平成のカフェ店長
昭和が終わった。
1989年1月7日、昭和天皇が崩御された。しばらく自粛ムードで、バラエティ番組や行事が中止されていた。
その後、平成という年号が発表され、新たな時代の幕があけた。
そんな時代に合わせたわけではないが、ある男、平野成一もカフェを開く事にした。飲食店で下積みをし、ようやく開店資金も貯まった。
不安は無い事はない。でも世間はバブルで浮かれムードだし、まあ、何となかなるだろう。
4月1日に消費税も施行されたというのに、見通しが甘いだろうか。
成一の両親は戦争経験者だった。そのせいか、昭和天皇が崩御されても白けていた。メディアの報道のように玉音放送で泣き崩れず事もなく、「ようやく終わった……」とホッとしていたという。はっきりとは口にしていなかったが、両親は昭和天皇については盲目的に信じているわけではなさそうだった。
成一の叔父や叔母も戦争で亡くしていた。食べるものに困り、母は畑から芋を盗んだ事もあったと、泣きながらの告白を聞いた事もあった。そんな母の話を聞くと、みんなには美味しいものをお腹いっぱい食べて欲しいと思い、飲食の道に進んだ。
願わくは昭和のように戦争がありませんように。
成一はそう願う。
このバブルもいつか弾けるだろう。新しい世も決して明るいとは言えないかもしれない。
それでも両親は戦後の焼け野原から、豊かな日本を残してくれた。未来もそうであって欲しい。自分もそんな日本を残したい。みんなにお腹いっぱい美味しいものを食べて欲しい。
そんな願いを込めてカフェの名前はこう決めた。
カフェ・未来。
このカフェも日本も未来も明るいものになりますように。




