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第9週目 上級生

ー6月ー


「あ~腹減った。何食うかな」


「さっき、お弁当食べたのに、まだ食べるの?」


 昼休み、海堂と健太は食堂に来ていた。そして、2人が食堂に入ると券売機の近くで何やら揉めている。


「なあ、いいだろ。奢ってくれよ」


 3人組が1人の生徒を囲んでからんでいる。


「1年が3年にからまれてるよ」


「先生呼んだ方がいいんじゃない?」


 周りの生徒もそれを見て怖がっていると、


「邪魔ですよ」


 海堂は3人に近づき注意した。


「ああ?文句あるの⋯!」


 それは入学式の日に会った上級生の3人だった。


「お前はあの時の。ちょうどいいとこで会ったな。この前の礼をしてやる」


 1人の男が今にも飛びついて来そうな雰囲気でいると、


「しまった。今は風紀委員じゃなかった。まずいな。今、殴りかかられたら反撃できないぞ」


 海堂は注意したものの自分が風紀委員じゃないことを思い出し、心の中で呟いた。


「よせ。こいつは確か風紀委員だ。もういいから行こうぜ」


 もう1人の男子生徒がそう言うと2人を連れて食堂遠出て行く。


「海堂くん、危なかったね。風紀委員じゃないの忘れてたでしょ。喧嘩したら校則違反だったよ」


 海堂は運良く難を逃れることができた。


「それより早く何か食べようぜ」


 注文しに行く海堂たち。そして、その後ろ姿を見る人物が1人。


 それから数分後。


「あの野郎、今度会ったらタダじゃ置かないぜ」


「辞めとけよ。相手は風紀委員だぞ。諦めようぜ」


 先ほどの3人が愚痴(ぐち)りながら廊下を歩いている。と、その時、


「先輩方、ちょっといいですか」


 3人を呼び止める生徒がいた。


「何だお前は」


「先輩方に耳寄りな情報を教えに来ました」


「耳寄りな情報だと」


「はい、実は⋯」


 その生徒は内緒話の様にこっそり教えた。


「なるほど、そういうことだったのか」


ー放課後ー


6月になると梅雨入りし、雨の日が多くなる。そうなると外で練習する運動部は筋トレぐらいしかする事が無くなるため、保健室にマッサージを受けに来る生徒が増え忙しくなる。


「海堂が来てくれて、ほんと助かったよ。今までは、男子生徒のケアは俺一人の担当で(さば)き切れなかったからな」


 竜崎が言う。保健委員によるマッサージのケアは基本、同性がおこなうことになっている。


「さて、今日も頑張るか」


 竜崎と海堂は保健室に向かい仕事に取り掛かる。そして1時間後。


「暇だな。もう今日は終わりにするか」


 しかし今日は生徒もほとんど来なかったので早めに帰ることに。

海堂は帰ろうと保健室を出て廊下を歩いていると、昼間の3人が目の前に現れた。


「よう。昼間は、まんまと騙されたぜ。お前、風紀委員じゃないらしいな。てことは、もう手は出せないということだよな」


「ちっ。面倒臭いことになったぜ」


 海堂は3人に囲まれた。


「くらえ」


 殴りかかって来た男子生徒。海堂はかわし、ファイティングポーズをとった。


「何だ、殴ろうってのか?出来るもんならやってみろ」


「くっ」


「オラ」


 また、殴りかかって来た男子生徒。すると、今度は海堂の体が反射的に動き、相手の拳を受け流しながらそのまま相手の力を利用して、投げ飛ばした。それを見て、他の2人も飛びかかって来る。海堂は2人も同じように投げ飛ばす。

 海堂は知らないうちに技を身に付けていたのだ。なぜなら、海堂は中間試験期間中も昼休みは保健室で特訓していたからである。


「手を出したな」


「いいや。先輩が勝手に転んだんですよ」


「生意気な」


 男子生徒は起き上がると、また殴りかかるが、海堂にもう一度投げ飛ばされ腰から落ちてしまう。男子生徒たちは懲りずに何度も挑むが全然攻撃が当たらないうえ、その(たび)投げ飛ばされる。


「はあ、はあ」


 息が上がる3人。すると3人の後ろで、喧嘩を陰から見ている人物がいた。


「何やっているんだ。海堂に手を出させるんだ」


 その男は物陰に隠れながらボソッと言う。


「くそっ。今日は勘弁してやる。次はこうはいかないぞ。覚えておくんだな」


 そう言うと3人は痛めた所を抑えながら逃げて行く。


「体が勝手に⋯」


 海堂は白鳥委員長のようにできたことに驚いた。


 一方、逃げた3人は、


「くそー、誰だよ、風紀委員じゃないから反撃した来ないって言ったやつは」


「あいつだよ。あの1年の野郎」


「んっ!お前。話しが違うじゃねえか。どうしてくれんだよ」


 そそのかした男を見つけると胸ぐらを掴んだ。その男は何と神崎 政近だった。


「そんなこと言われても」


 神崎はオドオドしていると、ポケットからスマホが落ちた。


「何だ?」


 男子生徒がそれを取ると、


「これは⋯」


 スマホの中には先ほどの喧嘩の風景が記録されていた。


「何だこれは」


「これは、その。海堂の暴力映像を撮って、生徒会に通報しようと思って」


「そんなことしたら、映ってる俺たちも処分されるじゃねえか。お前、俺たちをハメやがったな」


 そう言うと男子生徒は神崎を殴ろうと拳を振り上げる。


「ひいー」


 今まさに、殴ろうとしている時、その腕を後ろから掴む手が。


「⁉︎」


 そこには海堂がいた。


「そういうことだったのかよ」


「お前、まだ居たのか」


「先輩、もうそれぐらいで勘弁してやって下さいよ」


 そう言うと海堂は掴んだ腕を捻る。


「痛っ。わ、わかったよ」


「おい、行くぞ」


 退散して行く3人。


「神崎⋯。お前にはガッカリだよ。こんなセコイ事しないで正々堂々正面からかかって来いよ。お前なら、こんな事しなくてもやっていけると思うぜ」


「海堂⋯」


 海堂はそう言うと帰って行く。

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