2話 捨て駒として使われる羽目に…
「もおぉぉ!!なんなのよ!」
転送された先の学寮の部屋で、私は枕に顔を埋め、足をジタバタとさせていた。
普段なら小うるさい執事やメイドから
『そのような品の無い仕草など、してはいけません!』
とか
『そのようなことをしている暇があるのならば、魔法についてのお勉強をいたしてはどうです?』
とか、色々と指図される。
けど、今は執事もメイドもいない!自由ではあるのだが……
「転生したら魔王の娘で?!魔力全く無くて魔法使えないから道具扱いになるだなんて!」
あんまりじゃない!もともとあった常識を振り払って、魔界の常識覚えるの大変だったのよ?!
一応、”元”お父様が学園に連絡を入れてくれたおかげで、寝泊りする場所や食事に困る事はないけど…
ちなみに、学園は基本的に全寮制だ。
ただし、長期休暇や連休の時などは学園に備わっている転送陣を使い、実家に帰還しても良いとなっている。
「それもこれも!自分の外面的な所を気にしてるからでしょう?!」
愛なんか一ミリも感じられないわ!……お母様は私が小さい頃に人間に殺されてしまったし‥。
いまだにジタバタしている私の元に、私の使い魔の白蛇が、スルスルとベットを登ってくる。
白蛇は私を慰めるように、私の頬を舐めてくる。
「あなたも大変ね。……下等魔獣とか、そんな事にこだわる必要があるのかしら?」
私の言葉を聞くと、蛇はしゅん…としてしまった。
慌てて白蛇の頭を撫でると、今度は気持ちよさそうにする。
今後…どうしましょう。
「私、まだ基礎中の基礎くらいしか魔法が使えないですし……学園入学まで、今日含めてあと3日。」
そんなに短い期間に、何が出来ると言うのでしょう?
腕を組み、ベットの上で真剣に考える。
「やっぱり、魔力消費の効率について、もっと学ぶべきかしら?それとも…ユニーク魔法をもう一度作るべきかしら……。」
一番いいのは、魔力量を増やせる事だけれど……そんな事、成し遂げられた人はひとりもいないし……。
今までの魔王たちが作ろうとして失敗しているものを、私なんかが作る事が出来るのかしら?
「ええい!悩んでいても仕方がありませんわ!」
とりあえず、筆記だけでも好成績を残さないと…今度こそ、お父様に殺されてしまうかもしれないわ。
リリは前世、日本の女子高校生だった。
2020年8月、誕生日を迎える前日に、交通事故によって命を落としてしまった。
……流石に、まだ15年しか生きていないんだもの。それに……せっかくの第二の生なんだから、もっと楽しみたいわ!
寮監から、学園内の図書館を使う許可をもらい、早速図書館へと向かった。
ーーー
「流石魔王養成学園……図書館だけでも、こんなに広いのですわね。」
壁一面、天井高くまで積み重なった本棚の中に、本がぎっしりと詰まっている。
つい夢中になってしまい、上ばかり見て歩いていると……
「わぁ!」
「おっと!……すまない、お怪我は?」
誰かにぶつかって転んでしまった。
声の下方を見ると、金髪碧眼の美しい男性がいた。
この学園の生徒だろうか?それにしても……めっちゃイケメン!
乙女ゲームとかにありそうなシチュエーションに、つい、リリは頬を赤らめてしまう。
「あ、いえ、大丈夫ですわ……。」
「そうか、よかった。僕はアルフ……レディ、失礼ですが、お名前は?」
「えっと……リリと申します。」
生まれて初めてレディなんて言われちゃった!
キャー!っと、心の中で完成を上げるが、一応これまで、次期魔王としての訓練を受けてきた身。
表面上は綺麗な笑みを取り繕っていたリリだった。
「リリ、ぶつかってしまって、悪かったね。」
「いえ、お気になさらず。」
「では、お……僕はこれで、失礼します。」
去っていく男性の後ろ姿を見つめながら、リリはここにきた目的を思い出した。
そうだわ!筆記の勉強をしにきたのでした!
急いで勉強用の参考書を本棚から抜き出し、借りた後、部屋へと戻っていった。
ーーー
「ふむ……あれが魔王の娘か。」
図書館の司書室、誰もいない部屋の中心で、先ほどリリにぶつかった男が独り言を呟いていた。
「もっと気が強くてわがままかと思ったんだが……呆気なさそうだな。」
静かに笑い声を漏らしながら、男は紙に何かを書いていく。
『革命計画』
紙の先頭には、そう書かれていた。
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