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5話 買われた少女

 そんな他愛もない会話をして30分ほど経った時、クロバラ先輩とメイさんが酒場に戻ってくる。若干メイさんの顔が赤いのはシャワーの効果だと思おう。


 ひと息ついた俺たちはメイさんに事情聴取を始める。メイさんはまるで意識が朦朧としているような喋り方で話してくれた。


 どうやら彼女はルナック出身の孤児で錆人が多く集まる路地裏で生活していたらしい。

 ただ本人は錆人の活動に一切関与せず低い賃金のバイトで生きていたようだ。


 そんな彼女はある日あの錆人たちに買われた。実際、メイさん自身に値段がついたわけではないが衣食住の保証という契約で慰めなどに使われていた……というのがこれまでの人生と話した。


 けれどその中には俺たちの役に立つ情報はなく、単純にメイさんの心の傷を抉るようなことをしてしまっただけで申し訳なくなってくる。


「ごめんなさい。あまり、良い話ではなくて…」

「別に良いも悪いも期待してないわ。私たちは事実さえ知れれば満足なのよ」

「そうだな!お嬢さん君は胸を張るといい。ずっと耐えて生き抜いたからこそお嬢さんはこの安全まで辿り着けたんだ!」


 俺もヤコウ店長の言葉に頷く。


 これからメイさんがどのような人生になるかはわからないけどリメンバーに保護された時点で暗闇は抜け出せたはずだ。


 彼女が望むのであればヤコウ店長から話を通してもらって国家から支援を受けることも出来るだろう。


「ヤコウ店長。これからどうしますか?」

「少し考えさせてくれ。とりあえずクロバラとヨザクラは次の指示があるまで待機だ」

「了解です」

「それじゃあ私は姉さんの様子でも見てこようかしら。どうせ今日も部屋から出なかったんだろうし」

「ガハハッ!ゾンビの異名に相応しい引きこもりっぷりだ!ああ、クロバラ。ついでに弁当も持っていってやってくれ」

「ええ。……だいぶオイリーな香りがするんだけど」

「今日はヤコウ特製揚げ物パーリナイ弁当だ!」

「姉さんが胃もたれしないことを願うわ」


 クロバラ先輩はお弁当を受け取ると質量を測るように軽く上下する。

 表情からして思った以上に量があるらしい。


 そしてそのお弁当にはヤコウ店長からの指示が書かれたメモも入っているはずだ。

 きっとゾンビ先輩に火薬が入った球の調査を頼むのだろう。


「メイ、休むのであれば私の部屋を使ってちょうだい。変に漁らなければ危ない物は出てこないから安心して」

「は、はい。ありがとうございますクロバラさん」

「いいえ。そしてヨザクラ貴方は反省文よ。書いたら見せて」

「……はい」


 今日は説教の趣向を変えてきたようだ。それでも憂鬱になってしまう。

 姉がいる地下へと降りていったクロバラ先輩の姿が消えるとドッと疲れが襲ってきた。


「ヨザクラくん大丈夫?」

「大丈夫です。これも先輩からの指導なので」

「ガハハッ!クロバラは世間一般でいう素晴らしい上司タイプだぞ!大船に乗ったつもりで怒られるといい!」

「そんなテンション上げながら言われても…」


 俺は額に手を当てて目を瞑る。今日の睡眠時間は短そうだ。


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