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6話

「海で女の子を拾った? ナンパしたって意味?」


「いえ、文字通り海の上を漂っていたんです、仰向けで。だぶん、どこかから流されてきたんだと思います」


「どこからってどこから?」


「さあ、それは分からないですけど」


「それで?」


「サーフボードに乗せて救助して救急車を呼びました」


「素晴らしい活躍だね。しかしそれはちょっとした事件だ、漫画やアニメならトラブルに巻き込まれる系のやつだろう」


 先輩はくすりと笑って視線を水槽に戻した。餌を食べ終えたナマちゃんは土管の中に隠れてしまっている。


「その子、姉の病院に運ばれて意識を取り戻したんですけど、どうやら外国人みたいで日本語が通じなくて」


「ふむ、きっとその子は宇宙人だ」


「さっきからテキトーなことばっか言わないでください」


「テキトー? 私はいたって真面目だ。その子は世界を侵略するために送り込まれたエージェントに違いない、かぐや姫みたいにね」


 いたって真面目と言っているわりには、彼女の表情は実に愉快そうだ。


「いつから竹取物語はそんなハリウッド映画みたいなストーリーになったんですか……」


「私の解釈だと竹取物語は宇宙人が地球を侵略しようとする物語だよ。時の権力者たちを骨抜きにされ、世界は彼女の思いのままだ。さて、私は余震の兆候がないか外へ調査に出るけど、ハルくんはどうする?」


「お付き合いさせていただきます」


「そうか、カップル成立だな」


「そういう意味ではないんですが」


「わかっているよ。不真面目を装っているけど芯の部分では常識的で礼儀正しいキミが私は好きだよ」


 くすりと微笑んだ彼女は流し目をよこしてきた。


 もちろん本心ではないのだろうけど、はっきり好きと言われると実に面映ゆいものがある。不真面目になりきれない中途半端野郎だということも見抜かれている。ホントに食えない女性(ひと)だ……。


「からかわないでくださいよ」


「私のことは嫌いか?」


「好きか嫌いかでいえば、す……好きですけど」


「なら、やはり相思相愛じゃないか」


 くつくつと先輩は笑いながら、棚から部の備品であるデジタルカメラを手に取った。


「部長の好きは異性としてではなく、ホモサピエンスとしてですよね」


「そうだよ、それでも相思相愛には変わらないだろ?」


「もういいです、行きましょう」と両手を上げたオレはお手上げのポーズを取る。


「ああ、行こう。今日は江ノ島方面だ。片瀬江ノ島にはラブホテルもあるからな」


「ちょいちょい下ネタぶっこむの止めた方がいいですよ……。残念美人に磨きが掛かりますから」



 自然科学部の調査というのは、空の写真を撮ったり猫や鳥などの写真を撮ったりして街を練り歩くことだ。他の生徒たちからすれば俺たちの活動はただ散歩しているように見えるだろう。最初はクラスメイトの視線が気になったけど、今はもう慣れた。というよりも、羽生先輩と一緒にいると他人の目を気にしていることが馬鹿らしくなってくるのだ。


 なによりこの調査は散歩でもデートでも暇つぶしでもなく、明確な理由があり目的がある。


 彼女は自然現象の中でも特に地震にこだわりがあって、自然現象や野生動物の行動から地震を予知することができないか様々な視点から考察し、研究している。将来そっち方面の仕事に付きたいと彼女はオレが入部して間もない頃に語っていた。


 そんな彼女のことをオレは羨ましく思う。将来の目標があってなりたい職業がある。それだけでその人が眩しく見えてしまう。

 オレには将来の夢や目標がない。学校に通っている理由は、それが普通でみんなが通っているから、それだけなのだ。


「ハルくん、ハザードとディザスターの違いって知っている?」


 デジタルカメラに保存されたデータを確認しながら彼女は言った。


「さあ……なんでしょう、どっちも災害って感じですけど」


「そうだね、どちらも似たような意味で使われる。しかしハザードは事象そのものであって、ディザスターは結果的に人間社会に被害をもたらした災害のことなんだ。つまり、人が住んでいない場所で起こった地震や火山噴火はディザスターに該当しない」


「なるほど、ひとつ勉強になりました。ちなみにこれってテストに出たりします?」


「いや、テストに出る可能性は極めて低い。一年以内に相模トラフを震源とする地震が発生するくらいの確立だ」


 その例えだと確率がどれぐらいなのかさっぱり分からないが、俺は納得するフリをすることにした。


 それから、先輩の指示で俺は空や海やトンビの写真を撮って部活は終了となり、現地解散となって先輩と別れた俺は、病院にいる彼女のことが気になったので様子を見に行くことにした。




 こんにちは、作者です。

 6話まで読んでいただき感謝です! ブクマは未だ0ですが、このまま進めたいと思います。

 話は変わりますが、この作品は恋愛ジャンルになっていますが、どちらかといえばSFに近いかもしれません。

 しかし、大ジャンルをSFにすると、VRとかパニックとかしかなくて該当するものがないので恋愛となっております。

 恋愛に振り切りたい気持ちもありますが、恋愛ものって書くの難しいですね……。

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