プロローグ2
次の日、酒屋が定休日だったのもあり、リベルは教会の神父に頼まれてお使いにでかけた。両脇には付いて行くと言って聞かなかった年下の子どもが二人、並んで歩いている。名前はミアとジョンといった。
市場に着くとすでに多くの買い物客でごった返していた。
リベルは離れないようにとミアの手を繋ぎ、ミアとジョンの手を繋がせた。人の流れに沿いながら目的のものを買い物袋に詰めていく。
残りの品もわずかとなり、緑色にんじんの品定めをしていると、突然ミアがリベルの手を離し、ジョンとともに人混みに消えていった。
より品質の良いものをと真剣になっていたリベルは咄嗟のことに驚くも、にんじんをすぐさま棚に戻し、ミアたちを追いかけた。
ミアたちの進む先を見ると、まるで宝石のような輝きを放つ蝶がいた。きっとあれに釣られていりのだろう。
しかし、進む方向がわかってもリベルとミアたちでは背が違うため、速さに差が出てくる。
通行人の間をスルスルと抜けていくミアたちを追いかけていくと市場の中央広場が見えてきた。広場の真ん中に設置されている噴水の近くで綺麗に舞う光が見えた。ミアたちはすでに広場にいるようだ。
リベルが人混みを掻き分けてようやく広場に出ると、ミアとジョンが噴水を挟んだ向こう側で立ち止まっていた。
リベルは安堵し、噴水を廻りながらミアたちの所に向かうとそこには、大きな鉈を振り上げた男が彼らの前に立っていた。そして次の瞬間、ミアとジョンの首を一太刀で撥ねた。
「キャ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
その光景を目の当たりにした婦人が悲鳴を上げた。それに気づいた通行人たちが次々に騒ぎ出し、市場はパニックに陥った。
二人の頭はリベルの足元まで転がり、リベルを見つめた。首から上を失った身体は切り口から噴水のように血飛沫を上げている。
リベルの頬に一滴の血がついた。リベルはその血を指で拭き取り、紅く染まった指先を見た瞬間、脚が竦みその場に崩れ落ちた。
鉈を持った男は刃先についた血を振り払い、愚痴を零した。
「あ〜あ、やっちまった。ストレスが溜まるとすぐ手が出る」
男は片手で頭を抑えながら首を振った。
「もうめんどくせぇ、この町の子ども全員ぶっ殺すか」
そう言って男は目の前で放心状態となっているリベルを見据えた。すると男は何かに気づいたように攻撃の構えを解いた。
「黒髪に青い瞳……お前、名前は何だ」
男の質問にリベルは沈黙で答える。
「はぁ、無視か。まぁいい、どうせ殺せっていう命令だしな」
男はリベルとの距離を一気につめるとその重厚な鉈を振り上げた。
通行人のほとんどがリベルの首が先の二人の様に飛ばされる姿を脳裏に描いたその時、振り下ろされた男の鉈はフードを深く被った乱入者のサーベルによって弾かれた。
乱入者は素早く男の懐に入り込み、強烈なキックを男の腹にねじ込んだ。
男は直線的に飛んでいき、3階建ての宿屋の屋根に激突した。
リベルは乱入者のキックがおこした気流に驚き、顔を見上げると、そこには昨夜料理を運んだ女性客が立っていた。
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