてある部屋のドアを開けた。
その部屋は少なくとも30畳はある広い部屋だった。そんな部屋の中には、コクーンやベットなどが全て2つずつ置いてあった。
「ここが今回のために用意したゲーム部屋だよ。ベットや食器、食べ物や飲み物なんかも2人ぶんよういしてある。トイレとシャワーは共同で部屋の奥の左右のドアの奥にあるよ。冷蔵庫も共有だけどなんか欲しい物があったり冷やしたい物があったりしたら勝手に使っていいよ。あと足りなくなったら下のコンビニに買いに行けばいいから」
俺はユウの説明を聞いて唖然とした。いや、やりすぎでしょ。ゲームのための部屋に家具・・etc。
「どうしたの?」
ユウが俺の顔を見ながら聞いてきた。
「いや、ここまでする必要あるか?」
「え、だってゲームを楽しむためなら普通するよ」
いやいや、普通しないよ。何当たり前のように言ってんの、やっぱお金がある人は発想がちがうのか?
「それより本読んだでしょ?」
「ああ、とりあえずは読んだ」
「なら、早く『アバター』を作りなよ。僕はもうすませちゃったから、ちなみにソラのコクーンは下のカーペットの色が水色のほうね」
そう言われてコクーンの方を見てみると確かに下にあるカーペットが違っている。
水色が俺のなら赤の方がユウのなのだろう。
「わかったから、そうせかすなよ」
俺は自分のコクーンの中に入りヘットギアを装着した。そしてすぐに意識を失った。
俺は横たわった状態で目を覚ました。周りを見てみると真っ白な空間だった。
「本に書いてあったとおり本当に真っ白なんだな」
≪ようこそ、『NewFeeling』へ。今からあなたの体全身をスキャンします。仰向けになって寝て下さい≫
おお、これも本に書いてあった通りだ。確か『設定の際は音声が手助けしてくれます』とか書いてあった。なので声に従い仰向けに寝転がる。
≪では、はじめます。≫
その声の後体の周りが光り始めた。時間的には10秒ほどだろうか、体の周りから光が消えた。
≪スキャンに成功しました。今データを読み込み中です。その間にいくつかの設定をします。目の前に電子端末が現れますのでそこに情報を入録してください≫
また声の後に電子端末があらわれた。端末はSFとかで出てきそうな表示画面と入力画面が空中に浮いているものだった。
そこに俺は必要事項を入力していく。
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本名(年齢):黒木空(20歳)
アバターの名前:ソラ
身長/体重:166センチ/63キロ
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入力が終わったから最後に決定のボタンをおす。
≪データの読み込みにもうしばらくかかります。なので完了までの間にこの後の設定に関する説明をします。この後読み込まれたアバターの外見を変更することができる設定を行ってもらいます。ただし、外見を変更しすぎると動きなどに悪影響が出るのでお気おつけください。外見が決まったのち『ステイタス』と『アビリティー』の設定を行ってもらいます。この2つは1度決定すると変更がきかないので注意してください。では、もうしばらくお待ちください≫
とりあえずもうしばらく待たないと何もできないらしい。
確かユウはアバターの設定はもうやったとしか言わなかった。ってことは『ステイタス』や『アビリティー』の設定はしていないんだろう。とりあえず俺もアバターの設定だけして1度コクーンからでよう。
≪お待たせしました。これよりアバターの外見の設定を開始します。先ほどの端末にて出来ますので行ってください。≫
声が教えてくれた。なのでさっそくさっきの端末の所に行く。
端末の表示画面を見ると鏡にうつした様に自分そっくりな顔がうつっていた。
「さて、どうするか。」
まず身長と体重だ。正直もう少し背が高く痩せてる外見がいい。ただ、いじりすぎて動きに支障があるのは避けたい。
「とりあえず身長はそのままで体重だけ3キロおとそう」
入力したら少し痩せた自分ができた。それは当たり前か・・
「次に髪型と髪の色だな」
今は黒髪で長さは短くも長くもない。
「長さはスポーツ刈りよりちょっと長いくらいのツンツンした感じにして、色は黒めの茶色にしよう」
後の体の部分の変更はいいや。面倒だし。そう言えばここにきても俺メガネかけたまんまだな。
何とかできないかな、今の外見変更では無理そうだけど・・・。
「まあいいや。出来たから完了ボタンをおせばいいだけか」
ボタンをおす。
≪入力を読み取ります。このまま続けますか?それともいったん止めますか?≫
俺は止めるを選択した。
≪わかりました。お疲れさまでした。では目をつぶって『止める』と念じて下さい、そうすればもどれます。また、次回からゲームを始めたりするときは目をつぶり『始める』と念じて下さい。そうすれば今回のように気を失わずに開始できます≫
声の通りに目をつっぶて念じてみる。
そして目を開けるとコクーンの中に戻ってきていた。
戻ってきた俺はコクーンから出て時計を見る。時計は午後4時となっていた。
入ったのが午後1時くらいだから3時間くらい入っていたことになる。
のどが渇いたから冷蔵庫の中を何かないかと探す。こうやってみると、さっきはユウに文句を言ったが
なかなか快適だ。
水を見つけ飲んでいるとユウが部屋に入ってきた。
「おかえり、設定やってきたんでしょ?」
「ああ、とりあえずアバターだけ作ったよ。けど予想以上に時間がかかったかな」
「え、3時間しかやってないんじゃ早いよ。ぼくなんて10時間かかったのに」
ユウの言葉に水を噴き出しそうになる。10時間だと!?
男の俺が言うのもなんだがユウは顔のできがいい。いわゆるイケメンだ。身長もあるし体も細くなく太くなくと俺と正反対の外見だ。内面は自分の目的のためならどんな事でもやる困ったやつだが・・。
「そう言えば今までどこか行ってたのか?」
「うん。今から夕飯を作ろうと思ってね」
ユウは両手に持ってる袋を見せながらこたえた。
「ふーん。で何作るの?」
「カップラーメン」
「はぁ!?」
「だってめんどくさくないじゃん!もちろんソラの分もあるよ」
ユウが袋からカップラーメンを取り出しながら答える。
「ちょっといくらなんでも早すぎない?」
そうまだ午後4時だ。カップラーメンはどう頑張ったって5分でできる。夕飯には早すぎる。
俺の質問にユウはお得意の分かってないなぁという表情を浮かばせて説明してくれた。
「だって、僕もユウも『ステータス』と『アビリティー』の設定が残ってるんだよ。アバター作るのにだってソラでさえ3時間かかったのに、それ以上に悩む『アビリティー』の設定をするんだよ。早めにご飯食べて設定に多く時間を割きたいじゃん」
確かにユウの言う通りかもしれない。ほとんど悩まず決めたアバターの設定でさえ3時間かかった。悩んだらどれだけ時間がかかるかわからない。そう考えるとユウの言ってることは正しい。準備不足でゲームスタートは避けたい。
「確かにユウの言うとおりだな。じゃ俺も飯食おう。」
こうして俺たちは飯を食い始めた。そしてそろって『アビリティー』の設定にとりくみだした。
次で設定が完了します。