第3話 誕生
青々と生い茂る森林、さえずる小鳥たち、その中央には大きな美しい湖があり、魚たちが透き通った水の中を泳いでいる。
まるで、楽園のような自然に満ち溢れたこの場所は、”魔界”の一角、魔神の聖域と呼ばれ、入れる者は限られたごくわずかの人物のみ
その聖域にある湖の中央にには、一つの神殿が建っていた。窓から光が差し込む神殿の中央には、祭壇が置かれており、その祭壇の前で
この世界の主神のお告げを受けた三人の魔族が立っていた。
「なぁ~・・べつにオレ一人でもよかったんじゃねぇか?何も、この召喚の儀に三人集まる必要はねぇだろう?」
「僕らが主神のお告げは、あくまで僕たち三人で迎えて慣れるまで世話をしろというものだ。召喚にも立ち会うのは当然だろう?
そこまで言うのであれば、君が後から合流すればいいんじゃないか?君のその大きくてゴツゴツした体を見たら、きっと怖くて震えてしまうよ。」
「あぁ? なんだとぉ? じゃぁ~なにか、テメェの燃えたその鳥頭を見ても驚かねぇって言いてぇのかよ?」
3メートルほどの岩や色々な金属で構成された体のゴーレムと紅蓮の炎でできた身体にワシのような頭の鳥人間の異形の二人がにらみ合いの喧嘩をはじめた。
「・・・・ケンカ・・・ヨクナイ・・・サンニン・・デ・・・メイレイ・・・サレタ。」
二メートル程の能面をつけた絡繰り人形が二人の喧嘩を仲裁する。
「ちっ・・・わぁ~ったよ。あんたに言われちゃ、しょうがねぇよな・・・。わるかったよ・・。」
「はぁ~いえ、こちらこそ・・煽ってしまい申し訳ない。」
分が悪いと言わんばかりに金属の頭をボリボリかきながら謝るゴーレムと溜息を吐きつつも謝罪する鳥頭の魔族。
「しかし、遅いですね。 神託では、そろそろの時間だと思うのですが・・・。」
鳥頭の魔族が懐から懐中時計を取り出し、時間を見る。
「・・・・キタ。」
絡繰り人形がそう告げた瞬間、目の前の祭壇が白く輝き、祭壇の中央に光の球が現れた。現れたのもつかの間、光球は一粒の種となり祭壇に落ちると芽を出し
みるみるうちに急成長し、巨大な花のつぼみをつけた。
「これは、また・・・今回も派手な演出ですね。」
鳥頭の魔族は、手をつぼみにかざし魔力を注いでいく。
「だよなぁ~。おい!注ぐ魔力の量は制御しろよ!」
「・・・・・・。」
同じように二人の魔族も手をつぼみにあて魔力を注いでいく。
三人分の魔力を注がれると、巨大なつぼみは、まばゆい光を放ちながら開花した。
そして、その花の柱頭に位置する場所には1メートル50センチほどの少女が座っていた。
「・・・・・・ここは?」
右も左もわからないといった表情をしキョロキョロと辺りを見渡す可憐な少女に鳥頭の魔族が代表して少女の前にゆっくりと跪き優しく語り掛ける。
「ようこそ、魔界へ。偉大なる主神に導かれし、新たなる魔王・・・”花の魔王”よ。」