表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/19

第10週目 クラス対抗戦

 上級生との揉め事の次の日。保健室では、


「あれ?こうだったかな。いや、なんか違うな」


 海堂は投げ飛ばした感覚を忘れないようにあれからずっとイメージトレーニングをしていた。


「何ブツクサ言ってんだ」


 竜崎が不思議に思って見ている。


「おい、海堂、手を休めるな。次の生徒が来るぞ。聞いてるのか?おい、海堂。海堂⋯」


 竜崎は集中していて聞こえていない海堂の肩を叩いて呼んだ。と、その瞬間。海堂は咄嗟に反応して竜崎のその手を掴むと投げ飛ばした。


「痛ってー。先輩に何するんだ」


「す、すいません。竜崎先輩」


それを見ていた白鳥委員長は、


「どうやら、だいぶ体の仕組みを理解してきたみたいですね。海堂くん、以前あなたは合気道の技を教えて欲しいと言っていましたね。わかりました、教えて差し上げましょう」


「白鳥先輩が直々に。やったな海堂」


「竜崎くんもどうですか?」


「いいんですか?」


「では、今日の作業はお休みして稽古といきましょう」


 そう言うと体育館の中の道場に向かった。道場には海堂、竜崎、委員長の白鳥、副委員長の加護の4人が。


「まずは、実際にお見せしましょう。海堂くん、私を後ろから襲ってみてください」


 白鳥委員長がお手本を見せることになり、海堂が相手をする。


「いつでもどうぞ」


「行きます」


 そう言うと海堂は白鳥の後ろから抱きつく。白鳥はとてもいい匂いがして、海堂はドキッとする。しかし、それは一瞬こと。次の瞬間には海堂は、宙を舞っていた。


「さあ、もう一度」


 海堂は、また襲い掛かったが、再び投げられる。それが数十回続いていくと、


「もう限界です」


 海堂は投げられっぱなしで身も心もボロボロになってしまった。


「体で覚えるのが一番いいんですけど、しょうがないですね」


 こうして今日は、これで終わったが、白鳥委員長の特訓は久瀬の空手稽古と同じくらいキツかった。


ー1週間後ー


「今週はクラス対抗戦がある。という訳で出場する15名を決める必要があるのだが、スポーツテストの上位15人で行こうと思う。どうだ?」


 ホームルームで担任の松平(まつだいら)が言う。


 クラス対抗戦とは、1組から5組の代表同士での(きそ)い合いのことで、競技は毎回違う。そして、その競い合いは1週間かけて行われる。今回は棒倒しと決まったので、クラスの中でスポーツテストの記録が良かった生徒を上から15人選んだ。しかし、1組は勉強が出来ても運動が苦手な生徒も多く、クラス中で上位でも全体の中ではそれ程でもない。


「1組の底力を見せてやれ」


「はい!」


 生徒たちも力が入っている。なぜなら、この対抗戦でも勝つとポイントが与えられるからである。1勝するごとにクラス全員に1000ポイント、優勝すれば更に1000ポイント貰える。


 初戦の相手は2組と決まり、勝負は体育の時間に行われる。棒倒しのルールとして、先に相手の棒を倒した方の勝ちという簡単なもの。基本的な戦術としては、棒を支えるチーム、棒を守るチーム、攻撃するチームに分かれて戦うだが、1組は海堂以外、運動能力が高くないため棒を支えるチームを最小限にし、攻撃人数を多くする作戦に。海堂はというと、1人で棒を守る役をすることになった。


「では、これより1組対2組の対戦を始める」


 そして、審判の笛の合図で一斉に動き出す。2組は攻撃と守備を半々にするオーソドックスな戦法。


「うおー」


 お互いの攻撃チームが相手の棒に突進する中、海堂は棒の前に出て相手を迎え撃つことに。そして、相手の1人をまず初めに合気道の技で投げ飛ばす。海堂は稽古の成果が出ているようで、向かってくる相手を次々に投げ飛ばしている。


「がんばれー」


 健太たちクラスメイトも応援する。


「うわー」


 2組の生徒は海堂に阻まれて棒に近づけない。そして、その間に1組の攻撃チームは少し時間がかかったが、ようやく棒を倒すことができた。


「それまで。この勝負、1組の勝ち」


 こうして初戦は1組の勝ちで終わり、まずは1000ポイント獲得した。


ー次の日ー


 今日は5組との対戦の日。


「よっしゃー。気合入れていくぞー」


「おう」


 5組は凄い気合いの入れ様で、そのメンバーを見てみると体格に良い生徒が多かった。なぜなら、5組はスポーツ推薦で入ってきた生徒が大半を占めていたからである。そして、その中心には海堂と同じく生徒会に入った、体育委員の火野(ひの) 敦士(あつし)がいた。


 そして開始の笛の音が鳴り、戦いが始まった。1組は前回と同じ9・1・5の攻撃的戦法で戦い、一方5組も10・2・3の超攻撃的戦法をとってきた。


「倒せー」


 迫り来る敵チーム、それを次々と投げ飛ばしていく海堂。相手は10人いるが、それを物ともしない動きだ。と、そこに、火野が海堂の前にやって来た。


「5組は優勝を狙っているんでね、悪いが勝たせてもらうぜ」


 そう言うと海堂に向かって行く。がしかし、海堂に投げ飛ばされ後ろには行けない。一方5組の棒はというと、1組の方が人数が多いにも関わらず全然棒まで辿り着けていなかった。場面は火野に戻り、


「ここは俺に任せて先に行け」


「そうはいかすか」


 海堂は攻めてくる相手を全員跳ね返す。


「海堂、お前の相手は俺だ」


 火野は何度も向かって行くが投げられる。しかし、何度も食い下がっているうち火野は海堂の体にしがみつくことに成功した。


「今だ!」


「しまった」


 5組の生徒が海堂を抜け、棒へと突進しすると呆気なく棒を倒されてしまった。


(ピー)笛の音


「5組の勝ち」


「やったー」


 5組は1000ポイント獲得した。やはり、海堂だけではこの戦力差は埋めることは出来なかった。

 その後、残りの試合を行い、1組は3勝1敗の2位で、1位は勿論全勝の5組だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ