第2話【赤澤 瞳】 東京に出る
良くいく行く、絶対に東京に行く!
東京!行ったことが無い、全国大会でも、無い
東京、あこがれる!東京に行きます。
おはよう、瞳
兄である、今年4月から就職が決まっており、家から出る事になっていた。
兄は文武両道であり、何をやっても1番である。
瞳の両親は、二人とも飛行機のお仕事、パイロットとCAである。
兄も、飛行機関係の仕事らしく、管制塔がどうのこうので、社宅に入るらしい。
詳しい事はよくわからいのである。
問題は、兄でも、両親でもなく、わたしである。
中学校3年、全国バイオリンコンクールで、最優秀賞、吹奏楽部も優勝
成績は常にTOP,1位である。
しかし
評点が43
そう、体育だけが、成績3であり、他がALL5
私は、運動が大の苦手であった。
本来であれば、成績2であっても、おかしくないと、自負している。
進路指導の先生の、配慮であろうか、上期も、下期も
3年間 体育3 にとどめて置いてくれていた。
進路の話になり、岡山の吹奏楽部の有名校、桐蔭の吹奏楽部の有名校
どちらを好きに選んで良いと、太鼓判。
瞳は、ねー、先生、東京はある?わたし、東京に行きたいの
そうね、東京だと、和井田学園があるわね、コンクールで金賞も過去何度も取っている
昔は全寮制の学校だったけど
今は、吹奏楽部、女子バスケットボール部、野球部のみが寮。
瞳さんの成績なら、どこも特待で進学できるわよ。
東京に行って、花を咲かせてきなさい。
家庭の事情も話てあり、家に一人になる
和井田学園の寮生活を決めた。
入寮説明会、前日に博多を出て、母がお休みを取ってくれたのは
ありがたかった。
殆ど、父も母も家には帰ってこない。
兄が、炊事洗濯全般をやってくれていた。
その兄も、4月から社会人で、社宅に入る。
自慢であるが、わたしは、料理はおろか、洗濯すらしたことがない。
つまり、兄が居なければ、何もできない。掃除ですら、兄任せであった。
入寮説明会、ここが和井田学園。高等学校を卒業すると、和井田大学に進学が出来る。
説明でありがたかったのは、朝昼晩、寮で食事が取れる事。
洗濯は和井田がやってくれる。
さらには、勉強に特化した、個別ルームが寮にある。
入寮説明会で、少し話題にあがったのが野球部であった。
野球部の特待生が1名。それ以外居ないのである。
その特待生は、中等部で評点45 全てALL5であり常に学年1位の文武両道であると
話題になっていた。
わたしは、その子に非常に興味があった。
わたしは、自分より勉強が出来ない人に興味が無いのである。
中学校もそうであった。小学校もそうであった。私に勝る人は兄くらいでは無いのか
中学を卒業し、入寮日に一人で、和井田学園に入った。
寮に入ると、とにかく、うるさい、うるさい、騒がしい
トレーニングルームや、食堂等、あっちこっちで、駆け回っているのである。
わたしは、え?勉強しないの?
吹奏楽部の説明をしてくれた、先輩と会い、話を聞くと
吹奏楽部は部活の無い時は、寮の個別ルームで勉強に励んでいる
あそこで、騒いでいるのは女子バスケットボール部である。
吹奏楽部は、女子バスケットボール部が赤点をとらないように
勉強も指導する等、教えられた。
なんとなく、理解できる光景であった。
寮から外に出ると、目の前に、噂の彼がいる
唯一の野球部。文武両道の優等生。
わたしは、大きく手を振り、気が付くかな?気が付くかな?
その男の子は、何故か走ってきた。足が速かった。
え、どうしよう、何といえば良いのだろう
考えるより、先に体が動いてしまい、
突然、男の子の手を両手で握り
よろしくね!
わたしは、すごく、ドキドキしていた。
こんな気持ちは初めてであった。男の子の手に触れたのも、初めてであったが
体が動いてしまったのである、直ぐに寮に戻り、
なに、このドキドキしている感覚。え、どうしたの、私
これが、赤澤 瞳 と 増田 選 との出会いであり
この二人が、近い未来、前代未聞の大災害を未然防ぐきっかけの出会いであるとは、
そして、運命とは
赤澤 瞳は知る余地もない。