48話 不審な両親
「ライリー…!全く…あの子ったら…。」
「ふん…言わせておけばいい。リリ様、誠に申し訳ありませんでした。」
ライリーがいなくなった後で、マリアとライリーの父親が、この場にいないライリーに対して文句を言う。
父親はリリに腰を曲げ、精一杯の敬意の態度を取る。
「別に気にしてませんわ。…それより、ライリーのお父様は一体何の研究をしていたのでして?」
「あ、ああ…研究の事ですか…。」
リリがライリーの父親の研究について尋ねると、彼は少し、何か後ろめたいことでもあるかのように、先を話すのを躊躇った。
(どうして躊躇うのかしら?)
何か気まずい事でもあるのだろうか?
今の父親の反応は、何かを隠している人にしか見えなかったのだ。
「申し訳ないのですが…関係者以外には聞かせる事のできないものでして…。」
「それはリリ様にも聞かせられない事なのですか?」
父親がやっとの事で言葉を絞り出した途端、アルフが痛い所をついてきた。
まあ…演技がかっているアルフの物言いはやはり気になるが…正直、リリも疑問に思った。
(一応…将来魔王になるかもしれないし…関係者ではあると思うのだけれど…。)
魔王にも聞かせられない『怪しい事』をしていると言うのなら、お父様に報告さざるを得なくなるが…
(もしもこの事を報告して、万が一にもゴマちゃんの事がバレたらちょっと厄介ね…。)
そう、ここで問題となってくるのはゴマちゃんの存在。
ゴーマ・ヴァイス・ミュラーこと、初代魔王がリリの使い魔に乗り移って生きていて、なおかつリリと『次期魔王』になるためにクーデターを画策している…なんて事が知れてみろ。
あっという間にリリは処刑台まっしぐらだ。
「ええ…実は、錬金術師協会の界隈で少々ごたごたがありまして…魔王の娘のあなた様といえども軽々しく口にする事ができないのです。」
「そうですか…なら仕方ないわね。」
本当に申し訳なさそうに頭を下げ、重々しい口調でそう告げたものだから、流石にこれ以上詮索するのは愚策だと感じ取ったアンゲリカが、すぐさま話を切り上げた。
「分かって頂けて助かります…。では、私めは仕事の続きがあるので…失礼いたします。」
そう一言告げると、ライリーの父親はそそくさと来た道を引き返して行った。
後に残されたリリたちとマリアは、少々重苦しい雰囲気の中、アルフが先陣を斬って話し出した。
「ちなみに、ホムンクルスが出来上がるのは何時ごろになりそうですか?」
「え?…ああ、えっと、できの良いものとなりますと…大体一週間から二週間ほどになると思います。」
「もう少し短い期間で作る事はできないのですか?」
「うーん…ホムンクルス製造は夫が行っている事なので、私からは何とも…。」
「では、旦那様にお聞きになっていただいても?」
「ええ。分かり次第伝えに行きますわ。」
「それでは、私はこれで。」と言って、マリアもその場から去って行ってしまった。
後に残された3人は、とりあえず各自の部屋に各自の荷物を持ち運んでから、リリの部屋に集合する事にした。
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1時間ほど時間を掛けて、やっとの事で宿泊する部屋に荷物を運び終わった。
「ふぅ…普段は召使いたちにやってもらっていた事だから、流石に疲れるわね…。」
今世では身の回りの事、ほとんどをメイドや執事たちにやってもらっていたからか、前世より体力がなくなった気がする。
ふと、そんな事を思っていたら、リリは前世が懐かしくなってきた。
(とは言っても、最近になってからさらに前世の事が思い出せなくなってきたのよね…。)
「前世では学園でネット越しにボールを叩きあう競技をしていたと思うのだけれど…あれは一体なんて名前だったかしら?」
ただでさえ霞がかったかのように、思い出せない記憶があると言うのに、最近になってさらに前世の記憶が脳内から消去されていく。
自分の一部が無くなっていくような感覚に、リリは少し寒気を感じた。
まるで自分が自分じゃ無くなっていくような…そんな気持ちが湧いて出てくるのだ。
(でも…そんな事を考えている場合じゃないのよね…。)
ただでさえ時間がないのだ。これ以上考えるべき事を増やしていては、いくら脳味噌があっても考え足りない。
新しい知識を得る度に前世での思い出が薄れて行く、
絶望的な状況を打開するためにも、今は少しでも知恵を集めなければならない。
記憶が無くなっていく事は嫌だけれども…トレードオフだ。
何かを得る代わりに何かを失う…そうやって、普段から生きているのだ。
コンコン
「失礼しますリリ様。入ってもよろしいでしょうか?」
リリが物思いにふけっていると、軽く扉を叩く音が聞こえた。
次にアルフとアンゲリカの入室許可を求める声が聞こえてきたので、リリは猫背になっていた背をシャンと伸ばし、扉越しにアルフに声をかける。
「どうぞ。」
「お邪魔いたします。…リリ様、お怪我はないですか?僕も自分の荷物があったものですから、手伝う事が出来ず、心が締め付けられる思いでした…。」
アルフの言葉にいつもの事ながらアンゲリカが噛みつく。
「着飾った言葉はよして頂戴、あんたの猫撫で声を聞いてると吐き気がしてくるわ。」
「ははは…本当に良く吠える。そろそろ口を閉じたほうがいいんじゃないかい?」
またしても、アルフとアンゲリカの喧嘩が始まった。
一応ここはリリの部屋だと言うのに…本当に所構わず喧嘩するんだな…と、再認識するリリだった。
「まあアルフは置いておいて…リリ様、何か不可解な事に気がつきませんか?」
「不可解な事?」
パッとアルフに向ける嫌悪の表情から、真剣な目つきに変わったアンゲリカがリリに訪ねてくる。
リリはこの家に来てから起こった事を思い出しながら、アンゲリカに話の続きを促す。
「この家の住人…と言うより、ライリーの両親たちは、どうやらライリーの事を嫌悪しているかと思われます。」
「父親はともかく…母親…マリアさんはライリーの事を好いているように思えたけれど…。」
どうにも納得がいかないリリが呟くと、アンゲリカはリリの言葉を否定するようにフルフルと、首を横に振ってから一言。
「事実、ライリーの母親には挙動不審な点があります。例えば…『私たちがいる事を認識してから、ライリーに明るく声をかけた』とか。」
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これからも頑張って、読んでくれている人たちに面白いと思ってもらえる作品にしていきたいと思います。




