第1話 【増田 選】家出、高等部、運命の出会い
え?なんなの、この子?え?いきなり、手握る、えええ?
せんさん
「おはようございますって、なんで、ねーちゃん達素っ裸なんだよ、服着てよ」
姉
「あら、せん、おはよう、そこの、髪留めとってもらえる」
せんさん
「人の話を、聞け、これね、これ」
姉(わざと振り向きながら)
「せん、ありがとう」
せんさん
「こっち向くなって」
姉(せん、かわいい。)
小学校の時、塾、ピアノ、ベース、水泳、そして学童野球を続けていた。
のだが、歳の離れた3人の姉が、
いつも、すっぱだかのような状態、下着も付けずに、家じゅうを歩いている。
中学1年の時には、26歳、24歳、22歳と、大人であった。既に社会に出ている。
両親は大学の教授という事もあり、家に居たり、いなかったりである。
1番上の姉が家事全般をこなしていた。
この3人、言うまでもなく、異常なのである。自由人そのものである。
少なくとも、僕が知りうる家族像では無い。
三人の姉は仲が良く、一緒に出掛けたり、リビングでも騒いでいた。
着ている意味があるか、無いかで、お酒片手にお祭り騒ぎの日々。
僕は、常に部屋に閉じこもり、鍵をかけて、勉強に励む。
和井田の中学校に進み、猶更勉強に熱が入った。
部活動は軽音楽、野球はやらなかった。
それは学童野球の試合の時である、
なぜか3人の姉は、チアガールの格好で応援に着て
もう、僕はその場から離れたい位で、気になって、気になって。
何かやらかすのではないかと。
試合になればもちろん、集中し、
投手、またはセカンドとして、4番であった。
試合に勝つと、姉らが飛び込んできて、
人一倍、僕を、かわいがってくれるのは、良いのであるが
人の目というものがあるだろう。
チームメイトには、せんはいいよな、美人のおねーちゃんがいて、羨ましい
そういわれ続けていた(人の気もしらないで、どれだけ家で苦労しているのか)
それが1つのトラウマであり、せんは、中学校では野球から離れていた。
シニアからも声がかかって居た。
シニア野球で姉達の破天荒な振舞を披露する事は、間違いないからである。
軟式野球も考えたが、大会となれば、外に出る。
そういう経緯があり、軽音部に入ったのであった。
そして、卒業を迎えると、和井田高等部に進学になるのだが
和井田のホームページを見ると、
吹奏楽部、女子バスケットボール部、野球部は寮生活と書いてある。
寮生活!これだ、ここに逃げる!
これで変われる。勉強に没頭できる!
進路指導の先生に話してみると、
和井田野球部の特待制度の話があり、学校間で合意
中学3年秋頃になると、姉達も、彼氏であろうか、婚約者なのか、家にお兄さん?達が
それぞれの姉の元に来るようになり、一刻も早く家から出たくなっていた。
家から出る、絶対に出る。これが第一条件。
迷いなく、和井田学園、野球部特待の道を選んだ。
しかし、中学校で実績のない、僕が何故和井田学園の特待で入寮できるのかは、
和井田学園、野球部、入寮、説明会を聞くまでは知らなかったのである。
そして、入寮説明会を迎え
どこかおかしい。僕一人しか居ないのある。
特待生だからであろうか?。
もう1つおかしなところがあった。、監督が居ないのである。
キャプテンが寮の説明をしているので、メモを取り、和井田の野球部の寮は凄い。
洗濯、料理等全て和井田学園がやってくれる。
これはありがたい。
最後にキャプテンから、お話があり
和井田学園の監督は、高野連から通達あり、永久に追放されたと
それはキャプテンの代が、中学生の時に過剰な接触があり
それ以降、監督が居ない。
仮として、近いうちに廃部になる
サッカー部の顧問が、監督を代行しているとのこと。
僕にとっては、勉強が出来る環境さえ整えば、構わないので、
あまり気にはしなかった。
野球をもう1度やっても良いと思っていたのは嘘ではない。
ただ、今後この野球部はどうなっていくのだろう
廃部になって、家に戻る事だけは、絶対にしたくない。
中学校を卒業し、入寮日に和井田学園に足を運んだ。
荷物を整理し、先輩に挨拶をと、部屋を回ったが
誰も、部屋に居ない。練習が開始しているのかなと、思い下におりると
なんと、それぞれの個別ルームで勉強をしている
これが、和井田なのだ。嬉しい、勉強が出来る。
寮をうろうろしていると、キャプテンが声をかけてくれた
「増田君、うちの野球部は週に1時間だけ、グラウンドが使える」
「ここには野球グラウンドが無い。サッカー場もだ。」
「俺たちは、和井田大学に進学し、そこで野球をやる」
「日々、勉強に励む、ただそれだけの事」
せんさん(これは、ラッキーだ、思う存分、勉強ができる)
「キャプテン、ありがとうございます、先輩達に挨拶周りに行きたいのですが」
キャプテン
「しなくていいよ、上下関係とか無いから、和井田は」
「皆和井田の仲間、学友だよ、だから気にしないで」
「増田君も、そこの部屋を使って、勉強したらどうだね?」
せんさん
「キャプテン、ありがとうございます、少し、校舎の周りを散歩してきて良いですか」
キャプテン
「もちろんだ、好きにしたまえ」
せんさん
「ありがとうございます」
寮から出て、校舎の周りを探索することにした、あれが女子寮か。
すると、女子寮から一人の女の子が出てきて、手を振っている
せんさん(僕?僕に手を振っているの?なんだろう、手伝いかな?)
せんが、走って行くと
いきなり、女の子は
僕の手を両手で握り、
「よろしくね!」
それだけ言って、寮にもどっていったのであった
これが、赤澤 瞳との最初の出会いであった。
この時、瞳さんが、後の運命の人になるとは、夢にも思わなかったのである。