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18話 食い違い

 メイさんはあの錆人グループで1人、国家兵士団に捕まった人がいると教えてくれた。

 しかしメイさんはグループの一員ではなく奴隷として買われた身。

 グループの誰かが安否を気にする言葉を溢していたことからそう思ったらしい。


 それを聞いた俺はあのグループと国家兵士団には少なからず繋がりはあるのではと考えた。

 しかし俺はほぼ0の状態から推測するのは苦手だ。


「おぉ〜終わりが見えてきたね」

「レイ団長」


 頭をクラクラさせながら今日も変わらずにルナック大劇場で検品の仕事をしていると、入り口から声を掛けられる。

 振り返ればそこにはレイ団長が居てキョロキョロと見回しながら近づいてきた。


「新人ちゃんは?もしかして連日の検品で疲れちゃったかい?」

「いえ。単純にメイさんはお休みの日です。うちはブラックではないので」

「ハハハ、良いね。国家兵士団は超ブラックだからリメンバーが羨ましいよ」


 そう。今日はメイさんを連れてこなかった。昨晩色んなことが起こりすぎたため、ヤコウ店長に強制休暇を命じられたのだ。


 それは俺も賛成で、ここ数日は彼女に頼りっぱなしで甘えていた部分があるから気を引き締めるのにはちょうど良い機会だ。

 検品も1人で進められる段階まで来たから俺だけで今日中に終わらせることが出来るだろう。


「そういえば昨日の夜大変だったね」

「はい」

「まさか立て続けに襲われるとは。ヨザクラくんも人気になったのかな?」

「どうでしょうね。でも錆人が武器を持って人を手にかけようとするなんて初めてのことです。今までこういう事例はあったんですか?」

「僕の記憶には無いね。と言っても自己防衛で武器を振るうのはあったけど。しかし彼らは金を稼ぐことを理由にする一般人の悪党。人を殺すことを目的とはしない」

「けれど2回も殺人未遂を起こしました」

「ああ。そうだね」


 俺は最後の商品を検査し終える。長かったが振り返ればあっという間に感じた。


 第二倉庫の遠くまで眺めれば価値もわからない商品がズラリと並べられているのが目に入る。

 検査機械をテーブルに置けば、それと同時に緊張感も和らいだ気がした。


「レイ団長。ルナックで何が起ころうとしているんですか?」

「僕に聞くのかい?」

「天才で国家兵士団長である貴方なら知っている気がします。例え知らなくても意見くらいは聞けるはず」

「褒めて貰っているのなら光栄だ」

「リメンバーを陥れるために錆人は兵士団との通信を乗っ取って俺を殺そうとした。そして帰り道に一般女性と2人で居る所を襲いかかることもした。これは俺に対しての殺意なのか、リメンバーに対してのものなのか考えを聞かせてください」


 俺たちが行う錆人を取り締まる活動は闇取り引きをする錆人に恨まれる。それは当たり前のことだ。

 しかし恨みを持つのは奴らだけではない。


 奴らと取り引きした富豪や搾り取られてしまった元富豪も取り締まる側を恨むのだ。

 理由はそれぞれで薬を買えなくなって拠り所が無くなったからとか、違法武器の購入先である錆人が捕まってその流れで自分もとか色々ある。


 ヤコウ店長から聞いた話だと以前店に嫌がらせをされたことがあったらしい。それをやったのは薬を求めていた富豪だったのだが、今まではそれくらいで済んでいた。


 けれど今回は明らかに殺意がある。今日までの恨みが積もったのか、リメンバーが有名になりすぎたのかはわからない。

 そしてそれが俺だけに当てられているのかも。


 だからこそこの人はどう思っているか聞きたかった。リメンバーの盟友である国家兵士団長のレイから。


「ちょうどいい。兵士団内で流れた噂の調査報告を踏まえて話そう」

「兵士が錆人と繋がっているという噂でしたね」

「残念ながら繋がっていた」

「………なぜ」

「その理由がヨザクラくんが僕に聞きたい答えになるはずさ」


 まさか本当に錆人と手を組んでいたなんて。噂の段階でクロバラ先輩も言っていたが裏切られた気分だ。

 俺たちは組織は違えど仲間だと思っていたのに。


 腹の底から怒りが湧いてきて拳を握りしめる。


「しかしまずは謝ろう。部下が共通の敵と手を組んでしまったこと。そしてその事態を今回やっと調査したこと。国家兵士団長でありながら情けない。すまなかった」

「謝罪よりも俺は事実を聞きたいです」

「そうか」


 レイ団長はスーツの胸ポケットから1枚の紙切れを出す。そしていつもの爽やかな笑顔が嘘のように無表情となり、目からハイライトが消えていた。


「錆人と繋がっていた兵士は8人。5人は全身の大火傷によって意識不明。2人は昨晩拘束されて現在は牢屋の中だ。そして1人はいつも通り兵士として業務を行っていた。僕が尋問したのは最後の1人。問い詰めれば素直に答えてくれたよ」

「ま、待ってください。5人の意識不明者と牢屋行きの2人って」

「全て君を襲った奴らさ。君は彼らを自ら戦いに身を投じる錆人だと思っているけど実際は違う。彼らは国家兵士団の団員だ」

「は?」


 何を言っているんだこの人は。あいつらは錆人ではなく兵士?


「5人は火傷が酷くてね。身元が判明するまで時間が掛かってしまった」

「………え、いや」

「ヨザクラくん?どうしたんだい?」


 メイさんが教えてくれたことと違う。彼女は奴らを錆人だと言っていた。なぜ答えが食い違っている?

 もしかして国家兵士団の団員だと知らずに買われたのだろうか。


 いやそれだと捕まった1人はどうなる?尋問された兵士を指しているのか?

 でもその通りになってしまうとメイさんは……ダメだわからない。


「おーい。ヨザクラくーん」


 頭の中が白く濁っていく。考えるスピードが遅くなる。沢山の情報の処理が追いつかない。


 こういう時クロバラ先輩なら素早く整理して自分の回答を見つけるだろう。ヤコウ店長なら動揺せずに1つ1つを着実に結びつけるだろう。


 けれど俺にはそれが出来ない。考えたくても考えられない。

 その代わり俺の中にあるのは嫌な予感を告げる本能と、つい最近の記憶だった。


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