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追放された魔王の娘の下剋上  作者: ルナねこ族
第三章  ライリー編
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63話  降伏か死か



バン!!と、扉を壊す勢いで部屋に入って来たライリーの父親。


その姿を見て、リリとアンゲリカは警戒態勢に入る。



「……まさか、まさかここを見つけられるとは‥。」



覚め切った声色で、ライリーの父親は言葉を紡ぐ。


誰に伝えるでもなく、まるで自分に言い聞かすかの様に、顔を地面に向けたまま…恐怖すら感じるほど冷静な声色を、シン…と静まりかえった部屋中に響かせる。


(まずい…こののまじゃなんの手掛かりもつかめないまま‥。)



レオンハルト邸の時の様に、ライリーの父親はリリ達の事を殺しにかかってくるだろう。


だが…


(まだゴマちゃんの魂をホムンクルスの中に入れれてない…そんな状態で、ライリーのお父さんに勝つ事なんて…。)



状況は絶望的だ。


まだ学校すら卒業していない子供二人と、錬金術の名家とまで歌われるレスター家現当主…格の違いは歴然としている。


(一体どうすれば‥。)



頼れる相棒(ゴマちゃん)がいない状況下で、如何にして目の前の敵と対立せず逃れられるか…。


依然として警戒態勢を解かず、リリは脳をフル回転させて解決の糸口を探す。


しかし…



「『ヘルアイシクル』」



ライリーの父親…敵は、リリ達に考える暇さえ与えてはくれなかった。


一言だけ言葉を吐くや否や、すぐさまリリ達に危害を加えてくる。


キラキラと煌めきを放っている氷魔法を、無防備なリリ目掛けて放って来たのだ。


(っ…!間に合わない…!)



防御魔法を唱えようにも、この距離じゃ間に合わない。


仮に間に合ったとしても…リリの魔法で、この迫りくる炎を防ぎ切る事ができるかどうか‥。


咄嗟に目を瞑り、次に来る身悶える様な熱さと痛みを覚悟していたが…どれだけ待っても、痛み所か焼ける様な熱さすらこない。


…恐る恐る、リリが目を開けると‥。



「アンゲリカ?!」


「ほう…学生の分際にしては、中々やるじゃないか。」



リリを背に隠す様にして、アンゲリカがライリーの父親の前に立ち向かっていた。


そのアンゲリカの前には、半透明の円形の壁…魔法防御壁が展開されていた。


詠唱無しで防御壁を展開したのか…アンゲリカの呼吸は乱れている。


大方、本来消費する魔力量の倍、魔力を消費してしまったのだろう。



「はぁはぁ‥。」


「私の攻撃を防げた事は称賛に値するが…所詮、学生の身か‥。」



自分よりもはるかに格下の相手を見下すかの様な、冷めた目線をリリとアンゲリカに向けてくる。


これ以上、ライリーの父親に攻撃されよう物なら、アンゲリカの魔力が尽きてしまう‥。


しかし…相手はリリ達の事を逃してくれそうにもない。


(でも…このままやられるわけには…!)


この状況から立て直す事のできる打開策をリリが探し始めたその時。


ライリーの父親の攻撃の手が止まった。



「さて…どうする?」


「っ…どういう…つもりだ?」



突然、彼はリリ達に攻撃する事を止め、問いかける様な口調で話かけてくる。


相手の質問の意図がわからず、アンゲリカは困惑した。


しかし、ライリーの父親は怪しげな笑みを浮かべたまま、再度問いかけてくる。



「今ここで降伏するか…それとも死ぬか。」


「はっ…戯言を、誰がお前なんかに降伏するものか。」



息切れを起こしながらも、アンゲリカは強気の姿勢を崩さない。


(ここで屈服したら負け…どうせ、「降伏する」と言っても、結局殺されるのが関の山‥。)



アンゲリカは気づいていた。


たとえ相手の言う通り、「降伏します」などと言っても、逃してくれる気は毛頭ないと言う事を。


だからこそ、アンゲリカは相手が油断する、その時をジッと待っている。


(相手が隙を見せた途端、煙幕を出す魔法を使って一時退却する。…気休めとはいえ、多少逃げる時間を稼げる筈だわ‥。)



「ふむ…つまり、降伏する気はないと?」


「当たり前よ。どうせ、どちらにせよ殺す気なんでしょ?」


「よくわかったな。流石、レオンハルト家の跡取り娘…と言った所か?」



(こいつは私がレオンハルト家当主になった事を知らない…つまり、先日の事はまだ知れ渡ってないと言う事か……。やはり、あの魔王、何か企んでいる可能性が高いな‥。)



本当に国ためを思っているのだとすれば、一刻も早く情報伝達をした方がいいに決まっている。


…それも、大昔に大厄災を起こした獣達を蘇らせようとした…ともなれば。


だと言うのに…侯爵の地位を持っているレスター家でさえ知らないのだ。


大方、レオンハルト家で起こった事件の詳細については、都合が悪いから隠蔽した…と言った所だろう。



「まぁいい…どうせお前達は今ここで、死ぬのだからな。」


「っ!リリ!防御魔法の展開を!」



彼はまたもや、格下の相手を見下す様な冷たい目線をリリ達に向けた後、攻撃魔法を放って来た。


それを素早く察知したアンゲリカが、大声でリリに防御壁を出す様指示する。


アンゲリカの切羽詰まった声色に、リリは怖気付きながらも、なんとか防御壁を展開する。


展開したとほぼ同時に、防御壁目掛けて氷魔法が飛んでくる。


キーン…と防御壁越しに甲高い音が聞こえて来た。


…なんとか相手の攻撃を防ぎ切る事ができたが…すでに、半透明の防御壁には大きなヒビが入ってしまっている。


次、同じ様な威力の魔法がくれば…確実に防御壁を壊し、その奥にいるリリ達に大きなダメージを与える事だろう。



「なんとも軟弱な防御壁だ。…さて、お遊戯は終わりか?」




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