2. 血で血を洗う青春録
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「来なさい!」と教頭先生は叫び、僕の手を引っ掴んだ。目の前に伸ばされた自分の手は、自分の手の割にやけにほっそりとして見えた。
連れ込まれた先は、椅子と机が並ぶ教室だった。――教室だとわかりはしたが、それは僕が知っている教室とはちがっていた。椅子や机はどれも重々しく、金属と軽そうな木材でできた、僕の知る机とは違っていた。窓は狭く、レンガ造りの壁に空いた穴のようだった。何より、明かりは蝋燭に毛が生えたような大きさのランプだった。
「カーミラ」と教頭先生は鋭い目を僕に向けて言った。
カーミラ? でも、僕の名前は……
「あなたにはカーミラ以外の名前などない」と、教頭先生は僕の考えを読んだかのように言った。「あなたは危険な存在なのです。その危険さをわかっていますか?」
気がつくと、教頭先生は、自分の手をまじまじと眺めていた。さっき、僕の手を引いていた方の手だ。
「吸われている……」と教頭先生は言った。「たしかに、これは……」
「吸われている?」と僕は訊ねた。
「わかっていないのですか?」
「わかってないって、何を……」
「私のこの手に宿っていた魔力は、あなたに吸われてしまった。今それは、あなたの手に宿っている」
「魔力……?」
何を言っているのだろうと思った。それでも、僕は自分の右手を上げて、それを正面にして見た。
するとそこには、これまでには見たこともなかったような炎が宿っていた。
熱くはない。冷たくもない。それでいて、大きな可能性を秘めた炎だった。正体はわからなくても、力を秘めた火だということだけは、すぐに見て取ることができた。
「……生徒とはいえど」と教頭先生は言った。「あなたはやはり危険です。吸血鬼カーミラとして、ここで葬っておくのが正解なようです」
先生はいっとき言葉を切ってからこう言った。「害獣に、死を」
先生の全身から炎が燃え上がった。しかしその火は、僕が触れた方の手からは燃え上がっていなかった。
「この火が、私の魔法」と教頭先生は言った。「たとえあなたがそれを吸ったとしても、片手だけの炎でどうするつもり?」
教頭先生の全身から炎がますます激しく燃えた――「私の炎、名を ABドゥル・フリークス。消えなさい!」
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