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ノイシュヴァーベンラント転移?  作者: 赤目のサン
1章 大ドイツ國異世界転移?
2/5

1-2 怒れるヴァルター

"ヴェディウス・エルリッヒの女神号"は大聖マグノリア帝國の商船である。

この船は大聖マグノリア帝國北西にある国家、フォドー帝國への交易航路を

航行していた。だが、大聖マグノリア帝國の港町ウェステンホーンブルクを

出港した2日後……

「ルメール、どう思う。」

「この船ですか?」

「ああ、夜中の船内だというのに日中かのように明るい。」

「サキュミナ人の船でしょうか?」

「サキュミナ王國は内陸国だぞ?まあ、そんな事よりも…

あやつに見つからんことを祈るばかりだ。」

エルリッヒ号艦橋。

「昨日の嵐が嘘の様なべた凪だな。」

日の出と共に嵐が収まり、静かな海域に入った事が分った。

「コンパスは南を指しているが、明らかに南極から離れている。

ドレーク海峡から太平洋に抜けた時のようだな。」

その時、ジリリンと電話が鳴った。

「どうした。」

「昨夜の件についてヴァルタ―大佐がお呼びです。会議室Bへ来てください。」

「分った、今行く。」

「何ですか?」

「大佐が呼んでるようだ…嫌だな。」

「一刻も早く本国へ報告せねばならん、今すぐズュートゲオルキア(サウスジョージア)

ケープシュタット(ケープタウン)に戻るべきだ!まだ此処が何処が分らんのか!」

エーリッヒ号の会議室で声を荒らげているのは、

第四次ドイツ南極探検隊指揮官、そして南極入植後に設立される、

イシュヴァーベンラン(大ドイツ國領南極)トの指導者、ライナルト・ヴァルターSS大佐である。

ライナルト・ヴァルター親衛隊(SS)大佐。

15歳の時にミュンヘンでヒトラーの演説を目撃し、当時ヒトラーの

警護部隊として活動していた親衛隊に入団。アドルフ・ヒトラー身辺護衛連隊

(後の第一装甲師団「ライプシュタンダルテ・SS・アドルフ・ヒトラー」)に

配属される。だが1934年のレーム事件(長いナイフの夜)の際に重傷を負うが、

その後奇跡的に回復する。その後、親衛隊高官のラインハルト・トリスタン・

オイゲン・ハイドリヒと趣味の飛行機とフェンシングで意気投合し、

ハイドリヒの直属の部下になった。だが、親衛隊弱体化を目的とする中央の

策略により、ヴァルターは南極へ左遷された。

「波が収まったという事は、湾に入ったという事だろう?

艦載機で偵察するべきだ。そうだろう?」

「現在偵察機の準備を行っていま―」

「信用できん、私も行く。」

「え?」

思わず声が漏れる。

「え?とは何だ。…私はこれでも國民社会主義航空軍団(NSFK)の元パイロットだぞ?

あの艦載機…アラド-196は本来2人乗りだろう?」

「はい、ただ―」

「ただはナシだ。装備を借りるぞ、水偵乗りは何処だ?」

「キルヒナー少尉は調理室で芋の皮むきを―」

「何かやらかしたのか?その……。」

「アルノー・キルヒナー少尉。」

「ああ、何でアルノー君は皮むきを?」

ベックは思った。"コイツ何回話を遮れば気が済むんだ?"

「いえ、問題を起こして罰を与えているのではなく、単に暇なので

手伝っているだけです。南極に近づくと、湾に入るまで飛べないので。」

「そうか、ソマリア沖は大変だっただろう。では、偵察に私がついて行くから

予備の装備を貸すように言っておいてくれ。」

「はい…分りました。」

1時間後

「カタパルト射出は初めてだ、楽しみだな。」

「軽くGがかかるのでご注意を。」

「ああ。」

操縦席にはキルヒナーが、

後部観測員席にはやや興奮気味なヴァルターが乗る事に。

そして油圧式カタパルトがアラド-196を射出!

「おおお!これは速い!」

そこには当たり前のことをぬかすヴァルターと、

親衛隊の高官に緊張するキルヒナーが居た。

「最初の操縦は何時だね?」

「18歳の時にミュンヘンの飛行学校で。」

「奇遇だな、私も18の時だ。NSFKが運営するウィーンの飛行訓練所でだ。」

「水上機に乗ったことは?」

「ああ、第二次世界大戦中に試作飛行艇の評価試験に参加したことがある。

何時もリヒャルト・フォークト技師はとてつもない事をするものだ。

六発で二階建ての航空機など…まあそのあと日本がもっと大きな

戦略爆撃機を作りやがったが。」

同じ飛行機乗りだからか結構話が盛り上がる。

「ん?あれは…。」

「街、ですかね?」

海岸沿い飛ぶアラド-196の眼下に中世風の街が現れた。

「写真を撮る、一度通り過ぎてくれ。」

パシャッ

「ガレオン船でしょうか?」

「タイムトリップしたかのようだ。」

パシャッ

「あと何分飛べる?」

「ええっと、…あと1時間51分です。」

「もう少し内陸へ行こう、残量が1時間になったら帰投するぞ。」

海岸沿いではなく内陸を飛び始める。

内陸に進むと、酷い霧が地表にかかっている事に気付く。

「高度を上げろ、これでは霧に飲まれて何も見えなくなるぞ。」

「はい、8000ftまで上がります。

…!前方に航空機が見えます。11時の方向。」

「こっちからは見えんな。」

キルヒナーは機体を少し右に曲げる。

「…ああ、あれか。」

キルヒナーはその航空機が自分より後方に行った後、

機体を左に旋回させた。

その航空機に向って斜め右に飛ぶようにして、

後部座席のヴァルターにも見えるようにしたのだ。

「…あれはブローム・ウント・フォス-722か?」

双眼鏡を覗くヴァルターがそう言った。

BV-722とは、非対称な飛行機や原子力航空機など非常に"ユニーク"な航空機を作る

事で有名なリヒャルト・フォークト技師の設計したオーニソプターである。フォー

クト技師の設計した機体は、時折遠く離れた日本の新聞でも取り上げられることも

あった。だが、目の前の飛行物体は明らかに違った。2人は驚愕する。

「なっ!あれはドラゴンが?!」

「…!嘘でしょう?!信じられません!」

2人が乗るアラド-196の前に、異世界物の定番とも言える"ドラゴン"が現れたのだ。

ブローム・ウント・フォス-722(BV-722)は架空の機体で、オーソニプターとは「羽ばたき飛行機」と言う意味で、天空の城ラピュタに出てくる奴です。BV-722はヘリコプターの羽がトンボみたいになった感じをイメージしてください。史実だと非対称飛行機とか巨大飛行艇を作ったリヒャルト・フォークト技師なら作りそうだと思って小説の中のブローム・ウント・フォス社に協力してもらいました。


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