第5話 魔王
「え? これが・・・私・・なんですか?」
大きな姿鏡を見つめながら、自分の頭や体をぺたぺた触って確認する。
「まぁ、最初のうちは戸惑うかもしれませんがすぐになれますよ。 とりあえず詳しい話をしたいので、ここではなんですし・・場所を移しましょうか。」
鳥頭の魔族が指をパチンと鳴らした瞬間に今までいた景色が変わり、見晴らしが良く色鮮やかな花々が咲き誇る庭園へと移動していた。
「まぁ~、長い話になりそうですし、お茶でもしながらゆっくり話しましょう。」
そう言って、ティーカップやポット、色とりどりのお菓子が用意されたテーブルへと案内され、ゆっくりと皆席に着き、一息ついたところで鳥頭の魔族が話をはじめた。
「さて、まずは、転生前にニュクス様から説明されたかもしれませんが、ここは世界の反対側、魔界です。あなたは魔族としてこの世界に再び転生召喚されました。
ここまでは、大丈夫ですね。」
「・・・・(コク)」
鳥頭の魔族の言葉に「そこまでは大丈夫」と同意し、頷く。
「で、魔界に魔族として転生したばかりで右も左もわからない君に、ある程度この世界の教養と身の回りの世話、そして人間の勇者と戦えるレベルまで育てる為に
今、僕たち3人が君の前にいます。」
その言葉に、ゴーレムの魔族と絡繰り人形の魔族が頷く。
「ここまでの説明で、何かわからないことや質問はあるかな?」
「あのぉ~、目覚めたばかりの時に聞いた その・・・私が”魔王”ってどういうことなんでしょうか?」
軽く、挙手をして質問する。確かに魔族に転生させるとは聞いていたし、勇者とも戦うとは聞いていたが・・・魔王?
「あ~・・・その説明はされていなかったのか・・・。」
どう説明するべきか鳥頭の魔族はしばらく腕を組んで悩んでから口を開いた。
「”魔王”っていうのはこの世界で唯一”勇者”に対抗できる戦力で魔王になれるのは、勇者と同じ異世界人の思春期の少年少女に限られているんだよ。
かくいう、ここにいる、僕たちも魔王なんだけどね。」
「え、えぇぇぇぇ~~~~~~!!!」
この世界に来て何度か経験したなかでも一番の驚きが声にのってしまい大声をあげてしまう。
「じゃ、じゃぁ、み、皆さんもひょっとして・・・地球人・・・なんですか?」
「正確には、”もと地球人”だけどね。 そういえば自己紹介がまだだったね、僕は、”爆炎の魔王”火野寺 紅太郎っていいます。よろしく。」
「俺は、”錬成の魔王” 岩倉 剛毅ってんだ。よろしくな。」
「ワタシは・・・”不滅の魔王” 恐山 黄泉・・・ヨロシク・・ネ。」
(鳥頭の魔族が、爆炎の魔王
石の巨人が、錬成の魔王
そして、絡繰り人形の人が、不滅の魔王っと・・・)
「で、”花の魔王”・・・君の名前を聞いてもいいかな?」
(花の魔王? さっきからそう呼ばれているけど、もしかしなくても私の事だよね?
この人達の言う通り、私はもう、人間じゃないんだ。 なら・・・)
「わ、私は・・・。」
このとき、私はあらためて人間やめる決意をあらたに大きく息を吸い込み、彼らに新たな称号と共に名乗ることにした。自らの意思で復讐の為、人である事をやめるのだ。
「私は、”花の魔王” 花園 香 まだまだ新参者ですが、よろしくお願いします!!」
私の自己紹介を受けて、魔王の先輩方は、優しく笑い返してくれた。
これから、私の新たなる魔王としての第一歩が始まるのだった。