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第5週目 ゴールデンウィーク

ー5月ー


 入学してから1ヶ月経ち、学校にも慣れてきた海堂。風紀委員会の激務をなんとかこなしてきたなか、ゴールデンウィークは日頃の疲れを取るため家でゆっくりしようと思っていたが、


「何で俺はここにいるんだろうか」


 海堂が今居るところは道場だった。


「セイ!セイ!」


 掛け声と共に正拳突きの素振りをしている人物が。


「海堂、声が出てないぞ」


 それは風紀委員長の久瀬(くぜ)だった。ここは久瀬の家の道場である。久瀬の家は空手道場を開いており、今日は風紀委員の3人で空手の稽古に来ていた。


 時は(さかのぼ)り、3日前の放課後、風紀委員会室で、


「海堂、今度のゴールデンウィークの連休だが、ウチに来い」


「久瀬先輩の家にですか?」


「そうだ。ウチは空手道場をやっているんだが、今度の休みにお前を(きた)えてやろうと思ってな。

風紀委員をやる上でどうしても強さが必要な場面が出てくるだろう。そんな時、取り締まる側として負けることは許されないからな」


「はあ⋯」


 と言うことで、海堂は久瀬の家の道場に来た。


(ピンポーン)


 海堂が呼び鈴を鳴らすと、玄関の戸が開く。そこから出てきたのは、風紀副委員長の綾川(あやかわ)リサだった。


「⁉︎。リサ先輩が何で久瀬先輩の家に?」


「来たか海堂。さあ、入ってくれ」


 そこに久瀬も現れ、家の中に招いてくれると、道場へと向かう。


「これに着替えろ」


 久瀬は海堂に道着を渡す。海堂が道着に着替えると、道場には久瀬とリサも道着を着て待ったいた。


「よし!では稽古を始める。まずは、突き千本だ」


 3人は正拳突きをする。


「腰を入れて!」


 指導する久瀬。


 そして現在に(いた)る。


「何で俺はここにいるんだろうか。本当は家でゆっくりしているはずだったのに」


 海堂は心の中でそう思うのであった。


「997、998、999、1000。次は前蹴り千本だ」


「ひえ~」


 休む間もなく次の動作が始まり、それが5セット続いた。


「997、998、999、1000⋯。ふう。よし、少し休憩だ」


 久瀬がそう言うと、疲れきった海堂は、腰を下ろす。リサも座り水分補給をする。しかし、久瀬は余裕の様子で、まだ体を動かしている。


「リサ先輩、ひとつ聞いてもいいですか?」


「なんだ?」


 海堂はリサに質問した。


「リサ先輩と久瀬先輩は一体どう言う関係ですか?ただの委員長と副委員長の関係じゃない様な。もしかして付き合ってるとか」


「ブッ」


 飲んでいた水を思わずふいてしまったリサ。


「バ、バカ言ってんじゃないよ。先輩とは家も近所で、昔から一緒に遊んだり、ここで空手の稽古したり、ただの幼馴染みだよ。そう⋯ただの幼馴染み⋯」


 リサは昔のことを思い出す。


ー10年前ー


「え〜ん」


「ほーら。取ってみろ」


「パス、パス」


 公園で男の子たちが年下の女の子の髪飾りを取り上げ、からかっている。


「返してよ~」


 女の子は、当時6歳のリサ。相手の男の子たちは10歳の上級生。


「え~ん」


「ほら、ほら、こっちだぞ~」


 リサは手を伸ばして取ろうとするが届かない。と、次の瞬間、


「うわっ」


 男の子は転倒した。男の子は見上げるとそこには上級生より小柄な男の子がいた。上級生の男の子は小柄な男の子に蹴られて倒れたのであった。


正輝(まさき)おにいちゃん」


 その男の子は当時7歳の久瀬 正輝だった。


「はい、これ」


 久瀬は取り返した髪飾りをリサに渡す。


「ありがとう」


「よくもやったな」


 上級生は起き上がると久瀬に近づき頭を殴る。


「正輝おにいちゃん」


 殴られた久瀬は上級生を睨み返す。


「なんだ、その目は。生意気なんだよ」


 上級生はもう一度殴ろうとすると、


「うわあああ」


 久瀬は上級生にタックルした。久瀬は上級生を押し倒すと馬乗りになって殴りつける。


「止めろ」


 もう一人の上級生が久瀬を後ろから羽交い締めにして引き離す。


「よし、そのまま抑えとけ」


 久瀬はジタバタするが足が浮いて動けない。徐々に近づいてくる上級生。


「これでもくらえ」


 上級生は殴りかかってくる。久瀬は頭を後ろに動かして、押さえつけている上級生の鼻に後頭部をぶつけた。すると、


「!」


 押さえつけていた上級生は手を離した。そして、殴りかかってきた上級生の拳は久瀬を擦り抜けて仲間の顔を殴ってしまう。


「あっ」


 そして、自由になった久瀬は目の前の上級生の股間を蹴り上げる。


「んん~」


 上級生は股間を押さえて倒れ込む。


「逃げるぞ」


 久瀬はその隙にリサの手を取り走り出す。リサもギュッとてを握り返す。


「⋯パイ。⋯先輩。リサ先輩。どうかしたんですか?」


「⁉︎」


 海堂の声に我に帰るリサ。


「な、何でもない。さあ、稽古の続きを始めるよ」


「?」


 首を(かし)げる海堂。

そして、稽古が再開する。


「よし。今度は組み手だ。リサ、海堂の相手を頼む」


「はい」


「海堂、どこからでもかかってきな」


 構えるリサ。海堂も構えて様子をうかがう。


「こないならこっちからいくよ」


 痺れを切らしたリサが攻撃を仕掛ける。


「うわっ」


 海堂はリサのパンチをなんとかかわし続ける。


「どうした避けるばかりじゃ、稽古にならないよ」


 リサにそう言われると海堂は破れかぶれで拳を出す。しかし、簡単に受け止められた。


「それが全力か?遠慮するな。本気できな」


 海堂は今度は思いっきりパンチした。リサはガードしたが後ろにのけ反り、リサの腕はジンジンと痺れる。海堂の技術は未熟だがパワーは一級品であった。


「やるじゃないか」


 そう言うと2人はお互いにパンチを繰り出す。と、その時、


「それまで!」


 久瀬が2人を止めた。


「海堂、お前のパワーはわかった。今度は俺が相手だ」


 次に久瀬との組み手が始まり、それは、日が暮れるまで続いた。


ー夜の7時ー


「よーし。今日はここまでだ」


 やっと稽古が終わりホッとする海堂。その後、汗を流して着替えると、


「海堂、夕飯用意してあるから食っていけよ」


 久瀬が言うが、


「すいません。今は食欲が無いんで遠慮しておきます。それでは失礼します」


「そうか、わかった。じゃあ、また明日な」


「は、はい」


 海堂は激しい稽古にぐったりして帰って行った。


ー翌日ー


 海堂は今日も朝から道場で稽古をする。そして、その翌日も稽古に明け暮れる。すると、休みが終わる頃には海堂はかなり腕を上げていた。元々、運動能力が高く、飲み込みも速かったため短期間で技術を習得したのだった。

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